【和楽器バンドインタビューvol.7】町屋「貴重な機会で、すごい経験値になった」
和楽器バンドが、無期限活動休止前最後の作品となる『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』、LIVE Blu-ray『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』を10月9日にリリースした。
これらの作品で楽しめる和楽器とロックバンドが融合した唯一無二の音楽は、超絶技巧のギタリストであり、メインコンポーザーでありアレンジャー、ディレクターである町屋が統括してまとめ上げているものだ。聴いてもらえれば、洗練されたそのサウンドに驚かされるだろう。そしてベストアルバムには、町屋の渾身の一曲「八奏絵巻」も収録されている。
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◆ ◆ ◆
◼︎これで聴いてくれた人が喜んでくれれば
──素敵なアルバムを作ってくださって、ありがとうございます。アルバムの最後を飾る新曲「八奏絵巻」には驚かされました。まずこの曲のお話から聞いていこうかと。
町屋:毎回制作期間に入ると、新曲のデモの締切に向けてみんなが曲を作るんですけど、集まった曲はいったん僕が取りまとめて事務所とレーベルに展開するんです。だから曲ができたらみんな僕のところに送ってくるんですけど、普段はみんな締切ギリギリで送ってくる。なんですけど、今回はゆう子が締切より2週間ぐらい早く、「GIFT」を送ってきたんです。多分まだみんな新曲に手つけてなかったと思うんですけど、 「GIFT」を聴いた時に僕は「スペシャルサンクス枠はもうこの曲でいいな」と思っちゃって。他にもみんな多分似たような方向性の曲書いてくるだろうけど、「GIFT」の“ありがとう”って、ファンや関係者とか僕らのことを知ってくれている方々へ向けて発信している歌詞だと僕は捉えたんですね。でも、仮に別の方向に向けて感謝を書いたとしても、文章の見栄えとしては大差ないと思うんですよ。よっぽどこだわって書かないと、 同じスペシャルサンクス枠に入っちゃう。
──なるほど。
町屋:なので、もう一曲どんな曲が欲しいかと考え直すわけです。和楽器バンドの全楽曲110曲強から今回ファンの方にアンケートを取って、その結果を基にメンバー、事務所、レーベルの3者で選曲をしたんですけど、リレコーディングの6曲を含めて16曲しか使われなかったら、使わない曲が94曲余るじゃないですか。 1〜3票とかの極端に少ない票数のものは振り落としても、80数曲は残ったんです。
──もったいない気がしますよね。
町屋:そう。僕は「アンケートに入らなかった曲を選んだこの人たちの気持ちをどう解消してあげよう」っていう思いが浮かんだんですよ。そこから「楽曲の中に何曲か要素取り込めないかな」 っていうところから始まって、「いやちょっと待て。それだったら全部入れられないか?」と思い、「ほかでも今までこういう企画はあったかもしれないけど、お客さんの気持ちを全部汲もうとする人は多分いなかっただろう」って、それをやってみることにしたんです。まぁでもどう考えても時間がかかる作業なのは目に見えてたんで、とりあえずアルバムごとに手をつけていくことにして。1stアルバム『ボカロ三昧』と2ndアルバム『八奏絵巻』までは、全部同じキーに直して歌詞も書き出した上で並べてみて……というところで作業を一回止めて選曲会議に。で、このアイディアが通ったので、続きを進めていきました。
──そういう流れだったんですね! 全曲キーを直して書き出すだけで途方に暮れそうです……。
町屋:ほとんど僕1人で作らせてもらったんですが、制作当初に思っていた「ここがこうなってこうなって、ここがしんどいであろう」って予測が、実際手をつけると結構違っていて。
──と、いうと?
