株価が一時8%も上昇…アメリカの「大幅利下げ」で、じつは「大きな恩恵」を受ける企業の名前

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はじめに

2024年の米国経済を振り返ると、持続的なインフレ抑制策やFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に大きく影響を受け、株式市場と為替相場が相互に影響を及ぼしてきました。10月以降の米国株の動向を探るためには、FRBの利下げ政策動向やソフトランディング、11月の大統領選挙の動向に注目する必要があります。

そこで今回は9月に開催されたFOMCを中心に、今後の米国経済動向を考察していきます。

WSJのニック・ティミラオス氏の発言

FRBに関する情報は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記者であるニック・ティミラオス氏によってしばしば報じられ、その発言や分析が市場に大きな影響を与えてきました。

ティミラオス氏は、0.50%の利下げが決定される前に、その可能性があることを報道していました。

これはFRBが情報をティミラオス氏を通じて事前に市場の反応を確かめるとの見方が強く、筆者自身、FOMC前に彼からどんな発言が飛び出すのか、常に注目している記者です。

実際、今回もティミラオス氏の指摘により、利下げが発表された後、市場は大きな変動を見せませんでした。これは、投資家がすでにその可能性を織り込んでいたためです。

こうした背景を考慮すると、FRBの次の動きに対する市場の反応も冷静に捉えることができるでしょう。

FOMCの大幅利下げが予期するところ

9月18日に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、大方の事前予想0.25%を上回る0.50%の大幅な利下げが決定されました。この利下げは、インフレ抑制を目指した経済のソフトランディング(軟着陸)を視野に入れたものです。

パウエルFRB議長は記者会見で「労働市場は依然として堅調であり、今後もその水準を維持するために政策が必要」と強調しました。さらに、「0.50%の利下げは、経済を後押しするための適切なタイミングで行われたものであり、これは今後も継続的な利下げのペースを示すものではない」とのコメントも加えました。これにより、市場全体は比較的冷静な反応となりました。

米国経済はソフトランディングの機運が高まる

米国経済は現在、インフレ抑制策が進行中であり、景気の過熱を防ぐための取り組みが進んでいます。8月の米小売売上高の発表は前月比0.1%増となり、3ヶ月連続で予想を上回る堅調な数字が示され、米国経済が依然として強い経済力を持っていることが確認されました。

こうした数字とFRBの利下げによって、今後の米国経済はソフトランディングの達成という期待を強める結果となったのです。

一方で、FRBの政策が引き続き適切なバランスを保つことができるかどうかが、今後の経済動向を左右する鍵となります。過度な利下げがインフレの再燃を引き起こすリスクもあるため、市場は慎重にFRBパウエル議長の次の一手を見守る必要があります。

投資家としては、今後もFRBの利下げペースとそれに伴う経済指標の変化を注意深く観察することが求められるでしょう。

ドル・円、為替相場と日本経済への影響

9月18日のFOMC後、ドル円相場は一時的に円高に振れましたが、最終的には小幅な円安で取引を終えました。

またFOMCの大幅な利下げにもかかわらず、為替相場で大きな円高が進まなかった点が注目されます。通常、利下げが行われると金利が下がり、ドルが弱くなることで円高が進むことが期待されますが、今回はそうなりませんでした。

これは、米国の長期金利が大きく下がらず、ドルの売り圧力がそれほど強まらなかったことが要因です。つまり、利下げの影響が既に市場に織り込まれていたということです。

いいかえれば、これまでの日米の金融政策の違い(米国の利下げ、日本の利上げ)は、すでに市場で考慮されているため、新たな円高の要因として働かなかったのです。

つまり、為替レートには、このような政策の違いが反映されており、今後特別な材料が出てこない限り、円高がさらに進む可能性は低いと考えられます。

その結果、日本株市場も大幅に上昇しました。特に、日本の輸出企業にとって円高の一服は好材料となり、今後の業績改善への期待が高まっています。円相場の動向は、日本企業の収益に直接影響するため、今後も為替市場を注視する必要がありますが、今回の動きは投資家にとって安心材料となるでしょう。

