中国戦(9月5日、ホーム)、バーレーン戦(現地時間9月10日、アウェー)を戦う日本代表メンバー27人が、以下のように発表された。

GK
大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(FC町田ゼルビア)、鈴木彩艶(パルマ)

DF
長友佑都(FC東京)、谷口彰悟(シント・トロイデン)、板倉滉(ボルシアMG)、中山雄太(FC町田ゼルビア)、町田浩樹(ユニオン・サン・ジロワーズ)、菅原由勢(サウサンプトン)、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)、高井幸大(川崎フロンターレ)

MF/FW
遠藤航(リバプール)、伊東純也(スタッド・ランス)、浅野拓磨(マジョルカ)、南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング)、鎌田大地(クリスタルパレス)、三笘薫(ブライトン)、小川航基(NEC)、前田大然(セルティック)、旗手怜央(セルティック)、堂安律(フライブルク)、上田綺世(フェイエノールト)、田中碧(デュッセルドルフ)、中村敬斗(スタッド・ランス)、久保建英(レアル・ソシエダ)、細谷真大(柏レイソル)

 新たに加わった選手は望月と高井のふたり。復帰組は鈴木、中山、伊東、浅野、三笘、細谷の6人。また、6月の2次予選に招集された選手で外れたのは以下の7人となる。前川黛也(ヴィッセル神戸)、冨安健洋(アーセナル)、伊藤洋輝(バイエルン)、橋岡大樹(ルートン・タウン)、相馬勇紀(FC町田ゼルビア)、川村拓夢(ザルツブルク)、鈴木唯人(ブレンビー)。


パリ五輪代表から日本代表に初招集となった高井幸大 photo by JMPA

 そしてパリオリンピック組から昇格した選手はふたり(細谷、高井)に終わった。細谷は1月のアジアカップでメンバー入りしていたので今回、純粋に昇格したのは高井ひとりということになる。森保一監督の判断なのだろうが、サッカー協会の姿勢はこれでいいのか。招集した選手27人に対してひとり。オリンピックは何だったのかと言いたくなる。

 もちろんサッカー競技で重要なのは断然、W杯だ。五輪ではない。だが、日本はその五輪に協会の方針として、どの国よりも力を注いできた経緯がある。五輪となると1968年メキシコ五輪の銅メダルという栄光が取り沙汰され、協会や古参の一部メディアはその呪縛に取り憑かれた状態にあった。五輪を過大評価しすぎ。世界基準から外れていると、そのたびに筆者は苦言を呈してきたが、協会やメディアは「五輪経由W杯行き」というキャッチフレーズをしきりに謳い、ファンの関心を集めようとした。

【テストするにはチャンスだったが...】

 だが「パリ経由北中米W杯行き」のフレーズを、いま積極的に使いたがる人はいない。昇格組はただひとり。A代表で使えそうな選手、言い換えれば森保監督のお眼鏡に叶った選手はひとりしかいないとなると、言いたくても言えないのだ。

 代表メンバー発表会見で、森保監督は、「新監督のサッカーが戦術的にしっかりしている」などと、中国の脅威を力説した。森保監督の傍らに座る山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)は大仰にも「歴史的な戦いになるかもしれない」と、ことの重大さをアピールした。さらに記者からは、最終予選では前回、前々回とスタートで躓いていることを指摘する質問も飛んだ。

 3グループに分かれて争われるこの最終予選で、日本が所属するグループCは、他の2組よりは競った戦いが予想される。「死の組」と言い出す人さえいる。この予選でアジアの9番目になってもまだ大陸間プレーオフというチャンスが残されている大甘な設定にもかかわらず、である。

「楽な戦いだ」と言ってしまえば、観客動員や視聴率に影響が出るだろう。サッカー産業にも影響が出る。だからか、協会はメディアと一緒になって危機感を煽ろうとする。絶対に負けられない戦い。会見場が、オリンピック組を多数昇格させている余裕はないと言わんばかりの、大真面目なムードに包まれるのも、当然といえば当然かもしれない。

 だが、筆者にはそれが余裕のなさに見える。相手は中国とバーレーン。スタメンを欧州のトップリーグでプレーする選手だけで組めそうな日本が警戒しすぎるのは、本来、かっこ悪い相手である。むしろテストするにはチャンスなのだ。

 U−23日本代表とA代表の関係を健全かつ潤滑にするためには、多少無理をしても、ある程度の人数を入れ替えるべきなのである。招集した人数は27人。ベンチ入りのメンバーは23人。試合に出場する選手は最大16人だ。4人ぐらい入れ替えても戦力は低下しない。

 新たな選手を起用しながら目の前の相手に勝利する。畑を耕しながら予選を勝ち抜くことが、マックス値のアップには欠かせない強化方法になる。森保監督はまもなく38歳になる長友佑都を今回も選んでいるが、少なくともその枠はオリンピック組に回すべきなのだ。

 日本代表に選出されることは、選手として箔がつくことを意味する。欧州のクラブが選手を獲得する際には、そのステイタスも重要視される。その分、移籍金は上がるが、日本サッカー協会のお墨付きがある選手のほうが、スカウトはクラブの関係者を説得しやすくなる。

 欧州組を増やすためにも、欧州組をより上位のクラブでプレーさせるためにも、代表キャップは可能な限り多くの選手に与えるべきなのだ。そうなれば代表チームの層はおのずと厚くなる。競争は激しさを増す。それこそがいちばんの強化策なのである。

 森保監督はW杯ベスト8以上を目標に掲げる。その可能性を、筆者は現状では20%だと見るが、アジア予選で縮こまった手堅い戦いをすればするほど、その可能性は減る。藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともにシント・トロイデン)、斉藤光毅(QPR)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)、関根大輝(柏レイソル)あたりは、この際、多少無理してでも代表キャップを与えるべきではなかったか。強化のあり方、総合的なバランス論として、これでいいのか。山本ND、影山雅永技術委員長に尋ねたくなる。

 現在の日本にはそれくらいの余裕は絶対にあるはずだと、筆者は思う。その余裕こそがW杯における好成績の源になるのだ。メンバーを固め、一戦必勝とばかり、石橋を叩くように手堅く戦えば戦うほど、尻すぼみになる。本番までまだ2年弱もあることを忘れてはならない。W杯とW杯の中間年に行なわれるオリンピックを終えたいま、4年間の使い方に誤りありと、あらためて言いたくなる。