町屋:最初はメロディーの抑揚とか高低差、音程のインターバルを中心に構成を考えてたんですけど、全部並べてみたら「ちょっと待って、歌詞の問題があるぞ」って気付いたんですよ。そこで「考え方を変えなきゃダメだ」と思って、音のことは一旦全部忘れて、歌詞を全部書き出してみたんです。そしたら曲によって言葉の言い回しが口語っぽいものだったり、そうじゃないものだったりたくさん種類があって。そこから少し硬かったり古い言い回しだったりする、一番和楽器バンドらしい言葉を中心に、歌詞から作っていくことにしたんです。
──こんなにいろんな曲が入っているのに歌詞の意味が通っているのが不思議だったんですが、そういうわけだったんですね。
町屋:ただ、歌詞だけにフォーカスすると曲として成立しないんで、歌詞をベースにメロディーも成立するかどうか頭の隅で考えながら並べていって。言葉も音も、新しく創作するということは一切したくなかったので、全部過去にリリースしたもののサンプリングだったりフレーズで組んでいきました。
──正直にいうと、初めて聴いた時は胸がギュッと締め付けられてしまって苦しいぐらいでした。みなさんこの曲で和楽器バンドとの思い出が駆け巡ると思います。
町屋:終わり方が暗めではあるんですけど、和楽器バンドっぽい侘び寂びの部分も出せたかなと思っていて。スピード感がすごく目まぐるしいんで、おっしゃる通り、割と驚くと思いますよ。でもその重量が強すぎてもリピートするのがしんどくなっちゃうから、線引きがすごく難しかったんですけどね。
──タイトルを「八奏絵巻」にしたのは?
町屋:ここまでサンプリングで作っておいて、全く新しいタイトルを作るのもなんか違うなって思って。その時に、アルバムタイトルが楽曲になっていることがないことに気付いたんですね。「オトノエ」っていう曲もないし、「TOKYO SINGING」っていう曲もないし。というところで我々の今までのアルバムタイトルを羅列してみたら、“絵巻”って走馬灯のように10年間を回想するには悪くない言葉だなと思って。8人のアンサンブルっていうニュアンスも含まれますし。それで2ndアルバムのタイトルから「八奏絵巻」っていう言葉をサンプリングしました。
──このタイトルで、例えば「暁ノ糸」から始まってたら「あぁ泣かせに来てるな」って予想できたと思うんです。でも「World domination」から始まるから、一瞬油断したというか、聴き進めるうちにどんどん引き込まれていくような感じで。
町屋:僕、このバンドは、どこまでいっても言い出しっぺで最初にメンバーを集めたゆう子が全ての中心だと思ってるんですよ。頭に「World domination」を持ってきたのは、ゆう子が茨城から上京してきて、歌手を夢見る自身の少女像を投影した楽曲だからです。そこから始まった方がストーリーがあるな、という意味を込めています。
──歌の始まりは「花一匁」の《季節はずれの 赤いツバキ》ですが、これもゆう子さんをイメージして書かれた一節でしたよね。
町屋:僕、 作詞者の世界観の話とか、心の内側の話は聞かないようにしてるんですよ。あんまり深く聞きすぎると、客観視ができなくなっちゃうんで。だからその話も覚えてなかったんですけど、それでも90曲以上を検証して、やっぱり歌い出しはこれしかなかったですね。
──町屋さん、最近DJされてるじゃないですか。もしかしてそういう経験とかも活きてるんでしょうか?
町屋:めっちゃ活きてます。DJをやってなかったら、これは作れなかったかもしれない。作業的にはもうマッシュアップの域をはるかに超えてるんで、DJの仕事より重いんですけど。普通のコンポーザーとして覚えていく曲の乗り換えと、DJとして覚えていく曲の乗り換え方って違うんですよね。DJは、フロアがどうなってるかっていう状況を把握しながら曲を乗り換えていくんで。この曲でも、別の曲が入るたびにお客さんがアガるっていうことをすごく意識しながら作りました。だから間奏に「吉原ラメント」を絶対持ってきたかったし、10年やってきて一番盛り上がったギターソロとして「焔」を入れたり。
──「焔」で尺八が同じメロ吹いてるとかもすごく良くて。
町屋:僕が決めた「これは入れてほしい」っていうフレーズはある程度あった上で、 いつも通りメンバーにある程度お任せして作っていったんです。 みんなそれぞれ過去に弾いたものからサンプリングしてフレーズ持ってきたりとかして。僕でもメンバーが仕込んだフレーズで気付いていない部分はいくつかあると思いますよ。その点で、神永は結構色々やってくれましたね。 デモの段階では僕が気付かなかったところのサンプリングまでしてくれてたんです。
──みなさんにインタビューしていく中で、“一音だけ”入っている曲もあるとか聞いて……。
町屋:“一音だけ”は、もうド頭で2カ所出てきますね。イントロの「戦-ikusa-」に入る前の“ジャッ”ってところが「白斑」です。あとイントロでは黒流さんが《ライ!》って言ってるんですけど、あれは「鋼-HAGANE-」です。掛け声って《はいさ!》《オリャ!》とかいろんな曲の中にいろんな種類があるんですけど、《ライ!》って掛け声は全曲の中でここにしかない。
──作りながら、「ここにはあの曲のあの掛け声を入れよう」みたいなことを思うわけですか?