10月のアノマリーと投資戦略の展望

次に10月のアノマリーですが、1950年1月~2020年5月までのS&P500の月間パフォーマンスを比較すると、10月は+0.8%と年で7番目にパフォーマンスが高い月です。

例年通りであれば10月以降、株価が徐々に上昇し、年末から来年1月にかけて強気相場となりやすいことを念頭に置いておくべきでしょう。

また10月は「ハロウィーン効果」や「オクトーバー・アノマリー」といった、株式市場で伝統的に注目される動きが見られることがあります。

その一方、10月は過去に大きな市場変動が起こった月であり、1987年のブラックマンデーや1929年の大恐慌を思い起こす人も多い時期です。そのため、10月はアノマリーを念頭に置きつつも、それを活用して市場が調整するタイミングを狙う投資家も少なくありません。

今後の米国経済の動向次第で、円安・ドル高が再び進行する可能性もあるため、為替相場の変化を見極めながら、柔軟な投資戦略を立てることが重要です。

FOMCの利下げによってテスラ株や住宅関連株が大幅上昇

FRBが利下げを決定した直後、米株式市場ではEV関連株が急速に買い戻されました。特にテスラの株価は一時8%も上昇し、マーケットでの注目を集めました。この背景には、金利低下が高額商品の購入に与えるポジティブな影響があります。

EVは初期購入費用が高額であるため、ローンを組む消費者にとって金利の引き下げは大きなメリットとなり、テスラなどのEVメーカーに対する需要が再び活気づくとの期待が広がりました。

9月20日の日経新聞によると、自動車調査会社エドマンズは、24年8月時点で新車ローンの平均金利は7.1%、中古車ローンの金利はさらに高く11.3%に達していたようです。

こうした高金利が消費者にとって大きな障害となり、多くの購入希望者が次の車の購入を見送っていたという現状があります。

しかし、今回の利下げにより、テスラのような高額なEVを購入する消費者が増えることが見込まれます。

また利下げによってローン金利が低下すると、高額住宅の購入がしやすくなり、住宅需要が拡大することが予測されます。

米ウェルズ・ファーゴの調査によれば、ローン金利の低下は住宅市場にポジティブな影響を与えると分析されており、住宅メーカーや関連企業の株価も同様に上昇傾向を示しています。

10月以降の米国株の動きと大統領選挙

11月5日に行われる大統領選挙前後は、10月以降の米国株市場に大きな影響を与える要因の一つです。選挙の結果次第では、経済政策が大きく変動する可能性があるため、株式市場は一時的に不安定な動きを見せることが予想されます。

次期大統領候補の政策次第では、企業業績や株価に直接的な影響を与えるため、市場は選挙戦の進展に敏感に反応するでしょう。

特に法人税の見直しや、貿易政策の変更が議論されており、これが企業の収益構造に与える影響は大きいです。

投資家は、選挙の動向を注視しながら慎重な投資判断をすることが求められます。

現状の事前予想などを見る限りはハリス氏が優勢ですが、選挙が終わるまで、どのような結末がやってくるのかは分からないので、あらかじめ結末を決めつけないことも重要な投資態度なはずです。

おわりに

投資を行う上で、短期的な市場の動きや政治的なイベントに振り回されることは、しばしば投資家にとって大きなリスクとなります。10月以降、米国には大統領選挙などの大きなイベントが続きますが、市場は短期的なボラティリティを見せる可能性があります。

こうした局面で重要なことは「ノイズ」に過度に影響されないことです。

過去のデータを見ても、大統領選挙によって一時的に市場を揺るがすことがあっても、長期的には企業の業績や経済の成長が株価に反映されていくことが確認されています。

こうした時期こそ、自身のリスク許容度やポートフォリオの見直しをしつつ、積立投資の継続や押し目買いを狙いたいと筆者は考えます。

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