ヨーロッパチャンピオンズリーグが大変革 組み合わせ決定で日本人選手13人にチャンス
大規模な変革を図ったチャンピオンズリーグ(CL)。そのリーグフェーズの抽選会が8月29日、モナコで行なわれた。
本大会出場チームは32チームから36チームへと増大。グループステージからリーグフェーズに名称を変えた前半のリーグ戦も、6試合から8試合に増加した。リーグフェーズから決勝トーナメント1回戦までの間にホーム&アウェーによるプレーオフも設けられたので、決勝戦までの道のりは全13試合だった従来から、最大17試合に増えたことになる。
このため12月中旬から2月中旬まで、およそ2カ月設けられていた中断期間はなくなった。シーズンを通した欧州リーグ的な色彩が強まったと言える。世界のサッカー界はいっそうCL中心で回ることになるだろう。
リーグフェーズについてつけ加えれば、試合数が増えただけではない。4チームずつ8つのグループに分かれて戦ったこれまでとは異なり、36チームがスイス方式と呼ばれるひとつのリーグで戦う形に変化した。
従来のように同じチームとホーム&アウェーで戦うことはなくなった。各チームが戦う8試合の相手は毎試合、異なる。バラエティに富むことになった。コンピューターが選んだ結果だが、ホームかアウェーかという戦う場所の選択も同様にコンピューターに委ねられている。強豪とホームで戦うか、アウェーで戦うか。ここは大きな問題になる。
対戦する8チームは、UEFAランキング順に振り分けられたポット1からポット4のカテゴリーのなかから、各2チームずつ選ばれる。これまでのグループステージでは、ポット1同士(最もレベルが高い)の対戦はなかったので、早い段階から好カードが楽しめる仕組みに変化した。
36チームが一堂に収まる大きな順位争いのなかで、決勝トーナメントにストレートインするのは1位から8位の8チーム。9位から24位までの16チームはプレーオフに回る仕組みだ。
リーグフェーズの各チームの対戦相手は以下のとおり(それぞれ1、3、5、7番目の対戦がホーム戦、2,4,6,8番目の対戦がアウェー戦となる)。
【早い段階からビッグクラブの対決が】【ポット1】
●レアル・マドリード
ドルトムント、リバプール、ミラン、アタランタ、ザルツブルク、リール、シュツットガルト、ブレスト
●マンチェスター・シティ
インテル、パリ・サンジェルマン(PSG)、クラブ・ブルージュ、ユベントス、フェイエノールト、スポルティング、スパルタ・プラハ、スロバン・ブラチスラバ
●バイエルン
PSG、バルセロナ、ベンフィカ、シャフタール、ディナモ・ザグレブ、フェイエノールト、スロバン・ブラチスラバ、アストン・ビラ
●PSG
マンチェスター・シティ、バイエルン、アトレティコ・マドリード、アーセナル、PSV、ザルツブルク、ジローナ、シュツットガルト
●リバプール
レアル・マドリード、ライプツィヒ、レバークーゼン、ミラン、リール、PSV、ボローニャ、ジローナ
●インテル
ライプツィヒ、マンチェスター・シティ、アーセナル、レバークーゼン、ツルベナ・ズベズダ、ヤングボーイズ、モナコ、スパルタ・プラハ
●ドルトムント
バルセロナ、レアル・マドリード、シャフタール、クラブ・ブルージュ、セルティック、ディナモ・ザグレブ、シュトゥルム・グラーツ、ボローニャ
●ライプツィヒ
リバプール、インテル、ユベントス、アトレティコ・マドリード、スポルティング、セルティック、アストン・ビラ、シュトゥルム・グラーツ
●バルセロナ
バイエルン、ドルトムント、アタランタ、ベンフィカ、ヤングボーイズ、ツルベナ・ズベズダ、ブレスト、モナコ
【ポット2】
●レバークーゼン