町屋:思いますね。レコーディングの途中で一応、「どっかでサンプリングするかもしんないんで、《ライ!》を入れといてください」って言って、素材だけは録ってあったんですよね。あと、イントロのドラム&和太鼓は「Perfect Blue」だったり。 リズムセクションと上物セクションが全く別のものやってたりするんです。
──個人的には「雪影ぼうし」と「儚くも美しいのは」が交差するところが好きです。
町屋:「雪影ぼうし」をゆう子に歌わせて、「儚くも美しいのは」を俺が歌って音程を解離させたら、多少当たってるところが発生しても多分気にならないんじゃないかなと思って試しにやってみたら「ハマるわ」と。「暁ノ糸」も、本来のサビは《我等謳う空の彼方へ》から始まるんですけど、歌詞の意味合いが成り立つようにってことを一番に考えて《堰を切って溢れる思い》から使ってたりとか。
──全てに物語があって、どこまでもエモい。まさに、町屋さんが和楽器バンドでやってきたことの集大成だと思いました。
町屋:これで聴いてくれた人が喜んでくれればいいんですけどね。
──私は、活動休止前最後にこの曲が聴けて良かったと思っていますよ。
町屋:僕ら、結成時点からいつか活動休止するということは念頭にあったんです。もともと結成して3年で活休するか、5年で活休するかみたいな話もあって5年で活動休止するのが濃厚だった。でも、お客さんが求めてくれる声も多いし、周りにプッシュしてくれる人も多いから、「じゃあこのまま走ろう」って言って走ってきて。「ずっと走り続けて1回休む」っていうのは、今回取ってつけたように出た話ではないんです。だから「暁ノ糸」を書いたときにはもう、《いつか醒める夢の居場所で 笑い合っていられる様に》って言ってあった。
──あぁ……。
町屋:そう、夢が醒めるんですよね。
──いつか活動休止すると決めていたのは、企画物のような形で始まったプロジェクトだったからですか?
町屋:理由は2つあって、ひとつはそれ。もともとみんなそれぞれの活動があった中で、「このメンバーでこういうことをやったら楽しいんじゃない?」というところからスタートしているのでね。もうひとつは、 アウトプットしてる時間が長すぎてインプットの時間が少なくなると、音楽家としてのバランスが悪くなるから。本当は年間のスケジュールでインプットとアウトプットをうまく組み立てるべきなんですけど、我々はそれをしてこなかったので、結局どこかでツケが回ってくる。でも思いのほか、みんな本気になってやってこれましたね。10年ですからね。
──町屋さんにとっても、和楽器バンドってすごいやりがいのあるプロジェクトだったのでは?
町屋:そうですね。和楽器バンドに加入して最初の頃は厳しかったけど、2年目以降ぐらいから、いかにもメジャーっぽい環境で仕事をさせていただけたことがありがたかったですね。それまではバンドはしていましたけど、バックバンドとかエンジニアとか、どっちかっていうと裏方のスタッフ的な仕事が多かったので。3rdアルバム『四季彩-shikisai-』の途中あたりから──厳密には2ndアルバム『八奏絵巻』の途中からですかね、A&Rの手が回らなくなって僕がボーカルのセレクトとかするようになったところから、徐々にハンドリングするようになっていった。自分がアレンジもディレクションもハンドリングさせていただけるっていうのはとても貴重な機会で、すごい経験値になりましたね。これはちょっとお金じゃ買えないかな。
──この10年で1番楽しかったのって、やっぱり制作ですか?
町屋:日常的な行動で言うと僕はレコーディングが好きなんで、やっぱり制作が好きでしたね。それ以外だと、和楽器バンドでデビューして初の海外がフランスの<Japan Expo>だったんですけど、 それが僕にとっても初めての海外で。それまで日本を出たことがなくて、自分の中の未来予想図に海外で音楽をやるという選択肢が全くなかったんです。日本人が海外のマーケットでも勝負できるなんて思ってもいなかったし。そういう意味では、海外公演っていうのはすごい思い出深いですね。
──逆に辛かったことは?
