Googleなどのグローバル企業が採用…ストレス・不安を減らす「すごいメンタルケア法」があった!
さまざまな課題を抱えるリーダー職は常に気苦労が絶えない。だが、もっとも自分を叱責し、追い詰めているのは、周囲の人ではなく自分自身であることも少なくないという。Googleなどのグローバル企業が取り入れるメンタルケア法「セルフ・コンパッション」を日本に広め、『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』を上梓した若杉忠弘氏が、自分を責める自身の声とその対応の仕方について解説する。
「無意識の声」が自分を疲弊させている
次のような職場の場面を想像してください。同僚が上司に呼び出されています。その同僚は、重要なプロジェクトで期待通りの成果を出せていません。上司が声を荒げ、ダメ出しを始めます。
「こんなこともできないのか!」
「まったく価値を出せてない!」
「今まで何をやってたんだ!」
「怠けているからできないんだ!」
「何度言ったらわかるんだ!」
罵声が響き、緊張感が走ります。同僚はただただ下を向き、小さく縮こまっています。
みなさんは、きっとこう思うでしょう。こんな上司の接し方は時代遅れだと。こんなやり方では、同僚はますます自信をなくし、ストレスと不安は増えるばかりと思ったでしょう。
このようなやり方を否定するみなさん自身が、ダメ出しを行っているかもしれません。もちろん、メンバーや周りにではありません。
ほかならぬ、自分自身に対して、批判的な言葉を浴びせていることがあるのです。
じつは、多くの人が、何かに失敗したり自分はダメな人間だと感じたりするとき、先の上司のような言葉を自分に向けています。
「いやいや、そんな言葉を自分にかけてない」と思われた読者も、一度、よく自分の内なる声を観察してみてください。意外ときつい言葉を、自分にかけているかもしれません。
私たちの多くは、他の誰でもない、自分の批判的な言葉に萎縮してしまっていることが多いものです。自己批判を続けていてはどんどん自信をなくしてしまうばかりです。
ですから、もし、みなさんが自分に批判的だなと感じたのなら、その態度を変えることをおすすめします。
大切な人に向けるやさしさを自分に向ける
では、どう変えたらよいのでしょうか。
ヒントは、大切な友人や同僚への接し方にあります。先の同僚がみなさんの大切な友人だとしたら、どんなふうに接するか想像してみてください。決して、大切な友人を批判したり、責めたりはしないはずです。
きっと、みなさんは落ち込む友人に寄り添い、理解を示し、やさしいもしくは励ましの言葉をかけると思います。
これがやさしさです。リーダーのみなさんに本稿でお伝えしたいことは、シンプルです。このやさしさを自分にも向けることです。
これをセルフ・コンパッションといいます。
コンパッションはやさしさや思いやりという意味です。コンパッションを自分、つまりセルフに向けるので、セルフ・コンパッションといいます。セルフ・コンパッションとは、大切な友人に接するように、自分自身にも接することです。
みなさんが日々の生活にセルフ・コンパッションを取り入れると、数えきれないほどのメリットがあります。
最近の心理学の知見から、その一端をご紹介しましょう。
まず、ストレスが減り、不安も減り、心が落ち着いてきます。
仕事で疲れ切ることも少ない。気分が落ち込んだり、憂うつな気分を感じたりすることも減ります。何でも完璧にしようとするあまり、身動きがとれないということも減ります。
新しいことにチャレンジする恐怖や失敗への不安にも、対処できるようになります。
それだけではありません。セルフ・コンパッションを実践すると、幸福感が高まります。仕事にも熱中できるようになります。
先が見通せないときにでも、希望と楽観的な見方も忘れません。難しい局面を乗り切る自信や胆力も出てきます。
セルフ・コンパッションを取り入れている人は、仕事の失敗やキャリアの挫折など、心が折れるようなことが起きたとしても、早く回復します。
セルフ・コンパッションを行うことで、体も健康になることが知られています。実際、セルフ・コンパッションができるようになると、免疫力が高まり、体調が整いやすくなります。
仕事以外でもパートナーシップがうまくいきます。「いい人生を歩んでいる」という実感も高くなります。
セルフ・コンパッションは魔法のような技術に聞こえますが、これらの効果は私が勝手に書いているわけではなく、最近の心理学などの研究によって裏付けされているものです。
セルフ・コンパッションは、みなさんの心身を整え、仕事でもプライベートでも充実した生活を送るのに大いに役に立つのです。
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後編の記事〈「無意識の自己批判」で傷つくのをやめよう…自分を自分で励ます方法「セルフ・コンパッション」〉では、実際にどのようにセルフ・コンパッションを行うのかをお伝えします。