インテル、リバプール、ミラン、アトレティコ・マドリード、ザルツブルク、フェイエノールト、スパルタ・プラハ、ブレスト
●アトレティコ・マドリード
ライプツィヒ、PSG、レバークーゼン、ベンフィカ、リール、ザルツブルク、スロバン・ブラチスラバ、スパルタ・プラハ
●アタランタ
レアル・マドリード、バルセロナ、アーセナル、シャフタール、セルティック、ヤングボーイズ、シュトゥルム・グラーツ、シュツットガルト
●ユベントス
マンチェスター・シティ、ライプツィヒ、ベンフィカ、クラブ・ブルージュ、PSV、リール、シュツットガルト、アストン・ビラ
●ベンフィカ
バルセロナ、バイエルン、アトレティコ・マドリード、ユベントス、フェイエノールト、ツルベナ・ズベズダ、ボローニャ、モナコ
●アーセナル
PSG、インテル、シャフタール、アタランタ、ディナモ・ザグレブ、スポルティング、モナコ、ジローナ
●クラブ・ブルージュ
ドルトムント、マンチェスター・シティ、ユベントス、ミラン、スポルティング、セルティック、アストン・ビラ、シュトゥルム・グラーツ
●シャフタール
バイエルン、ドルトムント、アタランタ、アーセナル、ヤングボーイズ、PSV、ブレスト、ボローニャ
●ミラン
リバプール、レアル・マドリード、クラブ・ブルージュ、レバークーゼン、ツルベナ・ズベズダ、ディナモ・ザグレブ、ジローナ、スロバン・ブラチスラバ
【ポット3】
●フェイエノールト
バイエルン、マンチェスター・シティ、レバークーゼン、ベンフィカ、ザルツブルク、リール、スパルタ・プラハ、ジローナ
●スポルティング
マンチェスター・シティ、ライプツィヒ、アーセナル、クラブ・ブルージュ、リール、PSV、ボローニャ、シュトゥルム・グラーツ
マンチェスター・シティやアーセナルと対戦するスポルティングの守田英正 photo by Reuters/AFLO
●PSV
リバプール、PSG、シャフタール、ユベントス、スポルティング、ツルベナ・ズベズダ、ジローナ、ブレスト
●ディナモ・ザグレブ
ドルトムント、バイエルン、ミラン、アーセナル、セルティック、ザルツブルク、モナコ、スロバン・ブラチスラバ
●ザルツブルク
PSG、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリード、レバークーゼン、ディナモ・ザグレブ、フェイエノールト、ブレスト、スパルタ・プラハ
●リール
レアル・マドリード、リバプール、ユベントス、アトレティコ・マドリード、フェイエノールト、スポルティング、シュトゥルム・グラーツ、ボローニャ
●ツルベナ・ズベズダ
バルセロナ、インテル、ベンフィカ、ミラン、PSV、ヤングボーイズ、シュツットガルト、モナコ
●ヤングボーイズ
インテル、バルセロナ、アタランタ、シャフタール、ツルベナ・ズベズダ、セルティック、アストン・ビラ、シュツットガルト
●セルティック
ライプツィヒ、ドルトムント、クラブ・ブルージュ、アタランタ、ヤングボーイズ、ディナモ・ザグレブ、スロバン・ブラチスラバ、アストン・ビラ
【ポット4】
●スロバン・ブラチスラバ
マンチェスター・シティ、バイエルン、ミラン、アトレティコ・マドリード、ディナモ・ザグレブ、セルティック、シュツットガルト、ジローナ
●モナコ
バルセロナ、インテル、ベンフィカ、アーセナル、ツルベナ・ズベズダ、ディナモ・ザグレブ、アストン・ビラ、ボローニャ
●スパルタ・プラハ
インテル、マンチェスター・シティ、アトレティコ・マドリード、レバークーゼン、ザルツブルク、フェイエノールト、ブレスト、シュツットガルト
●アストン・ビラ
バイエルン、ライプツィヒ、ユベントス、クラブ・ブルージュ、セルティック、ヤングボーイズ、ボローニャ、モナコ
●ボローニャ
