【ホテル】朝食バイキングで「食べ物」なかなか補充されず…“返金請求”できる? 弁護士に聞く
9月の3連休中に旅行に行く人の中には、ホテルを利用する人も多いと思います。ホテルによっては、朝食バイキングを実施していることがあり、自分が食べたい料理を好きなだけ食べられるため、重宝します。
一方、ホテルの朝食バイキングの利用時に料理がなくなっても、なかなか補充されないことがあります。このことが原因でバイキングの実施時間内に朝食を満足に食べられなかった場合、客はホテル側に朝食代の返金を求めることができるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
「過失相殺」に該当すると返金請求できず
Q.ホテルの朝食バイキングの利用時に料理がなかなか補充されず、実施時間内に満足に食べられなかった場合、ホテル側に朝食代の返金を求めることは可能なのでしょうか。
牧野さん「状況によって異なります。飲食提供契約に基づき、ホテル側が合理的な時間内、つまり朝食の提供時間内に適度に料理を補充すれば、基本的には契約の義務を果たしたことになるでしょう。
一方、料理の提供が大幅に遅れ、客が制限時間内に満足に食べられなかった場合は債務不履行になり、返金請求が認められる可能性があります。
バイキングの終了直前になって料理が補充されたため、客が急いで食べて退出しなければならず、満足に食べることができなかったとします。その客が早めに朝食会場に行って食べ始めれば、満足に食事ができた可能性が高いなど、客の方にも原因があったとされる、いわゆる『過失相殺』に該当する場合、客の損害賠償請求(返金)は難しいでしょう」
Q.朝食バイキングを実施するホテルの中には、「豊富な料理」「○○が食べられる」などと大々的に宣伝している場合があります。それにもかかわらず、料理がなくなったときになかなか補充しなかった場合、ホテル側が法的責任を問われる可能性はありますか。
牧野さん「店側が意図的に料理を出さなかったのか、それとも、人員不足など、運営上の問題が原因だったのか、いろいろな理由があるとは思いますが、少なくとも『豊富な料理』『○○が食べられる』などと大々的に宣伝している以上は、客が制限時間内に満足な食事ができるよう、運営態勢を万全にし、必要な数のスタッフを配置しておくべきだと思います。
結果として、お目当ての料理がなかなか補充されないまま提供時間が過ぎてしまい、客が食べられなかった場合、景品表示法の『有利誤認』として、景品表示法違反に当たる可能性があるでしょう。同法違反の場合はまず、消費者庁から措置命令を受けます。その命令に違反した場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります(同法36条)。
一般的には、消費者庁から指導を受けても是正すればよく、いきなり罰則が科されることはありません。そのことが、こうした宣伝が後を絶たない理由でしょう」
Q.朝食バイキングの実施時に従業員の急病による人手不足が原因で、料理を満足に提供できなかったとします。この場合、ホテル側が、客から朝食代の返金を求められても拒否することは可能なのでしょうか。
牧野さん「従業員の急病による人手不足が原因で料理を満足に提供できなかった場合、人員の補充態勢を整える必要があります。ただ、人手不足はあくまでホテル側の事情なので、ホテル側が自ら不可抗力(=免責事由)を主張するのは難しいでしょう。
不可抗力に該当しないと判断された場合、当事者に責任ある債務不履行となり、不十分な対応部分について、返金責任が生じる可能性があるでしょう」