大学の「非常勤講師」の給料はどれくらい?「常勤講師」の年収と比較してみた

写真拡大 (全2枚)

大学の職員の中でも「非常勤講師」という肩書を耳にしたことのある人も多いでしょう。 非常勤講師とは、パートタイムで特定の講義を担当する非正規の講師を指します。常勤講師が、大学運営などにも携わるのに対し、非常勤講師は講義のみ行います。 では、非常勤講師はどの程度の収入があるのでしょうか? そこで今回は、非常勤講師と常勤講師の給料を比較してみましょう。

大学教員の役職は5種類

大学の教員はおもに5種類あり、階級が上の役職から順に「教授」「准教授」「講師」「助教」「助手」と呼ばれています。
このうち講師の種類として、常勤講師と非常勤講師があります。学校教育法上、講師は必ず置かなければならないと決まっているわけではなく、大学の判断で置くことができる役職です。
なお、大学の教員になるためには「大学設置基準」という法律で定められたそれぞれの条件を満たさなければなりません。講師は法律上で教授や准教授になる資格のある人もしくは、特殊性のある専門分野で、大学で教える立場として十分な能力があることと定められています。
 

大学の非常勤講師の年収

非常勤講師は、それぞれの大学が定める就業規則によって支払い方法や勤務できる時間などが定められています。例えば金沢大学の場合、非常勤講師は週20時間程度までの勤務とし、給与は時間給で支払われます。一般的には、金沢大学同様に時間給で支払われている非常勤講師が多いようです。
なお、具体的な数値は出ていないものの、大学の非常勤講師の給料は、1コマ(90分)当たりおよそ1万円~3万円ほどと言われています。1週間に3コマ担当する場合、1週間で3万円~9万円、4週間(1ヶ月)で12万円~36万円です。年収に換算すると、144万円~432万円となります。
国税庁が発表している令和4年民間給与実態統計調査の1年を通じて勤務した給与所得者の平均年収は457万6000円であることから、非常勤講師の年収は平均年収以下となる可能性もあることが分かります。
非常勤講師に対し行ったとあるアンケートでは、年収200万円未満という人が全体の7割近くに上るというデータもあるようです。
 

大学の常勤講師の年収

非常勤講師と常勤講師は、立場上同じ「講師」ですが、収入には差があります。
令和4年賃金構造基本統計調査を基に、常勤講師の年収を計算したものが表1です。なお、この数字は高専職員の数字も含みます。
表1

給与 賞与 年収 常勤講師 47万9400円 121万9500円 697万2300円

※総務省「令和4年賃金構造基本統計調査」を基に筆者作成
常勤講師の年収はおよそ700万円で、非常勤講師と比較すると、270万円~550万円ほども多い収入となり、その差は歴然です。
 

大学の非常勤講師の問題点

週に3コマで、1ヶ月12万円~36万円もらえるのであれば、複数の大学を掛け持ちすればかなりよい収入になるのではと思うかもしれません。
しかし、講師の仕事は、講義をすることだけではなく、講義のための準備も重要な業務の1つ。その時間を確保することを考えると、多くの大学を掛け持ちすることは困難です。
このような、高学歴でありながら非正規雇用などにより満足な収入が得られない人を「高学歴ワーキングプア」と呼び、問題にもなっています。
 

大学の非常勤講師の平均年収は常勤講師よりも少ない可能性が高い

大学の非常勤講師は時給制となっており、受け持っているコマ数により給料が決まります。
講義の準備時間も必要であるにも関わらず、その時間には給料が支払われないことから、常勤講師よりも、年収は低い可能性もあります。しかし、培ってきた知識は決して無駄ではないため、仕事の中で自分の強みを活かせる機会を見つけられる可能性もあるでしょう。
 

出典

国立大学 法人金沢大学教育教員(非常勤講師)就業規則第2条・第13条
国税庁 令和4年民間給与実態統計調査
総務省 令和4年賃金構造基本統計調査職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー