パリ五輪の男子ゴルフ(8月1日〜4日/フランス)で日本男子ゴルフ界初のメダルとなる銅メダルを獲得した松山英樹は、その直後に出場した大会となるフェデックスセントジュード選手権(8月15日〜18日/アメリカ・テネシー州)で見事な優勝を飾った。

 これで、松山はPGAツアー通算10勝。そのなかには、メジャー大会のマスターズ優勝(2021年)も入っており、日本人選手として唯一無二の成績を挙げていることになる。


パリ五輪で銅メダルを手にして最高の笑顔を見せる松山英樹 photo by Getty Images

 パリ五輪のゴルフに関して言えば、男子の監督となっていた丸山茂樹の存在も大きかった。松山自身、「丸山さんは、リオ(2016年リオデジャネイロ五輪)から(五輪男子ゴルフの)監督をやられていて、前回(2021年の東京五輪)もメダルを獲れなかったし、今回メダルを獲れてうれしいです。ほんとにお世話になりました」と、丸山の存在に感謝していた。それは、丸山が常日頃から何かにつけて松山のことを気にとめて、親身になっていたことも含んでいると思う。

 そうして、松山は歓喜の輪のなかで喜びを爆発させた。銅メダルを獲得したことに「なんで、これほどうれしいのかわからん」と言うほど。そんな、普段は見せない破顔の笑顔も、メダルを胸にしたときが格別だった。

 その余韻も冷めやらぬなか、松山が次に出場したのがフェデックスセントジュード選手権だった。この大会は2024シーズンのプレーオフシリーズで、計3試合で年間王者を決定する第1戦目。したがって、優勝賞金も360万ドル(約5億2000万円)と超破格である。

 その大会に、松山は優勝したのである。残念ながら、プレーオフシリーズの第2戦目となるBMW選手権(8月22日〜25日/アメリカ・コロラド州)では、初日に首位と1打差の2位で終えたにもかかわらず、2日目に腰痛で棄権することになってしまった。

 それでも、第3戦目となる最終戦の、ツアー選手権(8月29日〜9月1日/アメリカ・ジョージア州)の出場権があり、総合優勝して年間王者になれば、ボーナス賞金2500万ドル(約36億円)をゲットすることができるのだ。

 松山が2021年のマスターズで優勝したときも感じたけれど、今回のパリ五輪の銅メダル、さらにPGAツアー通算10勝の快挙に関しても、(世の中は)もっともっと高く評価して、リスペクトすべきだと思う。

 日本人選手が海外の試合に初めて挑戦したのは、1929年のハワイアン・オープン(現ソニーオープンinハワイ)だった。宮本留吉と安田幸吉のふたりである。当時は遠征費用もままならず、プロの所属先でのカンパや、米上院議員の援助で実現したという。

 以来、100年近い年月での挑戦の歴史において、PGAツアーの優勝は、青木功、丸山、今田竜二、松山、小平智の5人。うち、複数優勝は通算3勝の丸山と、通算10勝を遂げた松山のふたりだけである。無論、メジャー大会を制したのはマスターズを勝った松山ただひとり。

 だからなおさら、これだけの偉業を成し遂げて、しかも今なお進化中である松山の存在と実績に対するリスペクトはもちろんのこと、その偉大な功績に対してのイベントをぜひ考えてほしい、と思うのだ。

三田村昌鳳(みたむら・しょうほう)
1949年2月24日生まれ。週刊アサヒゴルフを経て、1977年に編集プロダクション(株)S&Aプランニングを設立。ゴルフジャーナリストとして活躍し、青木功やジャンボ尾崎ら日本のトッププロを長年見続けてきた。初のマスターズ取材は1974年。