過去の成功体験に縛られ…意外と多い「高学歴だけど仕事ができない」人たちの「悲しき現実」

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根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。

根性論を持ち込む上司、完璧主義で細かすぎる人、八つ当たり屋、相手によって態度を変える人……職場を腐らせる人が一人でもいると、その影響が職場全体に広がることがある。

いったい、なぜなのか。

〈最大の原因として、精神分析で「攻撃者との同一視」と呼ばれるメカニズムが働くことが挙げられる。これは、自分の胸中に不安や恐怖、怒りや無力感などをかき立てた人物の攻撃を模倣して、屈辱的な体験を乗り越えようとする防衛メカニズムである。

このメカニズムは、さまざまな場面で働く。たとえば、子どもの頃に親から虐待を受け、「あんな親にはなりたくない」と思っていたのに、自分が親になると、自分が受けたのと同様の虐待をわが子に加える。学校でいじめられていた子どもが、自分より弱い相手に対して同様のいじめを繰り返す。こうして虐待やいじめが連鎖していく。

似たようなことは職場でも起こる。上司からパワハラを受けた社員が、昇進したとたん、部下や後輩に対して同様のパワハラを繰り返す。あるいは、お局様(つぼ ねさま)から陰湿な嫌がらせを受けた女性社員が、今度は女性の新入社員に同様の嫌がらせをする。

こうしたパワハラや嫌がらせの連鎖を目にするたびに、「自分がされて嫌だったのなら、同じことを他人にしなければいいのに」と私は思う。だが、残念ながら、そういう理屈は通用しないようだ。

むしろ、「自分は理不尽な目に遭い、つらい思いをした」という被害者意識が強いほど、自分と同じような体験を他の誰かに味わわせようとする。これは主に二つの理由によると考えられる。まず、「自分もやられたのだから、やってもいい」と正当化する。また、自分がつらい思いをした体験を他の誰かに味わわせることによってしか、その体験を乗り越えられないのかもしれない。〉(『職場を腐らせる人たち』より)

高学歴だけど仕事ができない

どのような職場や組織にもいる「職場を腐らせる人たち」の中でも、「いつも相手を見下す人」を見てみよう。

〈私が定期的にカウンセリングを行っている金融機関で、20代の男性行員のことで相談を受けた。この男性は、「最近、一流企業の〇〇会社の社長さんと会ってさ」「僕は有名な△△大学の出身でさ」などと言っては、いつも相手を見下す。そのため、ほとんどの同僚が辟易しているのだが、本人はまったく気づいていないらしく、相変わらず学歴をひけらかし、自分が偉い人を知っているという話を繰り返すそうだ。〉(『職場を腐らせる人たち』より)

〈今パッとしない人ほど過去の成功体験を持ち出すように見受けられる。その最たるものが学歴だ。学歴は主にペーパーテストの点数で決まり、コミュニケーション能力や臨機応変に対応する能力を必ずしも反映しているわけではない。当然、業務内容によっては、高学歴だが仕事ができない人が一定の割合で存在する。この男性の上司のように「いい大学を出ているのに、あまり仕事ができない」部下の件で相談を持ちかける管理職に何度もお目にかかったことがある。〉(『職場を腐らせる人たち』より)

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。

どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体