大切なのは「一緒に考える」という関係性を親子でつくっていくこと(イラスト:かとうとおる)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。

夏休みに入って、お子さんと接する機会が増えているお父さん方も多いと思います。普段は母親に任せきりにしているのに、そうした時だけ父親として意見を言っても、子どもにはなかなか通じないものです。普段言えないからこそ、いろいろ言いたくなる気持ちはわかりますが、せっかくの機会を無駄にしたくないですよね。

子どもに接するときは、つい上から目線でコントロールするような言動を取ってしまいがちですが、それでは子どもの反発を呼ぶだけでしょう。親子関係も夫婦関係と同じで、相手の話を聞くことから始めることが信頼を築く最初のステップです。母親経由で子どもの気持ちや様子をまた聞きする伝言ゲームではなく、まずは子どもとリアルに向き合うこと。夏休みを機会に、今どんな状況で、何をどう考えているのかをじっくりと聞いてあげるようにしたいですね。

拙著『お父さんのための言いかえ図鑑: 家族関係がすっきりポジティブに変わる』から、子どもとのコミュニケーションを一部抜粋・再編集してお伝えします。

ほめるときはほめっぱなしが鉄則

子どもの高校の模擬試験の結果を受けて

子 高校の模擬試験、B判定だったー!

夫 やればできるじゃないか。次はもっとがんばれよ

NGワード
次はもっとがんばれよ

言いかえてみよう
よくがんばったね

最近は「ほめて伸ばす」子育てが浸透していますが、ほめるときは「ほめっぱなし」で終わることが基本中の基本となります。

せっかくほめても、「次はもっとがんばれよ」と言われてしまった瞬間に、子どもは「どんどん要求される」「今の自分では認めてもらえない」と感じます。場合によっては、次から次へと寄せられる期待がプレッシャーとなり、「自分を認めてもらうには、親の期待に応え続けなければいけない」と、怯えに近い感情を持ってしまうことも。

がんばり続けることを求められてしまうと、「どこまでがんばればいいんだろう」という絶望感に襲われたり、途方もないゴールにやる気が失われてしまうでしょう。逆に、「がんばったね! パパもうれしいぞ」と、親が一緒に喜んでくれると、子どものモチベーションはぐんとアップします。

モチベーションは心理学的には「外発的モチベーション」「内発的モチベーション」に分けられます。「親の要求に応える」のは、言われてやる、期待されるからやるという外発的モチベーションですが、これが続くとがんばることがどんどん苦しくなります。

一方で、うれしいからやる、興味があるからやるというのは、自分の内側から「やりたい気持ち」が湧き上がる内発的モチベーションです。こちらは、やる気もがんばりも持続しやすいのが特徴です。

できるだけ内発的モチベーションを持たせるためにも、ほめるときは、ほめっぱなしで終わりにすることを忘れないようにしましょう。

子どもが将来、ゲームデザイナーになりたいという話を受けて

子 俺、学校を出たら、ゲームデザイナーになろうと思うんだ。

夫 お前は何もわかってないな。世の中そんなに甘くないよ。安定している公務員がいちばんだよ。

NGワード
お前は何もわかってないな

言いかえてみよう
どう考えているのか詳しく教えて

固定観念で否定せず、子どもの考えを聞く

進路に悩む子どもに「お前は何もわかってない」と頭から全否定するのは、典型的な「ザ・昭和のお父さん」と言えそうです。そもそも、時代がものすごいスピードで変化していく中で、親の経験値からくる常識もどんどん通用しなくなっています。セリフにある「公務員がいちばん安定している」や、「いい大学に入れば幸せ」という親の固定観念が今の時代の正解かというと、そうとも言い切れないはずです。

そんな時代にそぐわないかもしれない固定観念で子どもの話を否定しても、子どもは「もうお父さんには相談しない」という気持ちになるだけです。

大事なのは、子どもがどういうつもりでそう考えているのかを、しっかり掘り下げてあげること。まずは、「どうしてそれがやりたいの?」「将来のことをどう考えているのかもう少し詳しく教えてくれる?」などと、聞いてみてください。

もちろん、子どもの話を聞いてみて、「夢を描くのはいいけれど、全然現実的じゃない」と感じることもあるでしょう。そのときは、「そんなのは話にならない」と一刀両断するのではなく、そのまま事実を伝えればいいのです。たとえば、「なかなか稼ぐのが大変な仕事らしいよ」「実はかなりハードワークで、挫折する人も多いと聞くよ」という感じでしょうか。

もう少し積極的に関わるならば、「じゃあ、とりあえず一緒にゲームショーに行ってどんな仕事か見てみようか」「ネットで就職先の情報調べてみる?」などと誘うのもいいですね。子どもの興味のベクトルに合わせて、親が一緒になって協力したり、サポートしたり、楽しんだりすることで、親子の関係性もよりよくなっていきます

宿題でわからないところを子どもが聞いてきて

子 パパ、ここの問題がわからないんだけど。

夫 なんでこんな問題ができないんだよ。お父さんが学生の頃は、こんなのすぐできたけどなあ。

NGワード
なんでできないんだよ

言いかえてみよう
どこがわからないの?

子どもにマウントを取るのは無意味

みなさんは、この会話をどのように感じましたか? はっきり言って、これは子どもに対するマウント(自分が優位に立とうとすること)といえます。父親としての威厳を保ちたい、「パパすごい!」と思われたいなどがあるのかもしれませんが、子どもにマウントを取ったところで、まったく意味がありませんよね。


ここでは「もっと勉強をがんばってほしい」というのが、父親が伝えたいことだと思います。「これくらいできないでどうする」ときつく言うことで、お尻を叩いているつもりかもしれませんが、それでは逆効果になりそうです。子どもは、自分の能力を過小評価されている、ダメ出しされていると感じ、勉強への意欲をさらに失ってしまうのではないでしょうか。

「勉強をがんばってほしい」という目的に立ち返ってみると、父親がどう言ってあげたらいいかが見えてきます。「どこがわからないの?」「わからなくなったところまで一緒に戻ってみようか?」。そんなふうに、もう一度勉強に向き合えるように一緒に考えてくれると感じさせる言葉があれば、子どもの気持ちも変わってくるでしょう。大切なのは、「一緒に考える」という関係性を親子でつくっていくことです。

忙しくて、普段なかなか時間が取れないという方も多い中、夏休みという貴重な親子の時間を有意義にするために是非参考にしていただければ幸いです。

(大野 萌子 : 日本メンタルアップ支援機構 代表理事)