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高齢ドライバーによる交通事故が発生するたびに話題となる「運転免許の返納」。各自治体や警察などで推奨していますが、車が生活に必要な地域などを中心に「返納したくてもできない」との声も聞かれます。

弁護士ドットコムでは、一般会員を対象に、免許返納をテーマにしたアンケートを実施し、1055人から回答が寄せられました(実施期間:8月28日〜9月3日)。

アンケートでは、60代以上の回答者の82.1%が現時点で「返納していない(返納予定なし)」と回答。また、返納していない70歳以上の親・祖父母のいる家族による「返納させたい」との回答が半数未満(44.1%)にとどまり、「わからない」が35.4%にのぼるなど、「返納させよう」一辺倒ではない状況がうかがえます。

70代以上の回答者からは、「判断能力の衰えを自覚しないで運転を続けるのは自分勝手」、「年齢でひとくくりにするのには反対」、「運転しなくなると、逆に認知機能が低下する」といった声がありました。アンケートで寄せられた様々な“生の声”を紹介します。

●「返納していない(返納予定なし)」が8割超

アンケートでは、60代以上と回答した290人のうち、「現在までに免許を返納した」が6.2%、「返納する予定」が9.0%でした。一方、「返納していない(返納予定なし)」が82.1%で、「現在までに免許を返納した」および「返納する予定」を大きく上回りました。

返納した、返納しない理由については、以下の声が寄せられました。

【返納した(する予定)】

「周りにも何人か免許を返納した人がいます。車を持つより必要に応じてタクシーを使ったほうが月間の経費が安上がりになるのがわかった」(60代女性)

「返納したが、移動手段が少なく引きこもりになる」(60代男性)

「ある年齢に達すると、多くの人が反射神経が鈍くなるので、周りの人のことを考えたら免許返納すべきだと思う」(60代女性)

「まだ自制心があるうちに返納するのがよい。返納後の不便はあったが、車がないのが当たり前という生活に慣れた」(80代以上男性)

【返納していない(返納予定なし)】

「いままでは特に危険も感じることがなく便利さが優先している」(60代女性)

「安全運転にこだわれば無理に返納する必要はない。若者でも事故を起こすものは起こす」(80代以上男性)

「身分証として便利だし、クラッチ付きの車が大好きなので、危険行為をするまでは所持したいと思う」(60代男性)

「免許更新前の教習所での実技講習ではまったく問題ないと言われたが、テレビで高齢者による事故のニュースをよく見るので普段運転は控えている」(70代男性)

「自動運転の車が普及した場合に備えて持っておこうと思う」(70代男性)

「事故を起こしている車種はオートマチック車でほとんど同種の車。私は30年前からマニュアル車にしている」(70代男性)

「返納せずとも運転を控えればいいだけの話」(60代男性)

「年齢だけで適不適を決めつける風潮は受け入れ難い」(70代男性)

クルマのメカニズムを再開発することで解決できる問題も少なくないはず。自動運転機能もそのひとつ。クルマメーカーの奮起に期待したい」(60代男性)

「移動手段としての車を運転することは国民の権利。人を罰するのではなく、車の安全性を高めた車を選択することで車を運転し続けることがよいと思う」(60代女性)

「事故を年代別に調べれば20〜30代比べて70〜80代の方の割合が高くなることはあるかと思うが、本当に老人世代だけに免許返納を声高に叫ぶことが正しいかどうか疑問を感じている」(80代以上男性)

高齢者が返上すべきという議論は誤っている。運園未熟者あるいは不適格者が返納するべき。老若によらず運転適格者かどうかの判定をすべきである」(70代男性)

●免許返納制度に対する意見

免許返納の是非については、以下の声が寄せられました。

【免許に対する制限をより強化すべきという意見】

「強制返納させる仕組みが是非必要」(50代男性)

「免許の上限年齢を決めてでも返納させるべきだと思う」(50代男性)

高齢者が必要な時にいつでも格安で利用できる介助付きのタクシーまたはボランティア輸送といったものをしっかり整備したうえで、年齢で一律の免許返納であるのなら賛成できる」(60代男性)

【返納によるデメリットを挙げる意見】

「年取って運転は危ないとは思うが、運転できないと行動範囲が狭くなって、楽しみを奪う事になるのではないか」(60代女性)

