(写真:タカス/PIXTA)

8月5日、日経平均株価は過去最大の下げ幅となった。翌6日は上昇に転じたものの、とくに新NISAを活用して初めて株式投資に乗り出した人にとっては不安が続く局面だろう。投資をするうえで、「元本割れリスク」についてはどう考えればいいのか。週刊東洋経済の「1億円を目指す 資産運用大全」特集で編集を担当した宇都宮徹記者と、経済コラムニストでYouTuberの高井宏章氏の対談から一部をお送りする。

※記事の内容は東洋経済の解説動画「10ケースで解説!新NISA時代の『億り人』達成シミュレーション」から一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

制作:鈴木研一郎

高井宏章(以下、高井):資産形成のシミュレーションをしてみて痛感するのは、やはり投資の最大の味方は「時間」だということ。時間軸でリスクを回避するという観点は、資産運用をするうえで非常に重要ですね。

宇都宮徹(以下、宇都宮):すごく簡単にいうと、リターンよりもリスクのほうが(発生する)確率が低い、しかもその確率の差は、時間が経つほどに広がっていく、ということです。


「元本100万円」「リスク20%」「リターン年率5%」の場合で考えてみましょう。シミュレーション図を見ていただければわかる通り、25年も経てば元本割れのリスクはほぼなくなります。

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高井:「リスク20%」で「リターン年率5%」というのは、日本株は大体こんなもんだといわれている数字ですね。

宇都宮:はい。で、そのリスクというのは「標準偏差(データの値が平均値からどれくらいばらついているか)」であり、簡単に言い換えると「ブレ幅」なんですね。

「すごく有利なサイコロ」と考えよ

高井:「この範囲内で収まりますよ」という幅が、ちょっとプラス側に寄っている。その積み重ねで考えれば、一時的にはマイナスになるかもしれないけど、長い期間をかけていれば、ずっとマイナスになり続ける確率はだんだん減ってくるということですね。

この点が長期投資の最大のメリットだと思います。ただちょっとわかりにくいので、私は説明するときに、「すごく有利なサイコロを振るようなもの」という例えを使っています。

「1、2、3」と「−1、−2、−3」の目で構成されているサイコロをずっと振っていれば、そのうち平均値はゼロに近づきます。この数字が全部1つずつ上だったら。つまり「1、2、3」の目に加えてたまに「4」が出て、あと「−1、−2」の目がある。そんなサイコロなら、繰り返し振っていれば、そのうちプラスになりますよね。

若い時から30年かけて長期投資をすることは、このサイコロを30回振れること、あるいは30個一気に振れることと考えてもいい。全部足したらプラスになるでしょ?ということです。

これが年齢を重ねてからの短期間の投資だと、もうあと3回しか振れないよ……みたいな状態になるわけです。

宇都宮:投資期間が短くなるほど、まさにギャンブル的になりますね。

高井:若い人のほうがいっぱいサイコロを振れるので、まずそれだけで有利だと認識すること。あともう1つ大事なのは、「期待値」の考え方ですが、きちんとプラスのサイコロを選んで投資することですね。

宇都宮:4、5、6しか出ない、カ○ジ(に出てくるサイコロ)みたいなやつに(笑)。

高井:(笑)。でも投資の世界にマイナスが出ないサイコロはないので、「100回振ったらちゃんと得をしそうだ」と思えるところにお金を置いておく。これが重要かなと思います。

(高井 宏章 : 経済コラムニスト / YouTuber)
(宇都宮 徹 : 東洋経済 記者)