スターシップ第5回飛行試験のブースター帰還は中止される寸前だった?
アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)が日本時間2024年10月13日に実施した同社の新型ロケット「Starship(スターシップ)」による第5回飛行試験では、1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」を初めて発射台に帰還させ、ロボットアームでキャッチすることに成功しました。記憶に新しいSuper Heavyブースターの空中キャッチですが、あと一歩で中止されていたかもしれません。海外メディアのSpaceNewsなどが伝えています。
スペースX、新型ロケット「スターシップ」第5回飛行試験実施 スーパーヘビーが初めて発射台に帰還(2024年10月15日)
Musk氏が投稿したゲームのプレイ動画に飛行試験についての音声が
SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは日本時間2024年10月26日早朝にアクションRPG「Diablo IV」のプレイ動画をSNSのXに投稿しましたが、動画の音声はゲームとは関係のないStarship第5回飛行試験についてのミーティングの一部とみられます。
T150 clear in 3:25. Too much time spent killing minions vs elites. Had <3 min potential. pic.twitter.com/oYRqqpVyGe
- Elon Musk (@elonmusk) October 25, 2024
SpaceNewsによると、動画の音声では関係者の1人がSuper Heavyブースターの着陸燃焼に関して、“誤って設定された”パラメータによって(おそらくエンジンのターボポンプの)圧力が予想通りに増加しなかった問題について説明しており、ブースターに中止を指令してタワーの隣の地面に衝突させるまであと1秒のところだったと語っています。音声ではSuper Heavyブースターの帰還については数多くの中止条件が新たに設けられていて、パラメータの確認に費やす時間を確保するために第5回飛行試験を遅らせる議論があったことにも触れられています。
また、降下中のSuper Heavyブースターが着陸燃焼を開始した直後、ブースターの後方側面にある4つのチャイン(細長い垂直構造)の1つでカバーが外れる問題が発生したことも言及されています。チャインにはエンジンの始動やその他の機能で使用されるヘリウムなどのガスを充填する圧力容器が収められています。幸いバルブやハーネスが損傷することはなかったものの、カバーが外れたのは単一障害点(障害が発生するとシステム全体が停止してしまう部分)となる着陸燃焼中に機能すべきバルブの真上だったといい、この問題に言及した人物は“対処するプランがある”とも述べています。
なお、動画の音声ではStarship第5回飛行試験のデータと中止条件を比較して“何を変える必要があるか”を検討するレビューが前日に終了したことにも触れられています。SpaceXは第6回飛行試験で使用される予定のSuper Heavyブースターのテストをすでに進めていて、Musk氏も動画を投稿する約13時間前にXで「第6回飛行試験はもうすぐです!」とポスト。SpaceNewsによればSpaceXは第5回飛行試験のライセンス更新時に第6回飛行試験の承認もアメリカ連邦航空局(FAA)から得ていることから、次の飛行試験はそう遠くないうちに実施されると思われます。
Source
SpaceNews - Starship Super Heavy booster came within one second of aborting first “catch” landingEveryday Astronaut - Starship/Super Heavy | Flight #5Elon Musk (X)
文・編集/sorae編集部
#スペースX #スターシップ #スーパーヘビー #イーロン・マスク
Last Updated on 2024/10/29