新シーズンの開幕を迎えたドイツ・ブンデスリーガ。今季も多くの日本人選手がプレーするなか、開幕戦で彼らはどんなパフォーマンスを見せたのか。ドイツで取材を重ねるライターの林遼平氏に、現地の様子を伝えてもらった。


町野修斗はブンデスリーガ開幕戦でゴールを決めた photo by Getty Images

【動画】フルバージョン/林遼平のブンデスリーガ開幕節現場レポート↓↓↓

【PK献上も攻守に存在感を披露】

板倉滉(ボルシアMG/DF)

『キッカー』(ドイツのスポーツメディア)の試合採点で「1.5」という高い評価(数字が低いほうが高評価)を得た試合でした。2対3でレバークーゼンが勝利しましたが、展開が目まぐるしく変わり、かなり見ごたえのある試合だったと思います。ボルシアMGにとってはチャンスが多かったので、もったいない試合になってしまいました。

 ボルシアMGは後方からビルドアップしてボールを繋いで2点目を取るなどいいシーンがありましたが、同点になってからのレバークーゼンの攻撃への圧がすごかったですね。ボルシアMGが必死にクリアするしかない状況になったところで、最終的にPKを献上。レバークーゼンにはそのような展開に持っていく、勝者のメンタリティ的なものを感じました。

 ただ、最後板倉選手のファールでPKになってしまいましたが、ドイツ国内でも「VARの判定はどうだったの?」といったことも言われています。角度によってはボールに触っているように見えますし、触れていないようにも見える。すごく難しい判定でした。板倉選手に試合後、どうだったか聞いたところ「個人的にはボールに先に触った感覚がある」と話していました。記者陣に対して「ちょっと映像を見せてもらえませんか」みたいなやり取りもあって、一緒に映像チェックをしたほどです。

 板倉選手は『キッカー』採点でチーム4番目の「3.0」でした。PK献上があったにも関わらずこの採点なので、ほかの部分でいいパフォーマンスを見せていたことがわかります。レバークーゼンのヴィクター・ボニフェイスという屈強なFWを相手にかなりいい対応を見せていて、守備面での貢献度は高かったと思います。

 またチームに関しても「昨季とは違った試合の運び方ができたと思いますし、新しい選手たちが入ってきて、結構ボールを引き出してくれることが増えた。昨季と違って、自分たちがボールを保持しながら前進していくことができた」とも話していました。負けはしたものの、決して悪くなかったという印象を持っているように感じます。

【初のブンデスリーガはほろ苦デビューに】

佐野海舟(マインツ/MF)

『キッカー』の採点は「3.5」となっていますが、個人的に見ても「ほろ苦デビュー」という言葉が合うような試合展開だったと思います。

 佐野選手はダブルボランチの片方に入ってプレーしていましたけど、本人も試合後「チームの力になれなかったので、ただただ悔しい」と。彼はボール奪取が得意な選手で、そこから前につなげていくプレーがうまい印象ですが、そこに関しても「今日はセカンドボールを全然拾えなかったし、自分の持ち味だったり求められているそこの部分が単純に出せなかった。攻撃の部分でももっとうまく関わることができたのかなと思います」と話していて、本人的にも自分の長所を出せなかったと感じているみたいです。

 失点場面も(相手に)食いつきすぎてしまったと。ただ、ああいうところでミドルを一発で決めてくるのは、やはりJリーグでも感じない感覚だとも話していて、それがヨーロッパに来て初めてのリーグ戦で経験できたことで今後より警戒心を強めるでしょう。そういう意味では失点に絡んでしまいましたが、今後に向けて勉強になるプレーだったと思います。

 やはりヨーロッパには強烈なミドルシュートを決めてくる選手が多いので、いかに前を向かせないかみたいなところは大事になってきます。今後はああいったターンをしてくるだろうといったことが頭にあるでしょうし、そういうプレーをひとつ経験したのをいい方向に捉えたほうがいいと思います。

 攻撃面に関しては、もうひとりのボランチであるナディーム・アミリが中心となってボールを動かしていくところがあるので、佐野選手はもう一個前まで入っていこうとする動きが見られました。前半にもFWがボールを受けたところで、その背後に入ってクロスからCKを取るシーンがありましたけど、そういう場面をもっと増やしていきたいとも言っていました。

 今季の目標については「自分のなかでは今まであまり前に行くようなタイプではなかったし、求められてるところは守備のところだったけど、このチームでは前に出ていくことが求められてる。そうなるとやはりゴールが必要になってくると思うし、アシストを含めて取れるだけ取らないといけない」と話をしています。その点でもボールを奪うところだけでなく、攻撃で結果を残すことが求められていくんだろうなと感じています。

【公式戦2試合連続ゴール。今後の日本代表選出に期待】

町野修斗(キール/FW)

 開幕戦のホッフェンハイム戦では、先週のカップ戦に続き再びトップ下の形で出場していましたけど、かなり広範囲に動いてボールを引き出したり、FWとしてゴールを狙いに行ったりと、かなり印象的なプレーを見せていたと思います。『キッカー』の採点もチーム1位タイの「2.5」。試合には負けてしまいましたが、そのなかでも結果を残して自分の力を見せたところでは、すばらしいパフォーマンスだったなと感じます。

 得点場面についても、後半の序盤に似たような感じでシュートを打つ場面がありました。その時は少し時間がなくて慌てるような感じでシュートを打ったのが左に外れてしまったんですが、ゴールした場面は余裕もあってファーストタッチがよかった。そこから前に持ち出して、冷静にゴール左へ決めきったのは、本当に技術力も高くすばらしいゴールだったと感じます。

 後半の途中にあったビッグチャンスは相手GKのスーパーセーブで止められてしまいましたけど、そういうところも含めて、トップ下だけど前線でゴールに絡むこともしていて、チーム内でも評価が上がっているでしょうし、監督からの信頼もすごく感じます。

 試合を見ても決してトップ下の仕事をしているだけではなく、前線からのプレスの際には一番前から追いかけたり、前線でポストプレーもしている。逆に言えば相当疲労面が心配なんですが(笑)、攻守にハードワークしていて、そのへんも含めて町野選手のよさが出ていると思います。

 個人的にはブンデスリーガで得点を取れる選手になれれば、日本代表に入っていけると思うんです。今、5大リーグでゴールを量産している日本人選手がいるかと聞かれれば、あまりいない。だからこそ、ここで結果を残せる選手はもちろん代表に入っていくべきだと思います。

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