5回、山崎(手前)からライトへ先制ソロを放つ中山(撮影・伊藤笙子)

写真拡大

 「JERA CSセ・ファイナルS・第5戦、巨人1−0DeNA」(20日、東京ドーム)

 「2024 JERA クライマックスシリーズ セ」のファイナルS第5戦が行われ、リーグ覇者の巨人が3位から勝ち上がったDeNAに1−0で勝って2連勝し、優勝による1勝のアドバンテージを加えて対戦成績3勝3敗とした。中山礼都内野手(22)が決勝の右越え1号ソロを放った。21日の最終第6戦で巨人は勝つか引き分ければ、4年ぶりの日本シリーズ進出が決定。DeNAが勝てば7年ぶりにシリーズに進む。

 代役ヒーローになった中山は声の限りに絶叫した。「最高でーーーす!!」。戻ってきたホームランボールを握り締めて笑う。公式戦0本塁打の男が短期決戦で値千金“プロ1号”。阿部監督も「1年目から見ているけど初めてだな」と目を見開いた“驚弾”。吉川不在の窮地を救い、22歳のバットで逆王手をかけた。

 0−0で迎えた五回だ。DeNAは山崎にスイッチ。先頭で打席に立った中山は1ボールから、初球ストライクを迷わずフルスイングした。内寄りの147キロを狙うと、瞬間にスタンドインを確信。「初めての本塁打をここで出せて良かった」と、待望の先制点を豪快な一振りで呼び込んだ。

 約束のアーチをかけた。試合前、LINEが届いた。「頑張れよ、と。やってやろうという気持ちはより強かったです」。この日、中日の高橋宏がゲスト解説で来場した。中京大中京野球部の同学年で、オフは旅行も共にするほどの親友。「ウルッときました」。声を震わせる右腕に中山は「言っているだけですよ」と笑いながら、「宏斗の前でヒーローになれてよかった」とうなずいた。宏斗と礼都。物語は続く。

 「本当に全員で、総力戦で戦う。自分はチームが勝つために、どういう働きができるか。1打席1打席、本気で、覚悟を持って打席に立ちたい」

 悪夢の3連敗で迎えた19日の第4戦は、坂本が2度のヘッドスライディングで鼓舞。この日は「見習わないといけない」と、奮い立った中山のバットで勝利を決めた。受け継がれていく常勝軍団の系譜。阿部監督は言った。「本当に強いチームだと言われるために、明日勝つことしかないです」。代役が主役になった1日。さぁ、あと1勝だ。奇跡の扉に手を掛けた。

 ◆過去の逆王手球団 日本シリーズ出場を懸けたプレーオフ、CSファイナルSで先に王手を許してから逆王手をかけた例は今回で9例目。過去8例の内、37.5%の3例が日本シリーズ進出を決めている。なお、セ・リーグでは2例目で前回は2012年・巨人。この時の巨人は3連敗後に3連勝し、アドバンテージ1勝を加えた4勝として、日本シリーズ進出を決めている。