日本の運用会社は「大手の金融機関が親会社になっている」という大問題

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これまで5回に渡り、なかのアセットマネジメント代表の中野晴啓さんに話をうかがってきました。NISAの仕組みや口座変更について、ファンド選びのポイントなどを教えていただきましたが、今回は個人があまり知らない運用会社が抱える大きな課題について。投資家である以上運用会社との関わりがありますが、自分とは関係ない遠い世界のように感じてしまうこともあります。でも実は投資家にも影響が出てしまう大切なことがあるそう。

前回記事:<じつは「買わない方がいいアクティブファンド」の「3つの特徴」>

日本の運用会社は、大手の金融機関が親会社になっているという問題

インタビュアー川崎さちえ(以下、川崎):なかのアセットマネジメントのセミナーでは、御社が大事にしていることを話してくださいますね。その中に、「株主に支配されないこと」があると中野さんはよくおっしゃいます。新会社であるなかのアセットマネジメントも、独立した経営ガバナンスの会社ということですが、他の運用会社や証券会社などもそういう経営をしているのでしょうか?

中野晴啓さん(以下、中野さん):独立した経営ガバナンスは、株主の意見に左右されないということです。弊社の場合、主要株主はいますが、議決権は私が過半数を持っています。主要株主の意向によって経営やファンドの運用方針が変わることがあってはならないからです。

日本の大手の運用会社は、大手の銀行、証券、保険などを主軸とする金融コングロマリットを主要株主(親会社)にしていることが多いです。もちろん議決権も親会社が多く持っているので、親会社の考え方次第で運用や経営の方針が変わってしまいがちです。例えば運用会社が顧客のためを思って経営をしているとしましょう。信託報酬を下げたり、顧客に向き合った経営をしようとしたり。でも親会社が利益を追求していると、信託報酬を下げるのはもってのほかということになります。逆に信託報酬が高い商品の組成を求められるかもしれませんから、それでは顧客のためにはならないのです。つまり運用会社が顧客のために仕事をしたくても、それができなくなるリスクがあるということです。

川崎:親会社と運用会社の意見が合致しているケースはないのでしょうか?

中野さん:それはなかなか難しいケースだと思います。親会社は子会社(運用会社)を使って利益を出そうとします。そうなると手っ取り早く利益をあげるため、例えば売りやすくて手数料の高いファンドを作らせようとするでしょう。たとえ運用会社はそういうファンドを作りたくないと考えたとしても、親会社の指示を拒絶することが出来ず、本来自分たちがしたい運用ができなくなってしまいます。運用の目的や哲学、理念も守れなくなるケースがあり得るということですね。

大手の名前がついている安心感も

川崎:親会社と同じ名前がついている運用会社は、安心感もある。そう感じるのも正直なところです。なんと言いますか、倒産することもないだろし、逃げも隠れもしないだろうと……。

中野さん:経営が不安定になりにくいということはあるかもしれません。それが安心感につながるという考えも一理あります。人それぞれ運用会社をどの角度でどう切り取って見ていくのかは違うので、選び方の基準もさまざまでしょう。私が指摘する資本構造の問題は運用会社への信頼を自らがはかる上での重要な点であることは知っておくべきでしょう。

個人投資家には気づかない部分に、日本の運用業界の問題が隠れているようです。知らないことが多い世界ですが、運用会社には本来目指す運用をしてほしい、そう思うようなお話でした。

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