激流必至のセントウルS 馬場と展開を味方にできる「キレ者」2頭が高配当を演出か
今週から秋競馬が開幕。今後のGI戦線を占ううえで重要なステップレースが開幕週から組まれ、有力馬も続々と始動戦を迎える。西では、GIスプリンターズS(9月29日/中山・芝1200m)の前哨戦となるGIIセントウルS(9月8日/中京・芝1200m)が行なわれる。
過去10年の結果振り返ってみると、2016年から2022年まで1番人気が7連勝。2014年、2015年も2着に入っており、その信頼度はかなり高い。
しかし昨年は、1番人気のビッグシーザーが馬群に沈んで、14番人気のテイエムスパーダが勝利。3連単では90万円超えの高額配当が飛び出した。また、2015年にも10番人気のアクティブミノルが勝って、3連単の配当は40万円超え。1番人気が安定した成績を残しているとはいえ、荒れる時はとことん荒れる、穴党好みの一戦と言えるかもしれない。
そして、今年は阪神競馬場の改修に伴い、舞台となるのは中京競馬場。京都競馬場の改修工事の影響で2020年〜2022年の3年間も中京で開催されたが、今回は夏競馬からの連続開催となる。となると、前回の中京開催の傾向とも、通常の逃げ・先行有利な"開幕週の競馬"とも、異なると見ていいだろう。
現に、東京中日スポーツの大野英樹記者はこう語る。
「先々週までの中京は良好な馬場状態を保っていましたが、先週、台風10号の影響によって芝コースは一気に悪化。内側を避けて通るケースが多く見られ、明らかに外差し有利の馬場へと変わってしまいました。
今週は大きな天候の崩れはない予報ですが、内側はすでに荒れた状態。引き続きAコースで実施される今週は、先週同様、外差し有利な馬場と考えるのが妥当でしょう」
さらに、想定される展開面からも「外差しが有利」と大野記者は言う。
「メンバーを見渡すと、GIII北九州記念(6月30日/小倉・芝1200m)を圧倒的なスピードで押しきったピューロマジック(牝3歳)に、2走前のオープン特別・モルガナイトS(4月7日/福島・芝1200m)で前半3ハロン33秒0のハイペースを逃げきったアサカラキング(牡4歳)、快速テイエムスパーダ(牝5歳)などスピード自慢が集って、先手争いは激戦必至。そうした状況から生まれる流れを想定すれば、末脚を秘める馬に魅力を感じます」
そうして、大野記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。
「まず意外なところでは、モズメイメイ(牝4歳)です。
抜群のスタートセンスによって、もともとは快速を売りにしていた同馬ですが、長く陥っていたスランプから脱したのは、差す競馬をマスターしてから。牝馬は、一度調子を落としてしまうと復活するのは困難なのですが、この馬は長いトンネルから脱しただけでなく、新たなスタイルを身につけての復活を果たしたのですから、頭が下がります」
3歳時には、GIIチューリップ賞(阪神・芝1600m)、GIII葵S(京都・芝1200m)を逃げて快勝したモズメイメイだが、以降古馬との対戦となるレースでは、そのスタートを生かせずじまい。6戦連続でふた桁着順での大敗となった。
しかし脚質転換を図ると、2走前の北九州記念で3着と好走。前走のGIIIアイビスサマーダッシュ(7月28日/新潟・芝1000m)でもゴール前で鋭く伸びて、久しぶりの重賞勝利を飾った。
「差し有利の馬場は、今のモズメイメイにはぴったり。加えて、陣営が『心身ともにバランスがよくなった』と話すように、再び充実期に入ってきた感があります。まだ奥がありそうですし、相手強化でも楽しみな一戦です」
セントウルSでの一発が期待されるトゥラヴェスーラ photo by Eiichi Yamane/AFLO
大野記者が推奨するもう1頭は、コース実績のある超ベテランだ。
「トゥラヴェスーラ(牡9歳)です。9歳という高齢を考えると、大きな上積みを見込むのは難しいかもしれませんが、近走ではどちらかと言えば、前残りの展開と馬場に泣かされた印象があります。
前走の北九州記念(13着)もそう。ピューロマジックが開幕週の小倉でスピードを生かして逃げきるという、先行有利の展開でした。言うまでもなく、本来の力は出しきれていません。
しかし今回は、馬場も、展開も差し有利。加えて、中京の6ハロン戦という舞台も悪くありません。昨年のGI高松宮記念でも、不良馬場を内から猛然と追い込んで3着入線を果たしました。
今の馬場なら、少々のリスクがあっても大外に持ち出すことができれば、最後は豪脚を発揮してくれるはず。大ベテランの激走に期待が膨らみます」
ハイペース必至のセントウルS。その激流を味方にして、最後に突っ込んでくるのはどの馬か。それが、ここに名前の挙がった2頭であっても不思議ではない。