「リンゴオォ!」リンゴが欲しくてオリからはみ出そうな動物園のパンダ…その迫力がスゴすぎた…!

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ちょっと短めのおみ足にまるいボディ。唯一無二のフォルムを持つ、神戸市立王子動物園のメスのジャイアントパンダ「タンタン(旦旦)」。そのかわいい姿と優雅な所作から、親しみを込めて、“神戸のお嬢様”とも呼ばれています。

2021年に心臓疾患が見つかり、治療を続けていたタンタンですが、2024年3月31日に虹の橋を渡りました。国内最高齢の28歳でした。いつでも笑顔をくれた神戸のお嬢様・タンタンをしのび、在りし日の日常を振り返りながらお伝えします。

華麗な富士タン

公式ツイッターで、富士山ならぬ“富士タン”を見せてくださったのは、連載61回目(https://gendai.media/articles/-/91552)。「今までも、うつ伏せに寝ていることはありましたが、あそこまでペタンと足を横に広げた姿は久しぶりですね」と、話すのは飼育員の梅元良次さん。お嬢様は、お体が柔らかいんですね。

よく見かけるのは、後ろあしを上げた“エクササイズポーズ”なのですが、「それはパンダがよくするポーズです。中国でもよく見かけましたが、楽な姿勢なんでしょうね」と、梅元さん。さらに「片方の後あしを、前あしで持つようなポーズは珍しいですね。これは、タンタン以外のパンダでは見たことがないです」と教えてくれました。

この頃は「見た目がシュッとしてきた」と評判だったお嬢様。体重もだいぶ減り、今は100キロを切っているそうです。「腹水を抜いていることもあり、体は確実に楽になっていると思いますよ」と、梅元さん。軽やかになった体で、すてきなポーズを繰り出しているのですね。

やる気にさせるテクニック

その勢いでトレーニングも! と思いきや、トレーニングルームの中には入っても、気分によって言うことを聞かないこともあるようで……。「中に入って、オリから圧をかけているときは、やる気があるとき。横になっているときは、やる気がないときですね」(梅元さん)。

最初からやる気がないときは、どうするのか伺うと「そこは、やる気にさせるテクニックがあるんですよ」と、笑う梅元さん。タンタンが中に入ったあと、簡単なトレーニングでやる気のスイッチを入れてから、獣医師さんを呼ぶのだそうです。「呼んでから、大体5分以内に獣医が来てくれます」。さらに梅元さんは、タンタンのやる気が、空腹の具合によって変わることも発見。トレーニングには、少しおなかがへっている位が一番良いのだとか。

「おなかがへりすぎると、イライラしちゃってダメなんです。そういう場合は、少しリンゴをあげて、おなかを落ち着かせてからトレーニングに移ります。大体は、リンゴをあげると気分が上がる。意外と単純なんです」と、梅元さん。お嬢様とは長い付き合いですから、その気にさせるコツも、よくご存じなのですね。

リンゴが欲しすぎる!

公式ツイッターには、リンゴが欲しすぎるタンタンの様子もツイートされていました。「あれは、やる気にあふれている時の写真です」(梅元さん)。トレーニングのご褒美には、やはりリンゴが一番良いのでしょうか。

「例えば、ニンジンでトレーニングするのは、ちょっと無理ですね。ご褒美はやはり一番好きなものでないと。中国でも、リンゴをご褒美として使っていますよ。時期によっては、カキやブドウをあげることもあります。ただ、うちはずっとご褒美にリンゴを使っているので、タンタンが混乱しないように、基本はリンゴです」と、話してくれました。

タンタンの好物であるリンゴは、時期を問わずに手に入りやすく、トレーニング用に小さくカットしやすいため、重宝しているのだそうですよ。

やる気満々

取材日は、ときおり小雪がちらつく肌寒い日。職員さんが冗談まじりに「今日はお客さんよりフラミンゴの数のほうが、多いかもしれません」と言うほど、人が少なめでした。観覧も眠り姫スタイルでスタート。「最近は観覧開始の11時までに、ごはんとクスリをすませて、満足して寝ています」と、梅元さん。13時近くになってから、起き出すことが多いのだそうです。

観覧列には、「パンパン、ばいば〜い!」と、元気な男の子。(お名前、タンタンだよ〜!)。タンタンも12時30分頃には目を覚まし、用意された5本のニンジンをペロリと平らげました。さらに、。空腹のため、リンゴが欲しいのでしょうか。トレーニングルームあたりをウロウロ。やる気満々ですね。取材の撤収時には、パンダ館に獣医さんらしき人影が。トレーニングがんばってくださいね、お嬢様。

届くんですね

器用に体をカキカキする姿が目撃されたのは、連載62回目(https://gendai.media/articles/-/91804)。梅元さんによると「特に、体に何か問題があるわけではないと思います」とのこと。しかし、控えめなおみ足を目いっぱい上げてのカキカキ……。そこまで、あしが届くんですね、お嬢様。

体調も落ち着いているということで、寝台の噛み跡も少ない気がします。「最近はかじらないですね。寝台の木をかじる行為は、ストレスも要因の一つなので、いまはそれだけ落ち着いているのだと思います」と、梅元さん。腹水を抜いておなかスッキリ、食欲も出てきていますし、心も晴れやかなのかもしれませんね。

寝台をかじりやすい時期は、あるのでしょうか。「時期で言うと、発情期などはやはり多く感じます」(梅元さん)。かじった部分でタンタンがケガをしないように、飼育員さんたちがいつもキレイに磨いてくれています。こうしてお嬢様の寝台は、いつも快適に整えられているのですね。

駆け引きの現場

この頃は、観覧時間中に室内をウォーキングするなど、一時期より活発に動く姿も見られるようになっていました。「以前より行動量が増えました。よく動き出したことに伴って、食欲も少しずつ出てきています」と、梅元さん。やはりイキイキと動く姿を見るとうれしくなりますよね。

観覧時間中にトレーニングルームの扉前へ行くのは、やる気の表れなのか梅元さんに尋ねると「多分、そうだと思いますよ」とのこと。公式ツイッターには、トレーニングを待ちわびるような姿もアップされていました。食欲も出てきて、「おリンゴ早く!」といった感じでしょうか。

取材時には、梅元さんとの駆け引きの現場も見ることができました。座ったまま、寝室の方を見つめるタンタン。何かを見つめる視線の先には、食べ残しの竹を片付ける梅元さんの姿が。梅元さんが何やら首を振って、体重計に置かれたニンジンを指さしています。これこそ心理戦、見つめ合うふたり……息をのむ展開です。

しばらくして、梅元さんが退場すると、おなかをすかせたタンタンが体重計の方へ降りてきました。この後はニンジンからのリンゴ。観覧時間終了間近には、おもむろに竹の方へ向かい、タイヤに座ってモグモグ。今日もたくさんおいしいものをいただくことができましたね、お嬢様。

NEXT:次回は2024年10月2日(水)に、お届け予定です!

※今回のおまけ写真は、2022年1月に撮影したものです。

<動物園の基本情報>

神戸市立王子動物園

〒657-0838 兵庫県神戸市灘区王子町3-1

TEL : 078-861-5624(代表)

公式ホームページ:https://www.kobe-ojizoo.jp

公式Twitter(@kobeojizoo):https://twitter.com/kobeojizoo

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