ドルトムント、リバプール、シャフタール、ベンフィカ、リール、スポルティング、モナコ、アストン・ビラ
●ジローナ
リバプール、PSG、アーセナル、ミラン、フェイエノールト、PSV、スロバン・ブラチスラバ、シュトゥルム・グラーツ
●シュツットガルト
PSG、レアル・マドリード、アタランタ、ユベントス、ヤングボーイズ、ツルベナ・ズベズダ、スパルタ・プラハ、スロバン・ブラチスラバ
●シュトゥルム・グラーツ
ライプツィヒ、ドルトムント、クラブ・ブルージュ、アタランタ、スポルティング、リール、ジローナ、ブレスト
●ブレスト
レアル・マドリード、バルセロナ、レバークーゼン、シャフタール、PSV、ザルツブルク、シュトゥルム・グラーツ、スパルタ・プラハ
コンピューターが組んだリーグフェーズの段階で観戦できる好カード3つ挙げるとすれば、リバプール対レアル・マドリード、マンチェスター・シティ対インテル、バルセロナ対バイエルンとなるだろう。いずれもホームチームは左側で、同じ対戦が裏返しで行なわれることはない。リバプール、マンチェスター・シティ、バルセロナにとってはラッキーな結果と言える。
1992−93シーズンにスタートした当初、CLは8チームで本大会を行なっている。そこから16チーム(1994−95から)、24チーム(1997−98から)、32チーム(1999−2000から)と肥大化していったわけだが、それは一部のビッグクラブがUEFAに圧力を掛けた結果だった。独自で組織を作り、ユーロリーグなる構想をブチあげたことでUEFAが慌て、ビッグクラブ側の要望に即したレギュレーションに変更をしてきた経緯がある。今回も同様で、2、3年前にビッグクラブの間で同様な構想が持ち上がっていた。
ビッグクラブ同士がグループリーグから相まみえることになる一方で、リーグフェーズの24位にまで決勝トーナメント進出のチャンスがあることは、ビッグクラブにとっては保険であるとも言える。番狂わせを食らったとしても、決勝トーナメントに進める可能性は残される。
一方で、このルール変更は、ポット3、ポット4に属する格下チームにとっても歓迎すべきものになっている。試合数、特にビッグクラブとのホーム戦が増す可能性が上がるので、収益増が見込めるからだ。ファンにとってはいい思い出になる。選手にとっても、自らを売り出す機会が2試合増えたわけだ。
たとえば今年、浦和レッズから、ディナモ・ザグレブに期限付きで移籍した荻原拓也にとっては、大チャンスと言うべきだろう。ドルトムント、バイエルン、ミラン、アーセナル、セルティック、ザルツブルク、モナコ、スロバン・ブラチスラバと戦うことができるわけだ。Jリーグとはまさに別世界。世界の超一流の舞台に突如、躍り出ることになった。2階級特進。夢のある話とはこのことである。
その荻原を含め、新しくなった今季のCLに、日本人選手は現状、13人出場する可能性がある。伊藤洋輝(バイエルン)、遠藤航(リバプール)、冨安健洋(アーセナル)、守田英正(スポルティング)、上田綺世(フェイエノールト)、川村拓夢(ザルツブルク)、南野拓実(モナコ)、古橋亨梧、旗手怜央、前田大然、岩田智輝(セルティック)、チェイス・アンリ(シュツットガルト)である。ケガをしている選手もいるので、実際にピッチにどれほど立てるかは定かではないが、これは昨季の8人を上回る数字だ。
本大会出場チームが32から36に増えたことを踏まえれば、微増と捉えるべきである。ケガ人に加え、右肩上がりの状態にある選手もけっして多くない。安心して見ていられるのは旗手、南野、守田、前田の4人ぐらいだろうか。
より華々しくなったCLの舞台でどれほど活躍できるか。W杯アジア最終予選を戦う日本代表の戦い同様、厳しい目を傾けていきたい。