紫式部も食べた?京都が誇る絶品中華麺ベスト3
2024年のNHK大河ドラマは面白いですね。大河としては珍しい平安時代を描き、かつ紫式部という文化人を主役にした異色の構成ですが、個人的にはまりまくっています。この『光る君へ』は、歴史ドラマには欠かせない合戦シーンはほぼゼロ。一方で宮廷における陰謀、裏切り、愛憎劇などなど、これでもか!というくらい、1000年前の複雑な人間模様を映し出しています。数年前にヒットした、中国・唐王朝建国時を描いた『武則天』など中国歴史ドラマを彷彿とさせるドロドロ感がたまりません。これからいよいよ藤原道長が我が世の春を謳歌し、紫式部が「源氏物語」を書き始めます。どんな展開になるか楽しみです。
紫式部と中国料理
さて、紫式部は、越前守となった父の赴任先に随行し、今の福井県越前市に住んだと言われています。当時は、宋(中国)から訪れた人たちとの交流もあったようで、ドラマの中でも式部が中国料理を食べて微妙な顔をしている様子が描かれていました。
本当に式部が中国料理を食べたかどうかはわかりませんが、今回は彼女も食べたかもしれない中華麺の京都ベスト3をご紹介したいと思います。
「八光軒」の絶品“京都ラーメン”
まずは定番のラーメンです。京都のラーメンと言えば「新福菜館本店」や「本家 第一旭本店」などが有名ですが、最近のお気に入りが京阪本線淀駅(京都市伏見区)近くにある「八光軒」です。
2023年にリニューアルした京都競馬場に自転車で向かう際に、たまたま見つけたのが「八光軒」でした。真っ赤なテントはいやが上でも食欲をそそり、入店を待つお客様もチラホラ。当日は競馬場でのグルメを予定していたのですが、その光景に惹かれてつい順番待ちに加わってしまいました。
ほどなく女将さんに「ごめんなー暑い中、相席やけどここ座ってな」と真っ赤なテーブルに誘導されたのですが、店内に流れる彼女のトークが凄いこと。お客様来店の際は「おいでやす〜」「いつものでええか〜?」、お勘定の時は「おおきにな〜」「100円足らんわ〜」などすべてのお客様に大事で声をかけてらっしゃいます。
一番唸った台詞が配膳の時に必ず連呼する「堪忍やでー」の一言。「遅くなってごめん」なのか、「せまくてごめん」なのかはよくわかりませんし、両方なのかもしれませんが、その魔法の言葉でこれから食べるラーメンに最後の味付けをしてくれているようです。
「源氏物語」だけでなく、数々の名歌を残した紫式部。この女将さんの名調子(ラーメンをさらに美味しくする立派なBGMです)を聴いていると、紫式部もこんな女性だったのではないかと妄想してしまいます。なお、肝心のラーメンですが、京都ラーメンらしい濃いめの醤油味、九条ネギどっさりタイプです。チャーハンも絶品ですので是非お運びください。
ちなみにリニューアルした京都競馬場も最高でした。新しく三冠馬のモニュメントコーナーが出来、京都競馬場でG1を3勝=1992年菊花賞、93年天皇賞(春)、95年同=した伝説の名馬ライスシャワーの碑にも変わらず花が添えられていました。
「お好み焼吉野」でホソ入り焼きそばを味わう!名物女将が「テコ」を振るう
続いて、こちらも名物女将がお店を切り盛りする「お好み焼吉野」をご紹介します。三十三間堂(京都市東山区)からほどない住宅地にあり、お店の入り口も非常にわかりにくいですが、路地裏にある可愛い暖簾をくぐると、地元の常連客でいつも賑わっています。
売りは何といっても牛の小腸「ホソ」です。キャベツと一緒に焼く「ホソ焼き」は2人以上で行った際は真っ先に頼んでください。私は一人で行くことが多いので「焼きそば小」にトッピングでホソを入れてもらいます。これで1350円(来店は2024年5月)。安くてうまい!
名物女将が鉄板に向かって「テコ」を振るう様子はまるで芸術。カウンターに座ることができれば美味しい「焼きそば」がさらに美味しくなること請け合いです。ちなみに「ホソ」ですが、下京区松原に本店を置く焼肉「アジェ」でも「ホソ」として牛の小腸を提供していますよ。東京でも有楽町などに支店がありますので、京都の味をぜひ味わっていかがでしょうか。
「からしそば」って、どんな食べ物?「龍鳳」でビールを飲みながら
ラーメンと焼きそばに続いて最後にご紹介する中華麺が「からしそば」です。何それ?という声も聞こえてきそうです。ゆでた中華麺を和からしで合え、上に八宝菜のようなアンをかける料理で、ピリっと辛いからし風味が鼻を抜け、その余韻の中で野菜を一緒に食べるとえも言われぬ美味しさが口に広がります。もともとは「鳳舞(ほうまい)」というかつて京都にあった広東料理のお店で提供された料理のようで、後にそのお弟子さんたちが受け継ぎ、今では京都市民に愛される中華麺になりました。
私のお勧めは、京都を代表する繁華街・新京極にある「龍鳳(りゅうほう)」です。アクセスが良く、いつも地元の人や観光客でにぎわっています。ギョーザも絶品。ビールを合わせながら、からしそばを待つのも至福の時間です。
京都ラーメンやホソは東京でも食べられるようになりましたが、からしそばはなかなかお目にかかりません。ご興味のある方は、あんかけ焼きそば(やわらかいタイプ)の麺に和からしをたっぷり混ぜ合わせて食べていただければイメージがわかっていただけるかと。これぞ京都が誇る中華麺の珍味と言えるのではないでしょうか。
1000年後の京都は…
紫式部が食べたかもしれない中華麺、いかがでしたでしょうか?
1000年を経て受け継がれた京都の中国料理。1000年後はどんな姿になっているか楽しみですね。
文・写真/十朱伸吾
おとなの週末Web専属ライター。旅と食とビールと競馬をこよなく愛する。ツーリングとゴルフも趣味。ツーリングの成果でダイエットにも成功。