町屋:辛かったのは2つかな。ひとつは、仕事的にどうしても作業が僕に集中しがちなこと。どっかで1個工程がズレると僕のとこで溜まるから、そしたら僕の先にいるエンジニアさんの仕事とか諸々が遅れちゃうっていうのが苦しかったっすね。あとは、人数が多いので人間関係がとても疲れました(笑)。4人バンドでも喧嘩することなんてよくあるじゃないですか。逆に、8人だから続けてこれたっていう部分もあるとは思うんですよ。意見が対立しても孤立しないので。でもやっぱり考え方や方向性の違いで衝突することは、普通のバンドの倍の人数いる分だけ起こったし、スタッフさん含めたチームの人数も多いので。その落としどころをそれぞれ探って、より完成度が高い、みなさんに満足していただけるものをなるべくたくさんの人に届けよう、という原点をもって頑張ってきましたけどね。
──本当にいろんなことがあって、活動休止は当然の成り行きで、1回休むべきだったという。
町屋:だと思います。 多分ここで休まなかったら、仲悪くなってる(笑)。
──町屋さんはこの活休期間に何をしていく予定なんですか?
町屋:『ボカロ三昧2』のツアー中に誕生日を迎えて、「俺、結構人生折り返したじゃん」と思って。正月に「どうすっかな」ってボケっと風呂入りながら考えてたら「飲んでる時間と2日酔いで寝込んでいる時間がもったいない。もう時間がないからとりあえず酒やめよう」と思い立って、酒をやめました。人生折り返したってなると、自分のことをボースティングしていくのとか、すっごいカッコ悪いと思って。残った時間で音楽家としてやっていくとしたら、「これからは自分の人生のことを歌っていくターンだな」と思ったんです。自分の経験を活かして人に伝えるとか、そういう段階に変わってきたなと感じて、そこから僕の根本的な考え方とか色々変わりました。
──ほう。
町屋:「元々何になりたかったんだっけ」って立ち返ってみたら、「そうだ。俺、シンガーソングライターになりたかったんだ」ってところにたどり着いて。なので、活動休止中に何がやりたいかと聞かれたら、歌ですね。人間として、自分の人生を歌っていくっていうこと。あとは、和楽器バンドでオーケストラを入れたことがあったじゃないですか。バンド以上の編成を僕がコントロールするっていうのは昔の自分だったら選択肢になかったんですけど、今はそれが選択肢に増えた。なので、音楽家としてもっと大編成のものに挑戦していくということもやりたいことかな。
◆インタビュー(2)へ
◼︎芸術ってそれだけじゃないだろう
──一旦アルバムに話戻して、リレコーディング曲についても聞きたいです。
町屋:リレコーディングはね、「細雪(Re-Recording)」だけ別物なんですよ。「細雪」は、原曲の段階で僕のアレンジもディレクションも全部入っていて、フルオーケストラを生で録っているから、もう出来上がりきっている豪華絢爛な音源なんですよね。でも楽曲投票では一位だったので、「これをどういう違いで聴かせたらいいのか」というところでアレンジの方向性はギリギリまで悩みましたね。ここでリレコーディングして何ができるかなと考えた時に、逆にカルテットっていう小さな編成の中で少しだけ音数を減らしたりして、日本人の持つ“侘び寂び”の感性の方向に振り切る「細雪」を作ったら、メロディと歌詞の良さがより出てくるんじゃないかなと思って。今回はそういう方向で勝負させていただきました。
──「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」「千本桜(Re-Recording)」「華火(Re-Recording)」あたりは、音が格段によくなりましたね。
町屋:「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」はね、ギターのフレーズもかなり変えましたね。少しボカロの原曲に寄せました。あの曲ってバチバチのEDMの中に和風のエッセンスがちょっと歌詞として入ってるからいいと思ってるんですよ。和楽器バンドで元々出したバージョンって和に寄りすぎて、ちょっと原曲を崩しすぎてるなって思ってたんで、そこを修正できたのはとてもよかったですね。 「華火(Re-Recording)」は元々作りたかったものに近づけたって感じです。元々のデモはこういう感じだったんですけど、当時のディレクターに「もっとギターガンガン鳴らした方がいいから、ギター足して」と言われて前回の「華火」になったんですけど、 僕は和楽器食っちゃうから、ギター足して厚くしていくのがあんまり好きじゃないんですよ。そこをある程度抜き差しして、だいぶ聴こえ方変わったと思うんですけど、元々聴かせたかったのはこの「華火(Re-Recording)」ですね。
──音が良くなったのは、今回新たに取り入れた工夫などもあるのでしょうか。
町屋:今回新たに導入した手法というものはないです。最近のノウハウで作ったっていう感じですね。『TOKYO SINGING』以降、エンジニアさんやその周辺のチームワークも含めて、今の方向性にガチっと決まりましたね。
──「起死回生(Re-Recording)」「雨のち感情論(Re-Recording)」あたりはいかがでしたか?
