父“岸谷五朗”からの一言が泣ける。順風満帆とも思えた先には、1つだけ懸念点が|『光る君へ』第32回
道長のまひろに対する思いはと言うと、ますます大きくなっているように感じる。もはや気軽にまひろのもとを訪れるようになっていて大丈夫? となる。同じ目線で話をし、まひろ書いているそばでのんびりと物語を読む。
そして「俺が惚れた女はこういう女だったのか……」と考える。惚れ直している場合か……という気もするけど、この瞬間が幸せなんだろう。
相思相愛でも夫婦になれないふたりのこの距離感、まひろを見つめる道長の表情が良すぎて……むしろこの関係が正解だったのでは、と思わずにはいられない。
しかし、今回の最大の見せ場は内裏に出仕するまひろを為時たちが見送るシーンだろう。帝に認められ、中宮に仕えるまひろは我が家の誇り、と為時は言う。
そして、「お前が女子でよかった」と。小さいころから、「男子ならば」と言われ続け、まひろも「男子ならば」と苦しみ続けた。男子ならばできることがある、婿を見つけて…などと言われることもない、と。そんなまひろが、自分の努力と才で掴んだチャンスだ。道長が一条天皇に物語を渡したからでは? と言われるかもしれないが、まひろの才は公任の耳に届いていたし、まひろの力であることは間違いない。苦しみ、迷いながら、「自分が自分であるための道」を探し続けた結果だ。
とは言え、まひろが女房たちの中でうまくやっていけるとは思えないんだけれど、大丈夫だろうか、そのあたり。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