ヤングなでしこに観客は「ハポン!」と連呼 コロンビア人記者がその魅力をレポート
ヤングなでしこ、またも北朝鮮に苦杯――9月22日(現地時間)、コロンビアの首都ボゴタで行なわれたU−20女子W杯決勝。日本は序盤から北朝鮮のプレスに苦しみ、前半15分、大会得点王でゴールデンブーツに輝いた17歳のチェ・イルソンに先制点を奪われると、最後までペースを握れず、0−1で完敗した。日本は北朝鮮に、今大会の予選も兼ねたU−20女子アジアカップでも、グループリーグで0−1、決勝で1−2と敗れていたが、その雪辱を晴らすことはできなかった。
日本はグループリーグでニュージーランド、ガーナ、オーストリア相手に全勝して首位通過すると、決勝トーナメント1回戦でナイジェリア、準々決勝で前回王者のスペイン、準決勝でオランダを破り決勝に進出していた。
そんなヤングなでしこを、開催地コロンビアの人々はどう見ていたのか。コロンビア人ジャーナリストがレポートする。
決勝戦を終え、スタンドの声援に応えるU−20女子日本代表の選手たちphoto by Julian Medina/Kaz Photography
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現在の女子サッカー界において、日本代表を語ることは、最近の彼女たちの成長を認めるということでもあるだろう。この世代の日本が世界で最も傑出しているチームであることは疑いの余地がない。彼女たちは2018年、2022年と、過去2大会で連続して決勝に進出するというすばらしい記録を引っさげてコロンビアに降り立つと、今大会でも初戦でニュージーランドを7−0で撃破したのを皮切りに、優勝候補として決勝まで駆け上がった。
特に、前回王者スペインを延長戦の末に破った準々決勝、そして準々決勝でPK戦により我がコロンビアを下していたオランダに完勝した準決勝は見応えがあり、ファンたちを失望させなかった。ミッドフィールダーの大山愛笑、フォワードの土方麻椰、松窪真心らのプレーは、スタジアムで観戦したファンの記憶に残ることだろう。
決勝戦が行なわれたボゴタのエル・カンピンには3万2908人の観客が集まった。試合開始直後から「ハポン! ハポン!」と地元コロンビアのサッカーファンが連呼。えこひいきにも思えるほど、日本に対する応援が際立っていた。
【敗れても人々の心に残るチームだった】だが、その決勝で日本は北朝鮮に敗れた。彼女たちのサッカーは、コロンビアのファンに期待されたものではなかった。北朝鮮は日本より卓越していたと言っていいだろう。試合開始から終了までゲームをコントロールし、この世代において今回で3度目の世界王者に輝く経験値をピッチ上で示していた。
日本は最初の5分間で、北朝鮮がいかにして自陣のゴールエリアに迫ってくるかを思い知らされたに違いない。ブロックで、そして1対1においても、北朝鮮の選手をどうマークするかに追われた。北朝鮮のボールコントロールは強靭で、日本はそれを取り返すことができなかった。
攻撃面では、ここまでゴールを重ねてきた松窪や土方にも得点機会は少なく、相手のゴール前には数回しか進入できていない。北朝鮮のよく組織化された守備のために、反攻もままならなかった。
試合終了の笛が鳴った直後、日本はビデオ判定によりPKをアピールし、北朝鮮の勝利の喜びが一瞬止まったが、判定はノーファウルに。結果は0−1で、北朝鮮の優勝と日本の準優勝が決まった。
日本の弱点というより、北朝鮮の総合力の高さが印象に残る決勝の一戦だったが、日本がコロンビアの人々の心に残るチームだったのは確かだ。そこで友人のジャーナリストたちに、今大会を通じての日本代表への評価を聞いてみた。
「そのプレイスタイルは攻撃的で、本気で相手陣内深くまで攻め入る。肉体的にも真剣に戦っているのが見てとれた。決勝では北朝鮮に敗れたものの、すべての試合で最後まであきらめないでボールを追いかけて走りまわる日本代表は、とても強い印象を残した。戦術的にも洗練されており、ハイプレシャーと集中力を途切れさせない。これらの要素が日本代表を優勝候補にさせているのだろう」(ラジオ番組『Voces del Futbal/フットボールの声』記者、クラウディア・へレナ・ヘルナンデス)
「女子の日本代表はいつも優勝候補と呼べる国のひとつだ。今大会でも、チームとしての規律のもと、ハイパフォーマンスを披露していた。特徴を創り出せる選手たちが集まっており、その点でも多くのサッカー批評家をうならせ、対戦国を恐れさせていた。彼女たちはとてもタフで強く、フィジカル的にもフィットしていた。何よりコーチの指示どおりにプレーできることは、他の国々がうらやむ点だろう」(専門誌『Femina Futbol/女子サッカー』記者、パウラ・フレスネダ)
一方、「日本代表は、チームメンタリティーとすばらしい戦術が最大の特徴だ」(通信社コロンビア・スポーツ・プレス・アソシエーションの『Acord Boyaca/アコード・ボヤカ)』記者、マオー・アレバロ)のように、日本人のメンタリティーと関連づけて日本チームを称賛する声も多い。
「一般論としてアジアのチームは、スピードとテクニックといった個々の特徴が、戦術、戦略といったチームという集合体としての任務を遂行することに役立っている。彼女たちのメンタリティーはチームプレーに向いているのだ。そのなかで日本代表の場合は、ボランチの小山史乃観ら、リーダーシップを持った選手がいることが大きな違いを生み出していた。
彼女たちを生んだ日本の育成計画は、何年もかけて努力を積み重ねてきたもので、それに忠誠心が加わることによって、集団としてのプレーの確立と勝者のメンタリティーの文化へとつながっていったのではないか。そこには、チームとしてのプレー哲学を壊してしまう個人主義の表現は存在しない。それが強さの源になっているのだろう」(テレビ番組『Tro Sports/トロ・スポルト』記者、ルイス・アラルコン)
いずれにしても、コロンビアの人々に「アジア勢の強さ」を強く印象づける大会だったのは確かだ。