せっかく新NISAを始めたのに「歴史的な大暴落」で大損した人も…「では、どうするか」という大問題

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新NISAがスタートして7ヶ月が過ぎた2024年8月2日(金)。この日、日経平均は前日比約2200円安となり、史上2番目の下げ幅を記録しました。そして週明けの8月5日(月)には前日比4451円安という歴史的な下げ幅を記録しています。2024年1月1日から新NISAをスタートさせた投資家たちにとっては、おそらく初めての大暴落ではないでしょうか。「これがマーケットなのか……」とショックを隠せなかったかもしれません。

とはいえNISAは短期的なトレードを目的にするのではなく、長期的な視点に立って将来の財産作りをするための制度です。今回の大暴落で投げ売りをしては意味がない。そう考える投資家も多いのでしょう。そのような投資家の背中を押してくれるのが、なかのアセットマネジメント代表の中野晴啓さん。8月の株価の乱高下をどう考えるのか、そしてNISAをどう使っていくのかをお聞きしました。(2024年8月2日取材)

2024年8月の株価暴落をどう見るか

インタビュアー川崎さちえ(以下、川崎):8月の大暴落は日銀が金利を0.25%上げたことが大きな原因と言えますね。2024年になってからNISAを始めた人にとっては、かなりショッキングなことだったと思います。その後も株価は乱高下を続けていましたが、一連の流れを中野さんはどう考えていましたか?

中野晴啓さん(以下、中野さん):日銀が金利を0.25%上げると発表したので、日本は久しぶりに金利のある世界に戻ります。ただ現在は景気が加熱しているわけではないので、金利が上がった分実体経済が冷え込むのではないか、景気を下押しするのではないかという懸念がマーケットに漂いました。さらに円高になったことで輸出企業の収益が目減りするとの見方も出ましたね。この2つが、今回の大きな下落の原因でしょう。

川崎:金利が上がればマーケットが下がるのは、ある意味必然ですよね?

中野さん:金利が上がることでマーケットが下落するのは想定内のことですが、ただ2024年1月からNISAを始めた人にとってはかなり衝撃的なことだったと思います。

川崎:これだけ下がったら、やっぱり怖いと思いますよ。

中野さん:でもここで大切なのは、瞬間的に株価が暴落しても経済活動が急に滞るわけではないということです。株価が投資家の短期的な思惑によって下がっているだけですから。長期投資は自分が投資したお金を相場に出すのではなく、マーケットを通してビジネスに出しているのですから、株価の暴落でビジネスの中身が変わるわけではありません。これが実体経済です。マーケットと実体経済は違います。NISAを使った長期投資は、実体経済にお金を入れていく行為ですから、相場が暴落した時には、投資対象の価値が変わっていないことを確認してマーケットとは別に考えることが大切になってきます。

NISAスタートから順調すぎた相場

中野さん:2024年8月2日(取材時)は、NISAが始まって7ヶ月が経過しているタイミングです。この間はマーケットが順調に推移して、史上最高値をつける場面もありましたよね。NISAを初めて始めた人にとっては、「投資をすれば儲かる」と状況だったとも言えます。だからこそ、今回の暴落はショッキングですし、もしかしたら売ってしまった人もいるかもしれません。

川崎:もし心配ならば、例えば投資額を減らすという選択肢もありそうですね。

中野さん:NISAでは1年に360万円まで(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)と決まっていますが、これはあくまで上限の話。生涯投資枠は1800万円、そして無期限ですから、時間をかけて投資をすることができます。

もし今回の暴落で投資を続けることに躊躇したとしても、投資行動を変えないことが大切です。何より自分が無理しない範囲内で毎月積立で長期投資に参加することを考えて下さい。

無期限になったことのメリット

川崎:無期限で投資ができるということは、どのタイミングで参加してもいいということですよね。

中野さん:2023年の終わりには、NISAを始めないと!と焦っていた人もたくさんいました。一方ではすぐに参加する必要はないと考えて、自分のタイミングで始めようとしている人もいますね。タイミングは人それぞれで、例えば金銭的な事情が関わってくることもあるでしょう。また自分なりに株価が高いと思っている人もいるでしょうから、タイミングを考える必要がない毎月積立で時間分散しながら長期投資を行ってください。無期限だからこそ、積立投資で時間をしっかり有効活用してほしいのです。

川崎:でも、いくら無期限になったとはいえ、20代と50代の人では残っている時間が違ってきてしまいます。

中野さん:年齢によってどのくらいの期間で使うかが違ってしまうのは仕方ないですが、無期限になることで不平等があってはいけません。20代の人の方が長く投資を続けられるので、だからこそ1800万円という生涯投資枠があるんです。この枠をどう使うかは自分で決めること。ある程度の年齢になってお金に余裕が出てきた人なら、年間最大360万円の投資ができるかもしれません。月で考えると30万円です。一方若い人は毎月1万円ずつでもいいわけです。期限がないのだから、自分に合わせたプランニングができるようになりました。

川崎:無期限だからこそ、焦らずに計画的に投資ができるということですね?

中野さん:以前のNISA制度(つみたてNISA)では、年間40万円という枠でした。しかもその年の非課税枠は来年には消えてしまうので、枠を使い切らないともったいないと焦った人も多かったです。でも2024年からのNISA制度はその年の枠が消えるという概念がありません。切迫感がないから、落ち着いて計画を立てられます。これがNISAの大きなメリットといえるでしょう。

川崎:デメリットはないのでしょうか?

中野さん:私が考える限り、無期限になったことのデメリットはありませんね。

投資期間が無期限になったことで、金銭的な事情などを踏まえて計画的に投資ができるようになりました。メリットばかりでデメリットはないと中野さんは言い切りますから、このメリットを活かして将来の資産を作っていくことが重要になってきそうです。

次の記事では「復活する非課税枠」についてお聞きします。

次回記事『新NISAで、じつは「つかわない方が良い制度」があった…!』へ続く。

新NISAで、じつは「つかわない方が良い制度」があった…!