じつは儲かる…？いまローソンやマルハンが「クレーンゲーム」ビジネスに手を出すワケ
マルハンも新業態で参入
小売業やパチンコ業界において「クレーンゲーム」ビジネスへの参入が相次いでいる。
7月にはコンビニ大手のローソンが全国1000店舗にクレーンゲームを設置する計画を発表した。8月にはパチンコ業界大手のマルハンがパチンコ店の跡地をクレーンゲームを主体としたアミューズメント施設「ME TOKYO IKEBUKURO」に全面改修するなど、異業種参入の動きが目立つ。
本稿では、コロナ禍で打撃を受けた「クレーンゲーム」のビジネスが今になって企業の熱視線を浴びる理由を探っていきたい。
パチンコホール大手のマルハンはクレーンゲームを主体としたZ世代向けのアミューズメント施設「ME TOKYO」ブランドを拡大している。1号店は22年にオープンした「ME TOKYO SHINJUKU」だが、今年に入って出展攻勢が加速している。
今年8月にオープンした池袋に続き、10月10日には渋谷にも「ME TOKYO SHIBUYA Limited」が出現しており、マルハングループにおけるクレーンゲームビジネスの重要性は相対的に高まっているといえよう。
マルハンは従来のビジネスモデルから一歩踏み出し、パチンコホールをとりまく遊技人口の減少や規制強化といった課題に対処するために、類似業種であるアミューズメントの事業分野において、クレーンゲームを基盤とした収益構造の多角化を目指していると考えられる。
特に今年は新札対応に伴う機材更新のコストが大きな負担となっている中で、両替機の数が少なくて済み、コスト効率の高いクレーンゲームビジネスへの注力は理にかなっているといえそうだ。
一方、ローソンの狙いは…
一方で、コンビニ大手のローソンはクレーンゲームビジネスの参入について一風変わった狙いをもっているとされている。
ローソンは7月、2025年中に全国1000店舗にクレーンゲームを導入する計画を発表した。
同社は22年から地方の一部店舗、24年から首都圏の一部店舗でクレーンゲームを試験的に段階導入していたというが、売上の面で好調であるだけでなく、クレーンゲームが来店動機となり、商品の購買にもつながっているという効果があったという。
ローソンがクレーンゲームを導入する理由として、収益基盤の強化はもちろんだろうが、それに加えて集客のための「マーケティングツール」として活用したいという狙いがあるようだ。
ちなみに、ローソンが導入を拡大するもう一つの大きい狙いとして「インバウンド需要」の取り込みが挙げられる。
試験導入された首都圏の店舗では、外国人観光客を中心に人気アニメのキャラ景品が人気を集めており、SNSなどを通じてクレーンゲームの様子や景品をアップする動きもあったという。
実は、クレーンゲームの発祥は日本ではなく米国であると考えられており、独自発祥の文化というわけではない。しかし、日本のクレーンゲームからでしか獲得できないアニメやゲームの景品がインバウンド需要を巻き込む形でコンビニの収益を底上げしていると考えられる。
クレーンゲームビジネスに参入する両社に共通することは、いずれも「試験的な導入を経て急速に拡大している」点である。積極的かつ急速に拡大するということは、それだけ”お金の匂い”がするのではないかとも思われる。
実際のところ、クレーンゲームは儲かるのか。
クレーンゲームは「儲かる」ビジネスか？
結論から述べると、クレーンゲームは高い利益率が期待できるビジネスモデルである。
そもそも、羽振りの良いように見えるマルハンのようなパチンコホール企業は、厳格な規制のもとで運営されており、莫大な利益を得ることがそもそも難しい。また、遊技人口の減少、筐体価格や各種コストの高騰もあって2024年3月期決算の営業利益率はわずか1.37％しかない。
また、ローソンのような小売業も、業界内の平均的な営業利益率はわずか2〜3％とされている。フランチャイズ展開でロイヤリティ収入が確保できる立場にあるローソンでも直近の営業利益率は8.65%と1ケタ台に過ぎない。
その一方で、クレーンゲームは、他のエンターテイメントと比べて利益率が非常に高い点に注目したい。クレーンゲームの粗利益率は30〜60%にも達することが可能で、低コストで高収益を実現できる点がウリだ。
高収益の理由は仕入れコストが低いという点だ。クレーンゲームの景品にかかる仕入れコストは風営法で1000円までと決められている。そのため、商品がゲットされるまでに1000円以上投入されればそこからは黒字となる。アームパワーなどの設定や店員によるテストプレイを重ねれば、仕入れ値に対してどれくらいの利益を見込めるかをあらかじめ決定することができるため、少ないコストで多くの収益を上げることが可能なのだ。また、機種によっては規定金額の投入によってアームパワーが強くなるといった設定が可能な場合もあり、店舗にとって利益をコントロールしやすい環境にある。
ローソンやマルハンがクレーンゲームビジネスを積極的に拡大するのは、試験導入を通じて、再現性のある形で高い利益率を期待できると実感したことが大きな理由であろう。
クレーンゲームを運営するには、機体のエラー解除や商品の入れ替えといった比較的簡単なタスクで済み、少人数で運営できる。すでに店員がいるコンビニでは、導入規模によっては追加の人員を供給しなくても対応できるため、より利益率は高くなりそうだ。
クレーンゲームの筐体は様々だが、小さいものであれば単身世帯の冷蔵庫くらいの筐体もある。自社の店舗に空きスペースがあったり、稼働の無い物件があれば土地や建物のコストを追加で負担しなくても、その規模に応じて手軽に参入できるのも大きなメリットだろう。そういった意味では一時期流行したコインランドリー投資に近いともいえるかもしれない。
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本稿では、異業種からも参入相次ぐ「クレーンゲーム」ビジネスがいかに儲かる可能性を秘めているか見てきた。
後編記事〈異業種からも続々参入…じつは儲かる「クレーンゲーム」ビジネスブーム、気になる「火付け役」の名前〉では、このクレーンゲームの可能性にいち早く気づいていた「火付け役」の存在や、今後の懸念点などについてお伝えする。
