セントウルSは馬場状態と展開がカギ 目が行くのは脚質転換に成功した牝馬から漂う勝負気配
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
――今週から、いよいよ秋競馬が開幕。早速、この先の大舞台を見据えたトライアル重賞が東西で組まれ、その熾烈な争いから目が離せません。中京競馬場では、GIスプリンターズS(9月29日/中山・芝1200m)の前哨戦となるGIIセントウルS(9月8日/芝1200m)が行なわれます。
大西直宏(以下、大西)近年のスプリント路線は明確な中心馬が不在で、長らく混戦状態が続いています。今年のスプリンターズSも、休養明けで挑む実績馬、夏に力をつけてきた馬、さらには香港からの参戦馬など、レースに臨む過程においてもバリエーションに富んでおり、非常に難解なレースになることが予想されます。
そうした状況にあって、セントウルSは伝統的にスプリンターズSへの重要な前哨戦として位置づけられていて、現にこのレースをステップにして本番で好走した馬が過去にも多数います。それゆえ、本番の行方を占ううえでも見逃せない一戦です。
そして今年も、昨年のスプリンターズSの覇者であるママコチャ(牝5歳)や、今春のGIヴィクトリアマイル(5月12日/東京・芝1600m)を制したテンハッピーローズ(牝6歳)など、注目すべきメンバーが参戦。これらがどのようなパフォーマンスを見せるのか、興味深いところです。
――セントウルSは、サマースプリントシリーズの最終戦でもあり、今後のGIを目標にして始動する馬と、シリーズ優勝を狙う馬との激しい争いも見どころになりますね。
大西 そうですね。これまでの実績を重視するのか、夏の勢いを取るのか、毎年悩まされます。
また、今年のセントウルSは阪神競馬場の改修工事により、夏からの連続開催となる中京競馬場での開催。そうなると、馬場状態のチェックも必要です。
2020年〜2022年にも京都競馬場の改修工事の影響で中京での開催となりましたが、その時は夏の小倉開催後に中京へ移ったため、馬場状態は良好でした。しかし今年は、先にも触れたとおり、夏からの連続開催中。先週の豪雨によるダメージなども加わって、芝コースはかなり傷んでいることが想定されます。
今週もこれまでと同様、Aコースが使用される予定。秋競馬の開幕週とはいえ、外差しが決まりやすい馬場になっているかもしれません。
――開幕週だからといって、夏競馬でも使用されてきた競馬場が舞台。それゆえ、単純に「逃げ・先行有利」とは言えないわけですね。
大西 馬場状態もさることながら、メンバー的に見ても"先行激化"は避けられそうもありません。なにしろ、現役屈指の快速馬ピューロマジック(牝3歳)が出走予定ですし、前走で出遅れたアサカラキング(牡4歳)も今回は積極策からの巻き返しを図ってくるはずです。
さらに、テイエムスパーダ(牝5歳)も逃げてこそ、持ち味を発揮できるタイプ。そうしたメンバー構成から、ペースが速くなることが予想されます。
それでも、もし開催場替わりの開幕週であれば、速いペースでも前に行った馬がそのまま押しきる"行った行った"も期待できますが、何度も言うとおり今年は開催中の馬場。それを考慮すると、今年の場合は直線の坂を上がったあと、差し馬が台頭してくるシーンが十分に考えられます。
――そうした展開となった場合、気になる存在はいますか。
大西 この夏、脚質転換に成功したモズメイメイ(牝4歳)に注目しています。
セントウルSでの勝ち負けが期待されるモズメイメイ photo by Eiichi Yamane/AFLO
これまでは逃げて結果を出してきた馬ですが、2走前のGIII北九州記念(6月30日/小倉・芝1200m)では中団から差し脚を伸ばして3着と好走。前に行かない競馬で上位争いに加われたことは大きな収穫でした。
その成果が明確に表われたのが、次走のGIIIアイビスサマーダッシュ(7月28日/新潟・芝1000m)。タイム自体は平凡でしたが、中団から差しきり勝ちを収めた内容はとても中身が濃かったと思います。
この2戦の競馬を見る限り、その結果がフロックとは思えませんし、立て直しに成功したと考えてもいいのではないでしょうか。
さらに、モズメイメイに関しては、勝てば"サマースプリントシリーズ優勝"がかかっているため、この先のGIを見据えるというよりも、ここでの勝負度合いのほうが高い、と見ています。
陣営の勝負への意気込みや、差し馬に有利になりそうな馬場を考慮すれば、彼女の好走が"二度あることは三度ある"となる可能性も高いはず。よって、モズメイメイを今回の「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。