ブンデスリーガデビューのチェイス・アンリ、開幕戦ゴールの堂安律 ドイツで躍動する日本人選手の現地詳報
ドイツ・ブンデスリーガの開幕節で活躍を見せた日本人選手は誰か。ここでは20歳でデビューを果たしたチェイス・アンリや開幕戦ゴールを決めた堂安律の様子、次節の注目カードなどを、現地で取材を重ねるライターの林遼平氏に教えてもらった。
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ブンデスリーガ開幕戦でゴールを決めた堂安律 photo by Getty Images
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チェイス・アンリ(シュツットガルト/DF)
フライブルク対シュツットガルト(3対1)の試合では、チェイス・アンリ選手が意外な形でデビューをしました。個人的には開幕節前には、ベンチ入りすら厳しいんじゃないかといった話をさせてもらっていたので、すごく申し訳なかったです。
チームはDFラインにケガ人が出ていて、その流れでチェイス選手がベンチ入りする形になりましたが、そこでピッチに出してもらえるというのは、やはり信頼されている証拠だなと感じます。
66分からの短い出場時間だったにも関わらず、『キッカー』の採点を見てもチーム全体で最高評価タイの「3.5」。途中出場のなかでは一番高い評価をもらっていたことからもわかるように、それだけパフォーマンスがよかったですし、ドイツ国内でも評価が高まった感じがします。堂々としている感じ、ヨーロッパのサッカーに慣れている雰囲気がありました。
FWの選手ならば得点を狙おうと気合いを入れることがよくあるように感じますが、センターバックの選手で考えれば、ミスが失点に直結するポジションなので緊張感ある試合になりがちだと思います。ただ、チェイス選手はそんなことなく、本当に堂々とやっていました。
終盤にこぼれ球をミドルシュートで狙ってポスト直撃の場面がありましたけど、あのシーンもミスしないように周りにパスしたり、クロスを狙ったりしそうなところでしたが、シュートを狙いました。
サイドバックのマクシミリアン・ミッテルシュテット選手は、試合後にこんな話をしています。
「アンリはハードワークするし、絶対的なプロフェッショナルだ。トレーニング前後にウエイトルームで彼を見るだけでいい。彼はメンタルが強く、ここ数ヶ月で大きく飛躍した。彼は今日セントラルディフェンダーのオプションになれることを示した」
これを聞いてもかなり評価が上がったんじゃないかなと。メンバーのやりくりが苦しい状況のなかで、こういうオプションが出てきたのはチームとしてはすごくプラスになると思いますし、ここからのプレーが楽しみですね。
【2年ぶりの開幕弾。泥臭いゴールで勝利に貢献】堂安律(フライブルク/MF)
まずフライブルクが、昨季2位のシュツットガルトを相手にここまでいいサッカーをして勝てたことは本当にポジティブに捉えていいと思います。チーム全体で攻撃的に行こうという感じがすごくあって、右サイドバックのルーカス・キュブラー選手を見ても、かなり高い位置までポジションを上げてボールを受けてゴールを決めるみたいな場面がありました。それぐらい前線に人をかけて点を取りに行こうとするスタイルが見えたので、今年はかなり楽しみなんじゃないかと感じています。
堂安選手もすばらしくて、ゴールシーンは少しボールに乗っかっちゃうみたいな形でしたけど、開幕戦でゴールを取るというのは本人にとっても相当な勢いになると思います。ゴール場面を見ても、ボールに乗っかったあとに打ったシュートがGKに1回止められていて、その後のボールが弾みながら目の前に落ちてくる状況でした。そこを冷静にちゃんと押し込めるから得点が入っているわけです。焦ってもおかしくない場面でしたし、またGKに当ててしまったりするようなケースもあるところでしっかり押し込めるのは、本人のコンディションもいいんでしょうし、ここからやっていくぞみたいな気持ちも含めてゴールにつながったんじゃないかなと思います。
