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 さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
 実家がラブホ街にあり、学生時代はラブホで清掃員のアルバイトをしていた前田裕子さん(仮名・20代)。今回は、地方のラブホならではの“ハプニング”への対応について教えてくれた。

◆人間だけではない“招かれざる客”

 “招かれざる客”はどこの業界にもいるが、それは「人間」だけとは限らないと前田さん。とくに夏から秋にかけては、“招かれざる客”たちへの対応で、ラブホスタッフはバタバタするそうだ。

「その時期は“虫”が発生するんです。フロントへのコールが多くなり、通常顔を合わさないお客様と協力することもあります」

 前田さんが暮らすラブホ街は、山地のIC(インターチェンジ)近くにある。夜になると高速道路の照明に加え、ラブホ街のネオンは誘導灯のように虫を集めるそうだ。虫が苦手な客が多く、夏になると虫に関する出来事やフロントコールが増えるという。

「蚊がいるのですが……」との問い合わせには、ワンプッシュで退治できるスプレーを届ける。他には……。

「露天風呂に虫が浮いている」
「ベランダに蝉が」

部屋を通り越してベランダまで行かなくてはならないときはイヤでしたね。お客様がいると、どこに目を向ければよいのか分からなくなりますし。幸い、ずっと住んでいる街なので虫は苦手ではありません。私は、スタッフの中で自動的に虫係になっていました」

 ただし、そんな前田さんでもこれまでに「虫が怖い」と思った出来事もあった。

◆手のひらサイズの蛾が鎮座

 ある日、ラブホの入り口にある案内パネルの清掃を頼まれたという。

「いつもは日中にする業務なのですが、その日は夜でした。パネルはうっすらと曇って見えたんです」

 前田さんは、「軽く拭くか」とパネルに近づくと、大量発生した小さな羽虫たちがびっしりと集まっていたそうだ。前田さんは思わず悲鳴をあげたという。

「曇って見えたのは1.5メートルくらいのパネル全体に張りつく羽虫だったんです。さすがに逃げ出したくなりましたが、ラブホの虫係としてほうきで払い落としてから拭きました」

 また、客室からの連絡を受けたときには……。

「女性からの『すみません、虫がいて。捕まえてください』というコールでした。電話からは、男性の『デカっ、怖っ!』と戦っている様子も伝わってきて、オーナーと客室に駆けつけました」

 客室には、大人の手のひらサイズの蛾が鎮座していたのだとか。そんな日に限って満室だったため、部屋の移動をお願いできる状況ではなかったそうだ。

「田舎なのでたまに大きな蛾に遭遇しますが、いざ捕まえるとなるとかなり怖かったです。カップルとオーナーと私で捕まえて逃がしたときには、妙な連帯感さえありました」

◆ときには歓迎される虫もいる

 しかし、決してこんな虫トラブルだけではない。いつものようにフロントコールに出ると、「あの、部屋に虫がいて」。前田さんは「ああ、また捕まえに行かなきゃ」と思ったのだが……。

「網とかってあります?」

「どうやら、ベランダからカブトムシが入ってきて、お客様は捕まえたいとのことでした。たまに、カブトムシやクワガタもやってくるんですよね。基本、捕まえた虫は逃がしますが、なかにはお持ち帰りするお客様もいます」

「わぁ、大きい! ヒラタのオスですかね」
「いや、あの顎はノコギリじゃないですか?」

 と網を持ち、客と天井を見上げて盛り上がってしまうこともあるようだ。

◆豪雨の日はビーチサンダルで出勤

 台風が直撃すると臨時休業をする企業や店舗が増える。しかし、前田さんが働いていたラブホは通常営業だったという。