地球上では大小さまざまな隕石(いんせき)が見つかっていますが、元となった天体が特定されている隕石は全体の約6%程度です。フランス国立科学研究センターやヨーロッパ南天天文台、チェコのカレル大学の研究者らが主導した新たな研究では、「地球上で見つかっている隕石の約70%が小惑星帯(メインベルト)にある小惑星が起こした3回の衝突に由来している」ことが判明しました。

Young asteroid families as the primary source of meteorites | Nature

https://www.nature.com/articles/s41586-024-08006-7



The Massalia asteroid family as the origin of ordinary L chondrites | Nature

https://www.nature.com/articles/s41586-024-08007-6

We Finally Know Where Most Meteorites on Earth Actually Came From : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/we-finally-know-where-most-meteorites-on-earth-actually-came-from

We’ve Found the Source of Most Meteorites - Sky & Telescope - Sky & Telescope

https://skyandtelescope.org/astronomy-news/weve-found-the-source-of-most-meteorites/

宇宙には多種多様な天体がありますが、地球上で見つかる隕石のほとんどはコンドルールという球状粒子を持つ「コンドライト」と呼ばれる種類です。隕石全体の約40%は鉄の含有量が多いH型普通コンドライトで、約35%は鉄の含有量が比較的少ないL型普通コンドライトとなっており、その他の種類を含めると隕石全体に占めるコンドライトの割合は80%を超えています。

また、隕石が地球に落下するまでに浴びていた宇宙線を測定する宇宙線照射年代では、コンドライトの多くがかなり短期間の宇宙線しか浴びていないことがわかっています。これらの特徴は、地球上で見つかる隕石の多くが共通の天体に由来し、比較的近年に天体から分裂したことを示唆しています。

隕石の大部分は、火星と木星の恒星軌道の間に広がる小惑星帯に由来するとみられているため、研究チームは小惑星帯で過去に発生した天体の衝突と分裂に関するデータを収集しました。そして、これらの天体の軌道運動をコンピューターモデルを用いてシミュレートし、地球に飛来した隕石がどの小惑星族に由来するのかを分析しました。小惑星族とは、類似の固有軌道要素を持つ小惑星の集団であり、過去の小惑星の衝突で生じたものや偶然その軌道に入り込んだものから構成されます。



研究の結果、地球上で見つかっているH型普通コンドライトの多くは「コロニス族」と「カリン族」という小惑星族に由来しており、L型普通コンドライトの多くは「マッサリア族」という小惑星族に由来していることが判明しました。

研究チームによると、これら3つの小惑星族に由来する隕石は、地球上で見つかっている隕石の約70%を占めているとのこと。科学誌のNatureに掲載された2本の論文のうち1本で筆頭著者を務めたカレル大学のミロスラフ・ブロシュ氏は、「私たちは小惑星帯にある3つの小惑星族を特定しました。これらは今日の地球に落下する隕石の最も重要な発生源です」と述べました。

H型普通コンドライトを生み出した衝突は比較的近年に発生したものであり、コロニス族で約760万年前に起きた衝突と、約580万年前に起きてカリン族を形成した衝突により、後に隕石となる天体群が発生したそうです。また、L型コンドライトの起源であるマッサリア族では、約4億6600万年前に大きな衝突があった後、約4000万年前にも2回目の衝突が起きたとされています。地球上で見つかっている隕石は、このうち約4000万年前に起きた衝突に由来するとみられています。

地球上で見つかる隕石が比較的若いのは、小惑星が衝突して細かい破片になると元の小惑星族から押し出されやすくなり、数千万年も経過すると小さな破片は残らないことが理由とみられています。また、火星と木星の間にある小惑星帯は大部分が炭素質ですが、炭素質の隕石は大気圏突入時に燃え尽きやすいため、比較的熱への耐久性が強い普通コンドライトが多く見つかっていると考えられます。



また、研究チームは炭素質のコンドルールを含む炭素質コンドライトについても研究を行い、これらが由来する小惑星族についても報告しました。これらの研究結果と以前から知られていた月や火星に由来する隕石を総合すると、地球上で見つかっている隕石の約90%の起源を説明できるとのことです。

Source regions of carbonaceous meteorites and near-Earth objects | Astronomy & Astrophysics (A&A)

https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2024/09/aa50532-24/aa50532-24.html