9月5日から始まるワールドカップアジア最終予選へ向けて、日本代表メンバーが発表された。

 従来からの主力メンバーが中心ではありつつも、伊東純也の復帰あり、パリ五輪組から細谷真大と高井幸大の昇格あり、望月ヘンリー海輝のサプライズ招集ありと、話題の多い構成である。

 なかでも個人的に注目したのは、谷晃生、大迫敬介、鈴木彩艶と、東京五輪世代以降の若い選手だけで固められたGKの顔ぶれだ。


今季からイタリアのパルマでプレーしている鈴木彩艶 photo by Getty Images

 日本代表の正GKは、日本がワールドカップに初出場した1998年フランス大会以降、長らく川口能活と楢崎正剛が競う"2強時代"が続いた。

 そして、2010年南アフリカ大会で本番直前に川島永嗣が先発メンバーに抜擢されると、そこから川島の"1強時代"がスタート。2018年ロシア大会まで、揺るぎない地位を築くに至った。

 およそ20年もの間、日本代表の正GKは事実上、3人の絶対的な存在によってまかなわれてきたと言っていい。

 だが、その後の時代を支える存在、すなわち、"ポスト川島"はなかなか定まらなかった。

 2022年カタール大会では、最終予選も含めて権田修一がゴールを守ったものの、所属するポルティモネンセでほとんど試合に出られない状態が長く続くなど、正GKを託すには心もとない面があったのは確か。控えのシュミット・ダニエルを推す声が少なくなかったのも、仕方のない流れではあった。

 しかし、そんな不安定な状態も、いよいよ終わりを迎えるのではないか。

 そんな期待が高まるのは、優れたGKが、しかもひとりではなく、まとまって現われてきたからだ。

 今回選ばれた谷、大迫、鈴木は、U−17やU−20の年代別日本代表で豊富な実績を残していることからもわかるように、若くして才能を開花させた有望株が、その後も順調に成長してきた選手たちである。

 3人が揃って登録メンバー入りした東京五輪では、谷が正GKを務めたが、それから3年の歳月を経て、それぞれが成長。今度は舞台をA代表に変え、ポジション争いを繰り広げることになったのだ。

 現時点で正GKの座に一番近いのは、鈴木だろう。

 森保一監督は、パリ五輪の出場資格を持つ鈴木を昨秋からA代表に専念させ、今年1月のアジアカップでも正GKの重責を託している。

 昨夏、アカデミーから長く過ごした浦和レッズを離れ、シント・トロイデンに移籍した鈴木だが、わずか1シーズンでセリエAのパルマへと大きくステップアップ。アジアカップでは戦犯とでも言うべき評価も受けた鈴木だったが、ヨーロッパでの評価は、日本で考えられている以上に高かったということだろう。

 一方で、谷や大迫も、着実に成長を続けている。

 谷は町田ゼルビアで、大迫はサンフレッチェ広島で、それぞれ守護神としてクラブの優勝争いを繰り広げているのが、何よりの証拠だ。

 これだけ戦力が充実していれば、パリ五輪で出色の働きを見せた小久保玲央ブライアンでさえも、そう易々とメンバー入りできないのも無理はないだろう。

 フィールドプレーヤーと比べれば選手寿命が長く、経験が必要なポジションにあっては、3人とも年齢的に若く、今後の成長もまだまだ期待できる。

 それでいて、GKというポジションはたったひとつ。対戦相手によって選手を入れ替えたり、試合途中の選手交代で流れを変えたりするポジションではないだけに、選手個々がレベルアップすればするほど、その争いはひと際シビアなものとなる。

 川口と楢崎がしのぎを削った時代よりも、質においても、数においてもハイレベルな"3強時代"がやって来るのかもしれない。

 いや、よりレベルの高い争いが繰り広げられるのは間違いないとしても、その後ろには小久保も控えているのである。4強、あるいは5強の時代が来ても、もはや不思議ではない。

 まもなく始まる最終予選が、そんな時代の幕開けとなるのかもしれない。