店頭からお米が消えた「令和の米騒動」。そのきっかけの1つが2023年の猛暑でしたが、2024年も猛暑が続き米の出来栄えに懸念が出ています。この暑さに負けない米作りを目指そうと静岡県内の研究者や農家が新たな道を模索しています。その最前線を追いました。

【写真を見る】「暑さに強い米」米不足の救世主なるか 研究開発進む新品種 猛暑を逆手にとった農家も

揚げたての牛カツにあうのは、やはり白米。静岡県富士市の飲食店「米えにし」はさまざまな定食を提供していますが、もっともこだわっているのは米です。

<米えにし 長田実可さん>

「ふっくら炊き上がる感じでお米の甘みが全然おうちの炊飯器と違って」

「米えにし」では、ご飯のおかわり無料のサービスも人気の要因ですが、いま「令和の米騒動」が影を落としています。

<米えにし 秋山俊雄社長>

「新米の価格がたぶん2割から3割くらい上がるのではと心配している。特にご飯お替り自由になっているので、そのことを含めてその時には考えなきゃいけない状況になる」

スーパーなどの売り場からお米が消えた「令和の米騒動」。2023年の猛暑で高温障害が相次いだことも1つの要因に。猛暑が続く2024年も生産現場は苦しい状況が続いていますが、この状況を打破しようと静岡県内で研究が進められています。

静岡県磐田市の静岡県農林技術研究所で進められているのは、暑さに強い米の開発。2024年は50組程度の交配をして数万株の中から有望なものを選んでいるそうです。

<静岡県農林技術研究所 加藤泰久主任研究員>

「単に高温に強い玄米がきれいなお米はできるが、収穫量があって、ごはんがおいしくて、農家がつくりやすいという様々な特性が一定レベルの以上にないと品種化には到達できない」

1つの品種を世に送り出すのに最短で10年はかかると言われる米の開発。静岡県農林技術研究所では、他の地域で開発された暑さに強い米が静岡県内でも栽培できるか確かめる実験もしています。育てやすい米を見つけないと米農家が減っていくという懸念も浮上しているのです。

<静岡県農林技術研究所 山下達也上席研究員>

「農家の経営という意味では白未熟粒というのは価格が落ちますので、経営できなくなる危機は非常に大きなものがあって」

帝国データバンクによりますと2024年は米農家の廃業が過去最多のペースで推移。肥料や農薬、機材などのコストが上がり、猛暑による不作で米づくりをやめるケースが増えているとみられています。

そんな中、暑さを逆手にとって米を育てる農家も現れています。浜松市の田んぼで2024年シーズンから始まったのは「再生二期作」という栽培方法です。稲刈りは根元から切ってしまうのが通常のやり方ですが、再生二期作では株を40センチ程度残して高く刈ります。すると、切株から芽が伸びて2か月ほどで、もう一度収穫できるという栽培方法です。

<じゅんちゃんファーム 宮本純社長>

「普通、暑さは米農家からするとマイナスの影響受けることが多いが、再生二期作は暑いからこそ穂が伸びて再生を促して2回収穫につなげられる」

2023年、じゅんちゃんファームでは、高温障害で売り上げが4割ほど減ってしまいました。再生二期作は2度目の稲刈りまで1日平均15℃以上の気温が続くことが条件ですが、上手くいけば例年の倍近い生産量が期待できます。

<じゅんちゃんファーム 宮本純社長>

「どんどんリタイヤしていく農家がそこら中にいて、5年、10年経ったときに米が欲しくても買えない危機感を非常に感じているので、私のやっていることがうまくいって、皆さんにとってウィンウィンの取り組みになったらいいな、その一端を担えたらいいな」

これ以上、暑さが続くと米が実らなくなるという事態が相次ぐことも懸念されていて、コントロールできない猛暑をどう乗り切るか、さらに知恵を絞ることが求められそうです。