「買い物に行くにも病院に行くにも、車がなければ不便でしょうがない。高齢者の運転は怖い、迷惑だという意見が多数見受けられるが、返納しない高齢者の気持ちもよくわかる」(60代男性)

「(親が)免許を返納してから刺激が少なくなり、老化が進んだと思う。運転に不安はあるが、返納するべきではなかった」(40代男性)

●免許返納以外の対策について

高齢ドライバーの運転や事故防止対策について、以下の声が寄せられました。

高齢ドライバーの運転を懸念する意見】

「93歳の祖母が、家と近所のスーパーまでなどは車をまだ運転している。かなりしっかりしているが、事故を起こしたりしないか心配」(30代女性)

「本人は運転にまったく問題ないと言っているが、車をよく見ると、所々傷が増えていたり、ぶつけてへこませた形跡が複数個所見られる」(50代男性)

【事故防止対策についての意見】

「都心と地方とでは免許の必要性が異なる。一概にバスやタクシーなどのインフラが整備されればよいという話ではなく、高齢運転者の多くは移動の自由が損なわれることを嫌がっていると思う。地方では路線が縮小されているほか、運行本数が少なく、間隔も長い」(40代男性)

「衝突防止機能が搭載されている車両のみ運転できるように法律を改正すべき」(60代男性)

「交通ルールがよく理解出来てない年配者が多く、年寄りだからいいだろ、という安易な気持ちを持っている人がいるため、再度運転技術とルールについて再教育が必要」(60代男性)

「地方における移動手段として自動車は必要。適切な保安装置を装置した車両限定の免許の設定や認知、判断、運動機能の検査を厳格化するのと併せて、運転を認める方向であってほしい」(50代男性)

「公共交通機関が不便なので車は必需品。車の安全装置の精度を高め、全車標準装備、義務化にすべき」(50代男性)

●返納させるか否か…現場の声

免許を持っている70歳以上の親・祖父母の今後の返納について尋ねたところ、「返納させたい」が44.1%で、「返納させるつもりはない」の23.0%を上回りました。もっとも、「わからない」が35.4%にのぼるなど、子・孫でも判断がつかないケースもあるようです。

返納させたくても「説得が容易でない」との声が目立つ一方、返納を実現したことで安堵したという声もありました。

【親・祖父母に返納させるのが難しいという意見】

「(親が)自分ではまだまだ運転出来ると思っているので、返納する際の話し合いで喧嘩になって大変だった。説得するのが大変難しい」(50代男性)

「母親は返納についてこだわりはなかったが、父親は大変に嫌がった。男性として、運転ができなくなることに非常に抵抗があったのだろう。他の家庭の話でも、女性より男性のほうが返納を嫌がっている話をよく聞く」(70代男性)

「父親の運転がもともとスピードを出すタイプなので危険。運転してほしくない。だがまだ50代なので言い出しにくい」(20代男性)

「母は返納したが、父は『自分は大丈夫』だと思っている。『俺は他の人と違う』とどこからそんな自信がくるのかがわからない。高齢者による事故ニュースを見るたびに、返納したらと言うと機嫌が悪くなり困る」(50代女性)

「義母88歳。車の維持費を支払う能力がないのに乗りたがる。仕方なく車検代を夫が払っている。高齢者同士で2回事故を起こし、乗っては駄目といっても言う事を聞かない。歳を重ねる毎に意固地になる」(60代女性)

「普段は温厚な父だが、ハンドルを握るとイケイケな性格になって、同乗した私自身が怖い思いをしたこともある。おそらく父の不注意だろうと思われる事故を起こしているにもかかわらず、本人は『向こうが悪い!』と譲らず、なかなか免許の返納は理解が得られない」(50代男性)

【返納を実現して安堵したという意見】

「返納させたい1番の理由は、親の事故が元で周りにご迷惑をおかけすることが避けられること」(50代女性)

「当時70代の親が運転中に、咄嗟の判断ができず対向車が気を利かせて停車してくれた、という話を聞き、その後すぐに免許を返納した。交通の不便な場所に住み、自由に外出ができなくなるため悩んでいたが、ニュースでも高齢者の事故が相次ぎ、残された人生を事故によって苦悩しながら過ごしてほしくないと伝えたところ、納得して返納してくれた」(50代女性)

「自損だが、事故を起こしたため返納させた。田舎なので行動範囲が減って生気がなくなったような印象があるが、死ぬよりはマシと思っている」(20代男性)