町屋:この辺はフレーズとかもみんなほとんど変わってないんで、純粋に録り方の違いを楽しんで欲しいです。マイキングとか録音環境とミックスのバランスの違いで、「ここまで音が良くなるんですよ」っていう提示でもありますね。
──ユニバーサルミュージック移籍後の曲に関しては、リマスタリングを。
町屋:毎回アルバムに合わせて、EQとか音の左右の広がり、音圧などを、各曲の前後の曲間をみて決めていってるんですけど、今回もリレコーディングの6曲と新曲2曲とを中心に、流れで聴いて違和感なく聴けるようにリマスタリングしています。
──流れで聴いてこそ意味のあるベストアルバムでもありますもんね。
町屋:我々の世代は、アルバム1枚をゆっくり時間をかけて楽しむってよくやってきたことだけど、今は音楽も全部短くて早くて、移り変わりも激しいじゃないですか。そんな時代だからこそ、腰を据えてゆっくりアルバム1枚聴くとか、音楽をじっくり味わって聴くとかがすごい大事なことだと思っていて。音楽を聴きながら文庫読むとか、ダメだと思うんです。“ながら”はどっちにも良くないので、本読むときは無言で本だけを、音楽聴く時だけは目を閉じて音楽だけを聴くように心がけてます。そうした方が、“足りない足りない”ループにならないと思うんですよね。ショートコンテンツばかりをたくさん食べすぎると、どんどんもっともっと刺激物を求めるようになってしまう。でも、「芸術ってそれだけじゃないだろう」っていう思いが僕の中にあって。
──今回はまさに、作品としてまとまっているベストアルバムなので、じっくり味わって聴いて欲しいですよね。
町屋:そうなんです。最後に出すのがベストアルバムと言われたら、がっかりしてしまう人もいると思うんです。僕もベストアルバムとライブアルバムは、本当にいいものじゃなきゃいけないと思っていますし。でも今回は、いいものを作れた。今の和楽器バンドの音で18曲、10年の軌跡を辿る作品になっています。もちろん曲順で聴いて欲しくはあるんですけど、例えば激しいのが好きな人だったら「Ignite」や「日輪」から聴くのもありだし、ポップスが好きな人だったら「Starlight」や「ブルーデイジー」から聴くのもいいと思いますし。
──和楽器バンドは、本当にいろんなテイストの曲があるんですよね。
町屋:振り返って今思うのは、良くも悪くもジャンルが多彩だということですね。多彩ということはターゲティングできていないということでもあるんですけど、その分救える人もいると思っていて。例えば「Starlight」「ブルーデイジー」みたいな曲がなかったら、ロック好きな人にしか刺さんなかったと思うんですよ。でもそこで「うちはポップスもありますよ」ってアピールできた。本当にいろんな曲があるから、自分の好きな和楽器バンドプレイリストをみんなそれぞれ作ってくれたら嬉しいですね。楽曲の数が多くてジャンルが幅広いバンドは、系統ごとにまとめて聴くのもありかな。
──これを機に、「八奏絵巻」に盛り込まれている曲を探して過去曲を聴き直すとかも面白いですよね。
町屋:そう、ディグってもらえるっていう状況を作るのも大事だと思ってて。我々の世代までって、アーティストをディグること自体もものすごく楽しかったと思うんですよ。インタビューを読んで、「あのアーティストが好きなのか」「このアーティストってあの人のエッセンスになってるんだ。だったら聴いてみよう」と洋楽を聴き始めたり。で、「ピストルズは僕には理解できない。ランシドならまだ理解できる」「ザッパは難しいけど、ザッパが影響受けたのは何だったんだろう」とか。そのディグも音楽の楽しさだと思うんですけど、最近もうみんなディグんないじゃないですか。
──確かに音楽の聴き方は変わってきていますね。
町屋:僕自身、全然知らないアーティストの曲を聴いていいなと思ったら、その人のインタビューやトラックメーカーさんとか関連してる人の音楽もどんどんディグっていくっていうことをしてて。そっちの方が僕は音楽の聴き方としては豊かだと思う。でも流れとか、システムの利便性には勝てなくて。音楽産業自体が今は移り変わりの激しい配信ベースの上に成り立ってるけど、どうしても音楽を消耗品にしたくないって思っちゃうんですよ。確かに、新しいものをどんどん聴けていろんなジャンルの音楽を自分の中に取り入れることができるのは、昔はできなかったことだから恵まれてていいなと思うんですけどね。でも、1枚を深く掘り下げるとか、1アーティストを深く掘り下げるとかって、それはそれですごく楽しいことなんで、今の若い子たちのにそういう聴き方もあるんだよっていうのを知ってもらえたら嬉しいです。
