この記事をまとめると

あおり運転は許されざる行為だ

■そんなあおり運転を誘発してしまう行為もたまに見受けられる

■4つの具体例を紹介する

追い越し車線は一時的に通行するもの

 東名高速の追い越し車線で相手のクルマを強制的に停車させ、かつ大型トラックによる追突事故を誘発して大切な命を奪うという衝撃的な事故から厳罰化されたあおり行為。ドライブレコーダーが普及し、防犯カメラが至る箇所に取り付けられている現在においても、なぜか信じられないようなあおり運転をするドライバーがまだまだ存在する。

 そんなならず者には、クルマを運転する資格すらないと思うのだが、あおり行為を誘発させるようなドライバーがいるのも、悲しいかな事実である。なかにはわざと後続車がイラつくような運転をし、その動画をSNSなどで公開することを目的とした、救いようもない輩も一部存在するようだが、「迷惑をかけた運転をしている」という自覚がないドライバーもまた問題といえよう。そういった人たちに限って後続車の通行を妨げるような運転を自らがしておきながら、「あおられた」という被害者意識が強く、軽い気持ちでSNSなどに公開してしまうのだから始末が悪い。

 もちろん、未熟な運転のドライバーが悪いといっているわけではない。どのような状況であろうとも、あおり運転をする側が悪いのは明確だからだ。しかし、だからといって必ずしも周囲が正しいともいい難い。少なくとも2回以上あおられた経験をお持ちだというドライバーは、いま一度、自分の運転を見直す必要があるだろう。そんなあおり運転の被害に遭わないためにも、つねに高速道路を活用している筆者が高速道路で見かける迷惑なドライバーについて触れてみたい。

 まず代表的なのは、追い越し車線を延々と走り続ける行為。追い越し車線とは、その名のとおり前走する車両を追い越すために存在する、一時的に通行できる車線。つまり、通常は左側の走行車線を走らなければならないのだ。しかし「速度違反をしているクルマが悪い」といわんばかりに、走行車線がガラガラで後続車に追いつかれているにもかかわらず、追い越し車線を走り続ける乗用車を見かける。そういったドライバーは自分が違反をしていないつもりでいるのかもしれないが、高速道路上において追い越し車線を延々と走ることは「車両通行帯違反」に該当するため、立派な違反となる。

 道路状況が変わるために明確な規定は存在しないが、走行車線が空いているにもかかわらず追い越し車線を走行する場合、距離にして2km程度で検挙されるという判断で問題ないだろう。普段から高速道路を走行しているドライバーであれば当然知っているようなことなのだが、2022年の車両通行帯違反検挙数は5万7011件で、なんと全体の14.7%という数字が残されているから驚かされるばかりである。そして法定速度未満で走行している場合は、後続車に追いつかれたら進路を譲らなければならないという義務も存在するのだ(道路交通法第27条)。

 そのような人たちは、後続車に迷惑をかけているのと同時に、自身がふたつの違反を犯しているということに気づいてもらいたい。単に後方の確認ができていないのかもしれないが、それはそれで問題である。ルームミラーやサイドミラーで安全確認すらできないようなドライバーは、運転をする資格すらないといえるだろう。

無意識のうちに速度が低下してしまっているケースも

 まだ迷惑な運転がある。それは速度が一定しない乗用車だ。とくにトンネルに入ると速度が大きく低下する乗用車が厄介者。このような存在はあおり運転を誘発するだけではなく、事故や自然渋滞をも引き起こしかねない危険な存在となる。そして、後続車が追い越しにかかると速度を上げる乗用車も困った存在。ましてや速度リミッターが装着されている大型トラックが相手であれば、その怒りは計り知れないものとなる。

 追い越されたくないという気もちもわからないではないが、この行為もじつは違反。先ほどと同じ道路交通法第27条で、追いつかれた車両は相手の車両が追い越しを終えるまで速度を増してはならないと定められているのだ。これに関しては証明するのが難しいために検挙される可能性は低いかもしれないが、せめて違反行為だということだけは理解していただきたい。

 そんな速度が一定しない乗用車は、スピードメーターを見ていないのが最大の原因。運転になれたドライバーであれば体感的に自車の速度が把握できるのだが、不慣れな人は当然のごとくそのようなスキルを持ち備えてはいない。それを確認するためにも、周囲にクルマがいない状況下で一度試してほしい。感覚的に80km/hだろうと感じたときにスピードメーターを確認し、大きな誤差が生じた人にはスピードメーターの確認をこまめに行い、自車の速度を一定に保つことをお願いしたい。

 もうひとつが、無意味なブレーキをやたらと踏むクルマだ。ブレーキランプは後続車へと伝染してしまうため、こちらも事故や渋滞の原因となるから困ったものである。そして無闇にブレーキばかり踏んでいると、いざ本当に減速や停車する場合に追突される危険性が高くなる。後続車のためはもちろん、自身の身を守るためにも車間距離を保つことを意識していただきたい。

 スピードメーターの確認と車間距離を保つことでクリアできる、これらふたつの事例。いずれも運転に不慣れな人にこそ多く見られる傾向にあるため、未熟だと感じるドライバー諸兄には進んで実行してほしい。そうすることで、あおり運転や追突事故の被害者になる可能性は低くなるだろう。

 そして最後に、3車線道路における厄介者を指摘しておきたい。この場合は左から第一走行車線、第二走行車線、追い越し車線となるのだが、第二車線を延々とのんびり走行するクルマが多いのだ。とくに目につくのが、80km/hで走る軽自動車や小型トラック。かつて軽自動車の高速道路での最高速度は80km/hだった時期があったが、それは昔のこと。

 追いつかれた場合は道路交通法第27条が適用されるかと思われるが、明確な違反行為だとはいえないかもしれない。しかし、そのような車両が第二走行車線に居座ってしまうことで、せっかくの3車線道路が台無しになってしまうのだ。第一走行車線から第二走行車線の車両を追い越すと違反になってしまうため、90km/h程度で走るクルマが追い越し車線をやむを得ず塞いでしまうことになるからだ。

 第二走行車線をゆっくりと走り続けるのは、自分さえよければいいという典型のような運転である。しかし、高速道路はみんなのもの。心にゆとりと思いやりを持って、気もちよく活用したいものである。