前回サプライズな強さとなった雇用統計は


 ここにきて進むドル高円安の背景は、米国の大幅利下げ期待の後退と、米大統領選でのトランプ前大統領優勢報道が大きいです。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の大幅利下げに踏み切り、且つ、その時点で11月、12月のFOMCでも連続利下げ、そのうち一回は0.50%という見通しが広がっていた米国の政策金利。ここにきて大幅利下げ期待が払しょくされ、それどころか11月は据え置きになるのではとの思惑が出てきている状況です。
その大きなきっかけとなったのが10月4日に発表された9月の米雇用統計。サプライズな強さを見せた前回の雇用統計を受けて、米国のソフトランディング期待が強まりました。

 まずは前回の雇用統計について。非農業部門雇用者数(NFP)の伸びは+25.4万人と3月以来の強い伸びとなりました。市場予想は+14.7万人となっており、予想を大きく上回りました。ある程度ブレのある専門家予想の最大値でも+22.0万人(+7.0~+22.0)となっており、専門家の予想すべてを上回っています。また、7月の数字が+8.9万人から+14.4万人に、8月の数字が+142万人から+15.9万人にそれぞれ上方修正されています。上方修正された水準と比べて、さらに+25.4万人ということで、雇用の伸びの力強さが印象付けられました。失業率も前回と同水準の4.2%予想に対して4.1%に低下を見せました。正社員を望みながら非正規雇用となっている雇用者などを加えた広義の失業率(U6失業率)も7.7%と8月の7.9%から低下しました。

 非農業部門雇用者数の内訳を確認してみましょう。製造業は-0.7万人と小幅ながらマイナス圏がつづいています。。建設業が前回に続いて好調で+2.5万人となったことで、財部門としては+2.1万人と前回の+0.5万人を超える伸びとなりました。民間サービス部門は+20.2万人と好調でした。小売業が+1.6万人と、4カ月ぶりのプラス圏となりました。景気に敏感な業種だけに好印象でした。一方運輸・倉庫は-0.9万人と冴えない状況が続いています。介護部門など慢性的に人手不足な業界を含むことで好調な雇用の増加が続く教育・医療部門は+8.1万人と力強い伸びを維持。娯楽・接客業は+7.8万人と前回の+5.3万人を上回り2023年1月以来の伸びとなりました。中でも単体の部門で1200万人超の雇用者を抱える飲食部門が+6.94万人と好調でした。こちらも小売業同様に景気に敏感な部門だけに好印象です。

 続いて関連指標です。
新規失業保険申請件数は雇用統計と調査対象期間のかぶる12日を含む週のベースで、9月は+22.2万件、10月は24.2万件と10月分が悪化しています。

 今回は1日の発表のため、ISM製造業は雇用統計と同じ日の23時発表、同非製造業は11月5日(日本時間6日午前0時、3日に米冬時間へ移行)と、雇用統計の後の発表です。

 29日発表の9月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数の予想は793.5万件と前回の804万件から小幅低下。同時に発表される10月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数の予想は99.3と前回の98.7から小幅改善見込みです。30日発表のADP雇用者数の予想は前月比+11.0万人と前回の+14.3万人から伸びが鈍化する見込みです。

 こうした状況を踏まえて今回ですが、非農業部門雇用者数の予想が+11.0万人と一気に伸びが鈍化する見込みとなっています。失業率は4.1%で維持される見込みです。非農業部門雇用者数に関しては、前回がかなり強かった分の反動がある程度入ってくるとみられます。また、9月末に米国南東部を襲ったハリケーン「へリーン」の影響が今回の雇用統計に入るとみられています。

 前回が強すぎたところもあり、ハリケーンの特殊事情も合わせ、予想前後に雇用者の伸びが落ち込んだとしても、影響は限定的となる可能性が高いです。ただ、ドル高が進んでいるところだけに少し注意は必要です。

 もっとも今回の雇用統計、本来であればかなり重要なのですが、より注目度の高い米大統領選を5日に控えている直前ということもあって、相場の反応は一息になる可能性が高いです。大統領選については全米規模の支持率でハリス氏が小幅リードも、勝敗のカギを握るといわれる激戦州7州の世論調査でトランプ氏が優勢となっており、トランプ氏の勝利を意識する動きが広がっています。ただ、激戦州のトランプ氏リードも小幅であり、ぎりぎりまでわからないところ。世論調査などの数字に指標以上に反応してくる可能性がありますので要注意です。

MINKABUPRESS 山岡