衆院選の投開票日は27日(日)ですが、当日に投票に行けない人などを対象に、事前に投票ができる制度が「期日前投票」です。便利さもあり、徐々に利用する人も増えていますが、注意すべきこともあります。

19日、名古屋市天白区の“ある施設”で呼びかけられていたのは、衆院選の「期日前投票」。

27日の投票日を待たずに、一票を投じることができる制度です。

今回の衆院選では、愛知県で172カ所、岐阜県で199カ所、三重県で98カ所に設置されています。

地下鉄の駅構内に期日前投票所

その会場の多くは役場などにありますが、名古屋市営地下鉄の原駅では、名古屋市内で唯一、「1日限定」で駅構内に期日前投票所が設けられました。

その理由は――。

「普段の生活の中に溶けこんだ環境で、投票所があると便利ということで設けた。いつもの通勤通学の途中にあるので、フラッと立ち寄っていただける」(天白区選挙管理委員会 事務室 塩谷信之さん)

”手ぶら”でも手続きができる

”手ぶら”でも手続きができるという、原駅構内の期日前投票所。

宣誓書への記入で「本人確認」ができれば投票できます。

その便利さからか、19日の1日で935人が利用したそうです。

「出かけていて、駅に帰ってきました。車も持っていないので、区役所まで行くのが大変だから、駅にあるのはありがたいです」(30代)

「普段から原駅を利用しているので、すごく利用しやすい。紙(投票所入場券)がなくても投票できるので、すごく便利です」(50代)

“移動のついで”に利用できる「駅の期日前投票所」。

愛知県の豊橋鉄道「三河田原駅」は21日、三重県の桑名駅では21日から25日の金曜日まで開かれています。

“買い物ついで”に期日前投票

一方こちらは、“買い物ついで”に利用できる期日前投票所。

愛知県春日井市の「アピタ高蔵寺店」では、26日の土曜日まで毎日、投票ができます。

Q.このあと予定は

「買い物して帰ります」(期日前投票した人)

「すごく助かります。1度に済ませられるので」(期日前投票した人)

「普段の行動範囲の中でシステムができていて、1番利用しやすい」(期日前投票した人)

こうした「期日前投票所」が有権者の投票を”手助け”するのは、街なかだけではありません。

「移動期日前投票車」が巡回する地域も

山々に囲まれた自然豊かなまち、岐阜県御嵩町。

「車を用いた移動式の投票所で、1日で複数の御嵩町内を巡回する投票所になっている」(御嵩町選挙管理委員会 加藤群さん)

19日と20日、投票箱を載せた車が地域を巡回し、近くに住む人に投票を促しました。

この取り組みが始まった背景、それは投票所の減少です。

御嵩町では、バリアフリー整備が十分でない投票所の環境改善への課題や、人口減少などで投票所の運営が難しくなってきたことなどから、12カ所あった投票所が5カ所に減少しました。

投票所が減っていることも背景に

近くの投票所が4km先に離れてしまった住人もいます。

「(移動期日前投票車は)そりゃ楽や。4kmも先まで国道(沿いにある投票所)におりていって、また帰りは4kmも上がってこないといけないから」(80代)

「いいと思うよ、近くまで来てくれるということは。80歳90歳になっても近場なら歩いて来られるけど。すごくいいことだと思います」(80代)

町選管「有権者の投票機会の拡充に」

2021年の岐阜県知事選挙から始まった、この取り組み。

これまでは2カ所のみの巡回でしたが、今回の選挙は4カ所に増やしました。

「10年前に比べて、投票率は御嵩町においては10ポイントほど減少している。投票率の増加においては、有権者の投票機会の拡充をはかるということが、ひとつの解決策だと思っているので、今回、期日前投票所を増やすことを決定しました」(加藤さん)

毎日が投票日

有権者の投票機会を広げる「期日前投票」。

3年前の衆議院選挙では、投票者全体のうち34.94%が利用しました。

東海3県を見てみると、岐阜県では4割を超えています。

まさに“毎日が投票日”。

選挙戦に臨んでいる各陣営も、こうした流れを意識していると専門家は指摘します。

「ある意味、投票日は実質的にのびている形になるので、早めに情報を有権者に提供しなくてはいけない形になっているのではと思います」(拓殖大学 政経学部 岡田陽介 准教授)

識者に聞く「期日前投票」のメリット

有権者の投票行動などに詳しい、拓殖大学の岡田陽介准教授。

候補者側の目線では、先に投票を促すことで、投票日当日を待たずに、確実に票をつみ上げられるメリットがあるといいます。

「支援者、支持者の票を確実に期間内に入れていただくことで、自身の票につながることかなと思います」(岡田准教授)

有権者側に注意してほしいこと

候補者側も積極的に呼びかける「期日前投票」。

便利な反面、有権者側は注意したいことも――。

「期日前投票は、情報がまだ十分にそろっていない中で、例外的に投票する制度。候補者の考えが新しくわかった時に、先に投票した有権者は、やり直しができないことが発生する。そういう点で有権者にとっては十分に判断というか、考えた上で投票しなければならないという制度でもあろうかと思います」(岡田准教授)