AIエンジニア・安野貴博氏×経済学者・成田悠輔氏 “現役世代重視”の国民民主党・伊藤議員に聞く “103万円の壁”“尊厳死”…
国民民主党・伊藤孝恵参院議員が、日本テレビのYouTube選挙特番「投票誰にする会議」に出演しました。現役世代重視の政策を掲げる国民民主党。経済学者・成田悠輔氏は「マジョリティーを取れるのかというのが、非常に不安」と話し…。
“若者世代”の支持を集める国民民主党
AIエンジニア・安野貴博氏:
「X(旧Twitter)に投稿された意見をAI分析で“見える化する”ブロードリスニングで国民民主党への声を見ると、“現役世代重視の政策”や“手取り増加政策”など具体的な政策について話されていています」
国民民主党・伊藤孝恵議員:
「街頭に出ると若い方々がものすごく待っていてくださるんですよね」
「ただ、40代50代またはそれ以降には届いていなくて。“手取りを増やす”“賃金を上げる”という政策は、現役だけと思われているんですけれど、年金は現役世代の賃金が上がらないと上がらないわけです。現役世代の労働環境を整えないと、介護等の先輩世代の生活も整わない。そこがまだ伝わっていないと感じます」
経済学者・成田悠輔氏:
「ちょっと気になるのは、(国民民主党が掲げる)“手取り増加政策でインフレと戦う”というのは無理じゃないかと。政策の主な部分は、減税とか社会保険料の負担軽減とか、一回きりワンショットで起きるもの。」
「仮に所得税と社会保険料を10%落としましたとなった場合、10年かけても20年かけても僕たちの手取りは10%しか増えない」
「一方で、インフレや成長率は、累積でどんどんたまっていき、複利で効いてくるもの」
「今、目の前で苦しんでいる人たちを助けるという意味ではいいのかもしれないです。ただ、長い目で見た時に、インフレ基調の国において、どうやって僕たちはそれと戦っていくのかという問題を考えたときに、手取り増加政策では無理じゃないかという気はします」
伊藤議員:
「この国の産業を隆盛させて賃金を上げて、それによって国民の暮らしを豊かにするんだということは、もちろん考えています。ただ、目の前の国民生活に“ダイレクトに、今、何をやるか”という時に、やはり私たちは“お財布の中にお金を残す”ということを分かりやすく伝えたということ」
“稼ぎたいのに稼げない”パート・アルバイトを苦しめる103万円の壁 どう崩す?
安野氏:
「手取りを増やすという目標を掲げた中で、消費税の減税ではなく(所得税控除)103万円の壁に手をつけるのはなぜなのか」
「低所得者よりも高所得者の方が恩恵を受ける、逆進性が働くのではと思います。地方税がかなり大きく減ってしまうという問題も発生すると思います」
伊藤議員:
「確かに逆進性が働くと思います。ですが、税金を払ってない人たちばかりが恩恵を受けるのではなく、ちゃんと払っている人たちが恩恵を受けるというのは当たり前のことだと思います。(給付金のように)徴収してまた事務費を使って配るのなら、初めから取らない、控除を効かせることは、政策としてあるのではないかと思います。地方税が減るというところでは、“ひも付きではない”交付税を増やすしかないと思います」
国民民主党のオリジナルの政策 教育国債
鈴江奈々アナウンサー:
「(国民民主党は)教育、子育てにおける、あらゆる施策を完全に無償化しますということを打ち出しています。その財源は“教育国債”というところが国民民主党の公約でオリジナルな部分になりますが、この政策について成田さんはどう思いますか?」
経済学者・成田悠輔氏:
「教育国債はどういう意味でオリジナルなのですか?」
伊藤議員:
「例えば、建設国債は橋とか道路を作るわけですが、それは今生きている人たちも、将来の人にも受益があるので、国債発行をして良いと、財政法でなっています。しかし、教育については国債発行を法律でしてはいけないとなっている。教育に使うためのお金を国債発行して良いと財政法を改正すべきだと思っています」
「人に投資をして、その人が我が国のGDPを1%上げるかもしれない技術やサービスを開発するかもしれない。現代の私たちの世代にも受益があるし、将来世代に、もっと受益があるかもしれない。このような考え方だと、教育国債という考え方もあるのではないかというのが国民民主党のオリジナルの政策になります」
成田氏:
「無償化というのはお金のある家庭を助けてしまう場合も多いですよね。今回、考えているような政策は、誰を助けるための政策になっているんですか」
伊藤議員
