欧州で活躍がずらりと揃う日本代表。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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「絶対負けられない戦い」

 メディアがどれだけ煽ろうとも、もはや、その緊張感はアジアに存在しない。

 この2、3年で、日本人選手たちはメキメキと力を付けてきた。欧州進出が常態化。ベルギー1部で16人、ブンデスリーガで9人、イングランドは2部だけで8人で、MLS(メジャーリーグサッカーア)などを含めたら、なんと100人近くが海外でプレーする時代だ。

 欧州や南米の有力代表チームと比べても、戦力レベルはそん色ない。

 例えば今シーズン、三笘薫は世界中のサッカーファンを虜にするようなプレーをプレミアリーグで見せている。ブライトンの“騎兵”として暴れ回り、マンチェスター・ユナイテッドも奈落の底に突き落とした。そのドリブルは、控え目に言ってスペクタクルだ。

 また、GK鈴木彩艶はセリエA、パルマで定位置をつかみ取っている。日本人GKが守備の伝統があるイタリアでポジションを得るなど、10年前では考えられなかった。鈴木は今もプレーの波が激しく、ポテンシャルに実力が追いついていない印象は強いが、「時代の変化のサイン」と言えるだろう。

 久保建英は名門レアル・ソシエダでスペイン、ラ・リーガ史上、最も活躍している日本人であり、一昨シーズンはチャンピオンズリーグ(CL)出場を勝ち取り、昨シーズンはCLベスト16に進出した。
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 冨安健洋は、ややケガが多いだろうか。しかし、強豪アーセナルで2年連続プレミアリーグ、最終節まで優勝を争っている。ピッチに立った時の存在感は比類がない。

 遠藤航も今シーズンは監督交代で苦労しているが、かつて欧州で覇権を取ったリバプールに在籍。代表では、唯一代役がいない選手と言える。また、守田英正はスポルティング・リスボンでポルトガルリーグ、カップの2冠達成に大きく貢献。もともと技術レベルは高かったが、欧州で修羅場を重ねることで、クレバーさやたくましさが増した。

 他にも、南野拓実はモナコでフランス、リーグ・アンで2位躍進の立役者に。伊藤洋輝はシュツットガルトでのプレーが高く評価され、バイエルン・ミュンヘン移籍が決定した。板倉滉はボルシアMG、堂安律はフライブルク、浅野拓磨はマジョルカ、伊東純也、中村敬斗はスタッド・ドゥ・ランス、前田大然、旗手怜央、古橋亨梧はセルティックなど欧州の主要クラブで活躍を遂げ、枚挙にいとまがない。

 例えば10年前、2014年南アフリカW杯でも、Jリーグと欧州組の選手の数はまだ半分半分だった。日本サッカーは大きく様変わりした。これは日本サッカーが正しい道を歩んできた証明だろう。

 だからこそ、代表チームはもはやアジアではなく、世界標準で戦う必要があるのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。