「アクティブファンドはインデックスファンドに負ける」は本当か…鵜呑みにする前に知っておきたいこと

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これまでNISAの仕組みや口座変更などの基本的な部分を、なかのアセットマネジメント代表の中野晴啓さんに掘り下げていただきました。今回は少し話を変えて、ファンドについてです。中野さんの会社ではアクティブファンドを運用していますが、「アクティブファンドの多くはインデックスファンドに負ける」と世間ではよく言われています。どういうことなのでしょうか。理由をお聞きしていきます。

前回記事:<せっかく「新NISA」を始めたのに、口座を開いた金融機関では「買いたい銘柄」が買えなかった…そんなとき、どうする>

アクティブファンドはテーマ型が多い

インタビュアー川崎さちえ(以下、川崎):なかのアセットマネジメント主催のセミナーに参加させていただいた時、中野さんは「長期的にはアクティブファンドの多くはインデックスファンドに負ける」とおっしゃいました。御社ではアクティブファンドを運用していますから、けっこう衝撃的な内容だなと思いました。この話の真意を教えていただけますか?

中野晴啓さん(以下、中野さん):アクティブファンドがインデックスファンドに負けるというのは、短期的な話ではなく10年、20年スパンで見た場合です。まずは期間をしっかりと確認してください。

その上で負ける理由を説明すると、これまでのアクティブファンドの多くは、テーマ型ファンドだったからです。テーマ型ファンドというのは、例えばAIや半導体などの産業をテーマにしているものや、インドや新興国といったこれから成長が期待できるような国や地域に特化したファンドのことです。そのテーマが今注目されているとしても、10年、20年と長期的に成長を続けられるのかという観点では運用設計されているわけではありません。

要するにテーマ型ファンドは、2、3年と短期的に値上がりを狙っていくのが投資目的になるので、10年後にそのファンドを調べてみたら残高も激減していて、時代遅れのファンドになっている可能性は廃除できません。そもそも10年運用するつもりがないのですから、10年スパンでインデックスファンドと比較をしたら負けてしまうのは当然なんですね。そういうアクティブファンドが多くなればなるほど、「アクティブファンドはインデックスファンドに負ける」と言われることが多くなり、統計上もそれがファクトとして示され常識化されてしまうということです。

川崎:基本的にアクティブファンドは、2〜3年が運用の目安なのでしょうか?

中野さん:もちろん何十年も元気に続いているアクティブファンドは数々存在しています。特にアメリカではそういうファンドがたくさんありますが、日本ではまだ少ないですね。それにNISAが始まったから投資をスタートさせたという人の場合には、これまで言われてきたことが正しいと考えてしまうこともあるでしょう。

長期投資をしっかり実践しているアクティブファンドとインデックスファンドを比較したデータが今の時点ではないのは残念ですが、だからこそ長期投資前提のアクティブファンドを選ぶことが大事になってきますね。私は、そういう真っ当なアクティブファンドがインデックスファンドに必ずしも負けるとは思えないんです。これからは全体的な話としての「アクティブファンドが負ける」ということではなくて、それぞれのアクティブファンドをしっかりと見ていく必要がありますね。

インデックスファンドの中身に似ているアクティブファンドに注意したい

中野さん:アクティブファンドがインデックスファンドに負けると言われるとしたら、「アクティブシェア」が関係していることもあります。これはそのファンドの保有銘柄がどれだけベンチマーク(今回の場合はインデックス)から乖離しているかを示す指標です。「0%」の場合はベンチマークと同じ、「100%」は全く異なります。アクティブシェアが極端に低いアクティブファンドの場合、ほぼインデックスと同じなので、結果も似通います。

その場合は、インデックスファンドとアクティブファンドではコスト(信託報酬)に違いが出てしまい、どうしてもアクティブファンドの方がコストの分運用成果が劣後することになるわけです。

川崎:なぜ高いのでしょう?

中野さん:アクティブファンドは、保有する銘柄を運用者が徹底的にリサーチします。そのためには手間や時間がかかりますから、インデックスファンドよりも人件費がプラスされると思ってよいでしょう。

川崎:アクティブファンドのコストを考えると、その分がインデックスファンドに負ける要因になるということですね?

中野さん:逆に考えると、アクティブシェアが高くてインデックスファンドと違う運用をしているアクティブファンドであれば、いくらコストが高くてもインデックスファンドとは異なり違う運用成果になり得るということです。

川崎:アクティブシェアは公表されているのでしょうか?

中野さん:自ら公表しているアクティブファンドは少ないですね。かといって個人が自分で調べるのも大変だと思います。それならば、きちんと公表をしていたり、ネットで情報が出ていたりするアクティブファンドを参考にするのもよいかもしれません。ただアクティブシェアがどのくらいならいいファンドなのかという指標もありませんから、最終的には自分の判断になってきますね。

アクティブファンドは面白い

川崎:アクティブシェアもそうですが、それぞれのファンドで保有する銘柄が違うので、アクティブファンドは面白いのかもしれません。

中野さん:全く同じ考えを持っているアクティブファンドはありません。仮に考え方が近いとしても銘柄は違ってきて、これがアクティブファンドの個性と言えます。そして当然ながら結果が全然違ってきます。これから10年、20年後を楽しみにしてほしいですね。

インデックスファンドが終焉を迎えるという話は、以前『「オルカン」一強の時代は終わる…その代わりに、じつはこれから大注目の「意外な投資対象」』でうかがいました。今回はそれとは別次元での話ですから、ファンド選びは重要になってきそうです。

ではどうやってアクティブファンドを選んでいけばいいのか。次の記事<じつは「買わない方がいいアクティブファンド」の「3つの特徴」>で教えていただきます。

じつは「買わない方がいいアクティブファンド」の「3つの特徴」