静岡市での会見を終えた袴田秀子さん(右)が、巌さんに帰宅したことを伝えた=8日夜、袴田さん支援クラブ提供

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 1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)を無罪とした静岡地裁の再審判決が9日、確定した。

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 静岡地検がこの日、控訴する権利(上訴権)を放棄し、発表した。死刑が確定した事件をめぐり再審無罪が確定するのは戦後5件目。逮捕時に30歳だった袴田さんは、長年の拘禁生活で精神を病み、意思疎通が難しい状態にある。

 静岡県警の津田隆好本部長は同日、袴田さんへの謝罪について「どのように思いを伝えるかは、ご本人の意向や関係者と相談したうえで決めたい」と報道陣に説明。真犯人がわからないままになっている点は「ご遺族に対して大変遺憾、残念に思っている」と話した。

 日本弁護士連合会も「無罪判決確定までに長い年月を要した原因を検証し、是正措置を講じなければならない」とする会長談話を発表した。

 9月26日の再審判決は、袴田さんの逮捕から約1年後に見つかった中心的な証拠「5点の衣類」や「自白調書」など三つの証拠を捜査機関が捏造(ねつぞう)したと認定。死刑を求刑した検察側の主張を退け、無罪を言い渡した。

 検察トップの畝本直美・検事総長は8日に公表した異例の談話で、証拠捏造と認定された点を「強い不満」としつつ、控訴断念を表明。「袴田さんが長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてしまうこととなり、刑事司法の一翼を担う検察としても申し訳なく思っております」と謝罪していた。(金子和史、本間久志)