──このベストアルバムも、そういう風に楽しんでもらいたいですね。最後に、そのベストアルバムのタイトル『THANKS』にかけて、ゆう子さんへの感謝のメッセージをいただけますか。
町屋:和楽器バンドに僕を誘ってもらったことに感謝です。ゆう子と出会った時にはもうこの企画が進行していて、最後の「ギター1人欲しい。まっちーお願いします」の一言がなければ僕も関わっていなかったし、和楽器バンドも多分ここまで大きくなってなかったでしょうね。 和楽器バンドはメンバー同士の偶発性がエンジンになったと思うんですけど、そのエンジンの元は何かって言ったら、やっぱり2012年のゆう子の求心力。その時のノリに乗った彼女が声をかけてくれたことには今でも感謝してますね。入ってなかったら何やってたんだろうなってよく最近考えるんですよ。
──町屋さんとゆう子さんは、和楽器バンドの音楽の要だったと思います。
町屋:あとは、音楽的に僕のごそっと欠けてる部分を彼女が持っていて、彼女のごそっと欠けてる部分は僕が持ってたんで、 そういう意味ではお互い持ってないものを埋められたというのもありますね。音楽的な会話も1番できるかな。その辺がゆう子で良かったと思う理由です。
取材・文◎服部容子
『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
詳細:https://wagakkiband.com/musics/15508
CD購入:https://wgb.lnk.to/2024_al_cd
配信リンク:https://wgb.lnk.to/thanks_digital
◆商品形態
初回限定LIVE盤(CD+Blu-ray)税込¥8,500/UMCK-7253
初回限定Document盤(CD+DVD)税込¥5,280/UMCK-7254
CD Only盤(2CD)税込¥4,290/UMCK-1778
◆収録曲(全18曲)
01. 六兆年と一夜物語(Re-Recording)
02. 千本桜(Re-Recording) ※TBS系バラエティ『ランク王国』エンディングテーマ
03. 華火(Re-Recording)
04. 起死回生(Re-Recording) ※テレビ東京系リオ五輪中継テーマソング
05. 雨のち感情論(Re-Recording)
06. 細雪(Re-Recording)※映画『恋のしずく』主題歌/テレビアニメ『京都寺町三条のホームズ』テーマソング
07. Ignite(Remastered 2024)
08. 情景エフェクター(Remastered 2024)
09. Singin’ for... (Remastered 2024)
10. 月下美人(Remastered 2024) ※NHK「みんなのうた」2020年10月・11月度放送曲
11. Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE (Remastered 2024)
12. 日輪(Remastered 2024)
13. 生命のアリア(Remastered 2024) ※TVアニメ「MARS RED」オープニングテーマ
14. Starlight(I vs I ver.)(Remastered 2024) ※フジテレビ系⽉9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌
15. ブルーデイジー (Remastered 2024)
16. The Beast(Remastered 2024) ※アニメ『範馬刃牙』2期オープニングテーマ
17. GIFT(新曲)
18. 八奏絵巻(新曲)
◆各形態収録詳細
【初回限定LIVE盤】(CD+Blu-ray)税込¥8,500/UMCK-7253
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.A 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
Blu-ray:10th Anniversary Best Live Selection
※初商品化となるライブ映像を含む、10周年のライブから厳選された楽曲を収録
収録曲
1. 千本桜 from 2014.1.31 at clubasia
2. 戦-ikusa- from 2015.5.23 METROCK2015 ※初商品化!
3. 反撃の刃 from 2015.9.10 NHK Eテレ 「Rの法則」 ※初商品化!
4. 起死回生from 2016.8.13 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 ※初商品化!
5. 雨のち感情論 from 2017.9.13 NHK 「シブヤノオト」 ※初商品化!
6. 千本桜 from 2018.9.22 イナズマロックフェス2018 ※初商品化!
7. 暁ノ糸 from 2019.11.23 和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT〜新章〜 FINAL
8. 儚くも美しいのは from 2020.2.16 Premium Symphonic Night Vol.2〜ライブ&オーケストラ〜 in 大阪城ホール
9. Ignite from 2020.8.16 真夏の大新年会2020 横浜アリーナ〜天球の架け橋〜
10. Starlight from 2021.5.14 NHK 「SONGS OF TOKYO」 ※初商品化!
11. 吉原ラメント from 2022.1.9和楽器バンド大新年会2022 日本武道館〜八奏見聞録〜
12. 生命のアリアfrom 2023.9.7 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I ※初映像化!!
13. 細雪 from 2023.9.7 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I ※初映像化!!
14. The Beast from 2024.1.07和楽器バンド大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜
【初回限定Document盤】(CD+DVD)税込¥5,280/UMCK-7254
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.B 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
DVD:本作品レコーディングのBEHIND THE SCENEを収録したドキュメンタリー映像
【CD Only盤】(2CD)税込¥3,850/UMCK-1778
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.C 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
CD DISC2: このアルバムのためにレコーディングされた新曲を含む全8曲のInstrumental をDisc 2に収録
※Instrumental収録はCD Only盤のみ
◆チェーンオリジナル特典
・UNIVERSAL MUSIC STORE:B5クリアカード(絵柄A)
・Amazon.co.jp:B5クリアカード(絵柄B)
・楽天:B5クリアカード(絵柄C)
・TSUTAYA:B5クリアカード(絵柄D)
・タワーレコード:B5クリアカード(絵柄E)
・HMV:B5クリアカード(絵柄F)
・アニメイト:B5クリアカード(絵柄G)
・その他一般店共通:B5クリアカード(絵柄H)
LIVE Blu-ray『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』
詳細:https://wagakkiband.com/musics/15545
購入:https://wgb.lnk.to/2024_bd_dvd
■初回限定盤 Blu-ray(本編 DVD 付き)
¥12,100(税込) / UMXK-9042
ライブCD (2枚組み)+60P フォトブック
■通常盤Blu-ray(本編DVD付き)
¥8,800(税込)/ UMXK-1117
『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』
[Blu-ray/DVD収録内容]※Blu-ray/DVDは、内容共通
Overture〜八重ノ翼〜
愛に誉れ
雨のち感情論
天樂
フォニイ
いーあるふぁんくらぶ
月下美人
細雪
雪よ舞い散れ其方に向けて
生命のアリア
虚夢
破邪の儀
焔
吉原ラメント
オキノタユウ
The Beast
ドラム和太鼓バトル〜対決武闘館〜
ベノム
星の如く
暁ノ糸
<Encore>
BRAVE
千本桜
※特典映像
BEHIND THE SCENE of 和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜
<和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS 〜八奏ノ音〜>
11/23(土祝) 東京・LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
11/28(木) 大阪・オリックス劇場 ※SOLD OUT
12/8(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール ※SOLD OUT
12/10(火) 東京・東京ガーデンシアター
【チケット料金】
VIP指定席:前売 \15,000 当日 \16,000(税込/VIP席専用オリジナルグッズ付き) ※SOLD OUT
VIP着席指定席:前売 \15,000 当日 \16,000(税込/VIP席専用オリジナルグッズ付き) ※SOLD OUT
一般指定席/着席指定席:前売 \10,000 当日 \11,000(税込)
【企画/制作】イグナイトマネージメント/LIFE
ツアー詳細はこちら:https://wagakkiband.com/contents/765648
関連リンク
◆和楽器バンド 10周年特設サイト