「基本的に子供の育ちや学びに線引きは必要ないと思っています。我が国は所得制限を細かくつくってきました。その所得制限の金額というのが25年前のものだったり、40年前のものだったりするので、今、中間層と言われている人たちがほぼ消滅している中で、その線引きというのが、本当に合っているのかいうところがすごく疑問です。そういう部分で所得制限を撤廃していく。学ぶこと、育つこと、食べることについては、私は“儲かっているからその人にはあげなくて良い”とは思いません。他のところでしっかりと富裕層に課税していきましょうと」
“マイノリティー・グループを支える”大票田を狙わない選挙戦
成田氏:
「『ちゃんと稼いで税金を払っている人たちがメリット受けるような政策をやろう』とか、『20代や30代の現役世代が特に苦しんでいるので、その人たちを助けるような政策をやろう』というのは、ある意味ですごくニッチな、マイノリティーなグループのご機嫌を取るような政策ばかりじゃないですか」
伊藤議員
「そうなんです。そうなんですよ」
成田氏
「これで国民民主党は“マジョリティーを取れるのか”というのが、非常に不安になりました」
安野氏:
「ちなみに(ブロードリスニングを見ると)X上でも似たような指摘があります。」
伊藤議員:
「仰るとおり、やはり“大票田”は高齢世帯です。実際に選挙に行く層もそこです。やはり、そこに向かって、『若者をつぶすな』『現役世代をつぶすな』といっても票が入らないので、誰も言ってこなかったんです。けれど、そこにようやく物を言う政党が出てきたということに、少しずつ気づいてもらったので、今回、少しだけ、なにか“風”があるような気がしたりしなかったり…というのがあります」
成田氏:
「今はマイノリティー・グループがちゃんと気づいて風が吹いているのだと思います。ぼくが思うのは、そこから先が厳しくなるのではということ。この先、急に変節して、高齢世代、マジョリティー層を取りにいくのか、それとも『自分たちが響くべき相手はこの人たちだ』としっかり今のターゲットを保ち続けるのか、どちらの戦略なのでしょう」
伊藤議員:
「現役世代を支えないとこの国は全てが成り立ちません。選挙に勝つのであればそういう(現役世代を支える)ことは言うべきではないのですが、この国の未来を考えるんだったら、それは絶対に言わなきゃいけないことです。なので、選挙に弱い、政策が難しい、回りくどいというのも全部わかっています」
“自公過半数割れ” そのとき、連立の可能性は…
安野氏:
「自公が過半数割れした後に、国民民主党はどういう動きをするのかが議論されています。自公と連立するという話はあり得ますか?」
伊藤議員:
「完全に無いです」
「まず、自公は過半数割れをしたら良いと思います。過半数を取っていると傲慢になりますので、過半数割れをして、苦労して予算や法案を通していくという、その工夫や鍛錬はやった方が良いので。そこで国民民主党が一緒にやるかというのは、大変、我々や我々の支持者にも失礼な話で、私たちは国民民主党を国民民主党として大きくします」
玉木代表の“尊厳死”発言 「私たちも怒った、大失敗」
安野氏:
「(国民民主党代表)玉木雄一郎代表の発言で、尊厳死政策というところも非常に話題になっていました。国民民主党としてはどう捉えていますか?」
伊藤議員:
「玉木代表が1分という時間の中で、尊厳死と社会保障を一緒に語ってしまったことは、私も含めて、すごく怒りました。丁寧に語るべきだったところを、まとめてしまったというのは、大失敗だと思います」
「尊厳死というのは自己決定権の問題だから、我々の重要政策の中でも、社会保障ではなくて、人づくりのところに入れています。尊厳死や医療の話をしたいのであれば、お金の話とセットにして語っては絶対にだめです。」
鈴江アナウンサー
「国民民主党は玉木代表も含めて、“人の生き方”として、このテーマについて社会的な議論をしていくということが本意だったという理解でよろしいですか」
伊藤議員
「もちろんです」
成田氏:
「ただ、自己決定権としての尊厳死を議論するときにも、結局、お金の問題は避けられなくなってしまうのではないかという気はします。それは社会保障費への影響ということではなく」
「仮に尊厳死制度が日本に導入されたとすると、お金がない人ほど、そういうものに追い詰められる可能性が高い。そもそも人間の寿命と年収は相関しているわけで」
「お金の問題というのを正面から議論しないと、本当の議論にならないのではないかという気はします」
「仰る通りです。避けられないけれども、本当に議論したいのであれば、冷静な環境を作りたいのであれば、お金の話をしてはダメです。腹の中にあったとしても」