もはや「先発全員海外組」も、話題にはならなくなった。

 2年後に北中米3カ国で共催されるワールドカップ出場をかけた、アジア最終予選初戦の中国戦。日本は先発メンバー11人のみならず、ベンチ入りした控えメンバーにも8人の海外組が名を連ねた。

 この夏、新たにJリーグから海を渡った選手も数多く、海外組が増加の一途をたどっているなかで、各選手はベルギーからイタリア・セリエA、オランダからイングランド・プレミアリーグといったように、それぞれステップアップを遂げ、海外組は単に数だけでなく、質の上でも高まりを示している。

 だとすれば、先発全員海外組も、至極当然の成り行き。今後は、国内組が日本代表の先発に名を連ねることのほうが、むしろ"事件"として扱われるのかもしれない。

 対する中国は、控えメンバーも含めた23人全員が国内組だった。

 現在の中国リーグにひと昔前の栄華は見る影もなく、そこでプレーする選手ばかりを集めたチームが、いかに帰化選手を加えようと、日本に大きく劣るのは無理もなかっただろう。

 日本にとっては鬼門の最終予選初戦とあって、少なからず不安もあった試合も、終わってみれば7−0。最終予選という舞台には似つかわしくないスコアで、日本が大勝を収めた。


中国戦で2ゴールを決めた南野拓実 photo Ushijima Hisato

「試合前のミーティングから、彼ら(中国選手)はフィジカル的にも技術的にも優れている選手がいるので、それを非常に警戒していた。今日も狙いを持ったロングボールや、1対1の部分でのフィジカルの強さを発揮していたので、僕たちにとって厄介な相手だった」

 この試合で2ゴールを挙げた南野拓実は、そんな言葉で対戦相手へのリスペクトを示したが、外から試合を見ている限り、中国を厄介な相手とみなすことは難しかった。

 決してラフプレーを奨励するわけではないが、かつてのようにファール覚悟で体をぶつけ、日本の攻撃を寸断しようとする気概は感じられず、無抵抗で日本の猛攻を耐え忍ぶばかり。どうにかそれを食い止めたとしても、有効な反撃の手立ては持ち合わせていなかった。

 前半12分の先制ゴールに加え、同45+2分に2点目のゴールが決まった時点で、事実上勝負は決したと言っていいだろう。

 大差のついた試合にありがちな、ただ得点だけが次々に入る緩い内容に終始したわけではなく、中国にほとんど何もさせずに勝ちきった日本の戦いぶりは、評価に値するものでもあった。ひと言で言って、日本は強かった。

 ただし、この大勝を手放しに喜んでいていいのかという問題は、その一方で厳然と残る。

 ワールドカップ本大会へ向けた強化という意味では、残念ながら最終予選が有効な機会とはなり得ないことが、図らずも示されてしまったからだ。

 来年6月まで、貴重な国際Aマッチデーを費やして行なわれるにもかかわらず、である。

 だからこそ海外組には、それぞれが所属クラブで個の成長を果たし、ひいてはそれを日本代表の強化に還元してもらわなければならない。

 今後、UEFAのチャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグに出場する選手は、所属クラブの主力であればあるほど、過密日程のなかで多くの試合をこなすことが求められる。週2試合が続くのは当たり前の日程である。

 その間、7−0で勝ってしまうような試合のために10時間を超える長距離移動を強いることが、はたして本当に必要なことなのかどうかは、もっと考えられなければならない。

 日本代表に拘束力があろうと、選手それぞれの試合日程を考慮し、休ませる時は休ませ、所属クラブでの戦いに集中させる。そうした配慮こそが、むしろ日本代表の強化につながるのではないだろうか。

 いかに日本が優れた内容で相手を圧倒しても、その試合のためにケガをしたり、コンディションを崩したりして、所属クラブで長期離脱するようなことにでもなれば、こんなばかばかしい話はない。

 もちろん、これからの最終予選の試合が、すべて中国戦のようなスコアになるわけではないだろう。辛勝どころか、勝ち点を落とす試合があるかもしれない。

 しかし、だからといって、日本をねじ伏せるだけの力を持った相手との対戦が続くわけでもない。

 たとえば、アジア最終予選とCL。どちらの試合が選手個人の成長にとって有用であるかは、考えるまでもないだろう。

 2年後のワールドカップ本大会を見据え、最終予選をどう進めていくべきか。

 中国戦の大勝は、日本が強くなったがゆえの難問を突きつけている。