あの得点を見て、堂安選手は今年何点取るのかが楽しみになりました。次節はバイエルン戦です。フライブルクにとっても堂安選手にとっても試金石の一戦になるでしょう。バイエルン相手にどれだけできるかに注目したいです。
【優勝候補バイエルンは苦しみながらも勝利をもぎ取る】今年、ヴァンサン・コンパニ監督になって、バイエルンがどういうサッカーをするかが注目されたなかで、前半からすごくボールを動かして攻めていきました。先制するところまではすごくよかったと感じています。ただ、後半急に隙を突かれたように失点して、その後もうしろでのビルドアップのところでキム・ミンジェのミスから失点して逆転され、前半とは全く違うゲーム展開になりました。
それでもベテランの力というのは大事だなと思わせてくれたのが、トーマス・ミュラーです。途中で出てきた直後のセットプレーでハリー・ケインからの落としを決めて同点弾を奪うんですけど(記録はオウンゴール)、追いついた瞬間、喜んだあとすぐに切り替えて監督から渡されたメモ用紙をチームメイトと確認していました。
そういうシーンを見てもチームを一旦落ち着かせることができていましたし、それが結果的にケインのポストプレーからセルジュ・ニャブリが決めた決勝ゴールにつながりました(3対2で勝利)。バイエルンとしては苦しんだと思いますけど、こういう試合を勝ちきる強さを感じましたし、今後に向けてはジャマル・ムシアラがゴールを奪えたり(先制点)、ケインが活躍したりと、波に乗れる試合になったと思います。
あとはここに早く伊藤洋輝選手が戻ってきてほしい。キム・ミンジェのミスもありましたけど、守備の選手が少し手薄なところが気掛かりだと思います。ドイツ国内でもキム・ミンジェに対する批判が出ていましたけど、ダヨ・ウパメカノとどれだけやれるかみたいなところでは難しさがあると思いますし、伊藤選手に早く戻ってきてほしいというのはチームとしてもあるように感じます。
【次節の注目カードはシュツットガルトvsマインツ】次節は、やはりチェイス・アンリ選手と佐野海舟選手の日本人対決が実現するかが、ひとつの注目点です。昨年はシュツットガルトがシーズンダブルしているようなカードですし、昨年の成績を考えればシュツットガルトを相手に佐野選手を擁するマインツがどこまでやれるかという試合になると思います。
佐野選手は変わらずスタメンで起用されると思いますが、気になるのはチェイス選手が出場するかどうかですね。8月27日にシュツットガルトはDFBポカール(国内カップ戦)の試合がありましたが、そこに向けたコメントのなかでシュツットガルトのセバスティアン・ヘーネス監督はこう言っています。
「アンリをプレーさせます。彼のヘディングの強さが必要になるでしょう。多くの長いボールが来るはずで、そこが彼の強みであり、クオリティのあるところだ。彼の周りにいい骨組みが必要で、彼が楽にプレーできるようにしなければならない」
この話を聞いてもわかるとおり、先発で起用されるだろうなと思っていましたが、結果、先発フル出場で5対0の勝利に貢献しました。この試合でアンリ選手がどういうプレーを見せるかで週末の出場機会に関わってくるのかなと思っていたので、マインツ戦でもスタートから出られる可能性もあるでしょう。
もう一つ監督はこんなコメントもしていました。
「プレーではとくに初めのうちはゲームの速さに慣れるのに苦労していたが、今ではサッカーの面でも十分なレベルに達している。彼の核になる能力は守備にあり、ヘディングと対人プレーが強みだ」
十分なレベルに達しているということは、あとは実戦でどれだけのパフォーマンスを出せるかみたいなところになると思います。
佐野選手のところでも書きましたが、彼は前にどんどん出ていってプレーしようと思っているところなので、ふたりがマッチアップする場面はありそうだなと。そういう意味でも本当に注目の試合になります。どちらもブンデスリーガデビューを飾ったばかりなので、2試合目同士でどんな対戦になるか楽しみですね。
チェイス選手としては、今年のシュツットガルトがカップ戦を含め試合数が相当多い点を考えると、ケガ人が戻ってくるまでに自分の評価を高めることができれば、本当に出場機会が増えると思います。その点でも彼のプレーからは目が離せないです。