58年前の1966年に静岡県旧清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害された事件の再審=やり直し裁判で無罪が確定した袴田巖さん(88)のもとに10月21日、静岡県警の津田隆好本部長が訪れ、直接謝罪しました。本部長は当時の捜査についても言及し「強制的、威圧的な取り調べを誠に申し訳なく思う」と頭を下げました。

【写真を見る】冤罪の袴田巖さん「権力はこれから認めていく 一般国民の言い分を」静岡県警トップが直接謝罪 当時の"威圧的な取り調べ"にも言及

浜松市内の袴田さんの自宅を訪れたのは静岡県警のトップ・津田隆好本部長です。

<静岡県警 津田隆好本部長>

「逮捕から無罪確定までの58年間の長きにわたり言葉では言い尽くせないほどのご心労、ご負担をおかけし申し訳ありませんでした。今後、静岡県警察といたしましましては、より一層緻密かつ適正な捜査に努めてまいります。申し訳ありませんでした」

1分40秒にわたって深々と頭を下げ、謝罪しました。

<姉・ひで子さん>

「58年も前のできごとで、わたくしたちはもう運命だと思っている。巖も私もそう思っておりましてね、いまさら警察に苦情を言うつもりはありません。きょうはわざわざおいでくださいましてありがとうございました」

袴田さんのやり直し裁判では、静岡地裁が捜査機関によるねつ造を認定し無罪判決が言い渡され、2024年10月、無罪が確定しました。直接の謝罪を受けた袴田さんは本部長が退出した後、支援者からの問いかけに対し言葉を発しました。

<袴田巖さん>

Q.申し訳ないって話聞いてどうですか?

「権力はこれから認めていくということなんだね。一般国民の言い分をね。どういう風に認めるか、それだけのことなんだね」

<袴田さんの姉 ひで子さん>

「私は、いまさら恨みつらみを言ったところで始まらないと思う。死刑囚でいるのではなくて、死刑囚だったことを忘れるための踏ん切り」

大きな節目を迎え、前を向こうとする巖さんとひで子さん。一方で、裁判所は判決で、当時の取り調べは袴田さんに精神的苦痛を与え、供述を強制する非人道的なもので、実質的なねつ造としていました。

<静岡県警 津田隆好本部長>

「強制的、威圧的な取り調べがあったということで誠に申し訳なく思っております」

津田本部長は報道陣の取材に応じ、当時の捜査についても謝罪の言葉を述べました。

もう一つの当事者である検察は、検事総長の談話として「捜査機関のねつ造と断じたことは強い不満を抱かざるを得ません」などと発表していて、直接の謝罪の予定については明らかにしていません。