ギクシャクしてしまった夫婦のコミュニケーションを取り戻すためには?(イラスト:かとうとおる)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。

夏休みに入り家族で過ごす時間が増えると、途端に増えるのが家族への不満を訴える相談です。一緒にいる時間が長くなるとそれだけ、衝突や行き違いが起きやすくなります。せっかくのお休みを快適に、そして家族円満に過ごしたいですよね。些細なひと言で家族との軋轢を生まないために、今回はお父さんにフォーカスしてお伝えします。

「いいけど」は「よくない」という意味

●休みの日の予定に意見を求められて

妻:ねえねえ、次の休み箱根なんかどう? 日帰り利用できるところもたくさんあるし。
夫:別にいいけど。
妻:え、あんまり乗り気じゃないの? 行きたくない?
夫:別にいいって、言ってるじゃん。
妻:……

賛成もしくは、どっちでもいいかなの気持ちで、こんなセリフをいっていないでしょうか。しかし、同意したにもかかわらず妻は不満を募らせてしまいます。なぜかというと「別に」と「けど」が問題なのです。

「別に」は、下に打ち消しの言葉を伴って使う言葉で、取り立てて言うこともないという意味があります。「別に意見はありません」などと使われます。ですから、これだけでも十分に否定的なニュアンスが伝わってしまいます。また、「けど」も逆説で使う言葉です。「いいけど」は「よくない」という意味にとらえられてしまいます。「OK」のつもりで「いいけど」と言っているのであれば、あきらかに「けど」は余計なひとことです。

それなのに、「いいって言ってるじゃん」と続けてしまっては、けんかを売っているようなもの。このような会話を続ければ、不穏な空気に包まれても仕方ありません。賛成なら「いいね」と言い切ることをお勧めします。反対なら自分の意見をはっきり言うことが大切です。

そのときに相手の意見を否定しないことが大切です。例えば、「温泉もいいけど、家でゆっくり過ごしたいな」という感じです。自分の本音を口にせず、「いいけど」と濁すのは、「小さな不満を察しろ」と暗に言っているような印象を与えます。「意見があるなら適当に返さないで、濁さずちゃんと言ってよ」という気持ちにもなるでしょう。

「本当にどっちでもいい」という気持ちが、「けど」という語尾に表れることもあります。「相手の好きにすればいい」というのが、やさしさだと考えているのかもしれませんが、妻は夫に意見を求めているのです。「どちらでもいい」は自分の考えを伝えることを放棄しているともいえ、相手へのやさしさとは違います。せめて「混んでいるところじゃなければいいよ」など、自分が譲れない点を伝えるだけでも、妻は向き合ってもらえたとポジティブに感じられるはずです。

「〜してあげる」の他人事感

●忙しい妻に変わって食器洗いをしようとして

夫:お皿、洗っといてあげようか?
妻:……(「あげるっ」て、なんなの?)

夫としてはよかれと思っているかもしれませんが、「〜してあげる」には、「そもそも自分の仕事ではないけれど、手伝ってあげる」という「他人ごと」感がプンプンします。

家事にしろ、子育てにしろ、家庭のことは夫婦が協力してやることです。つまり、それは「夫の仕事」でもあるわけです。それなのに、妻の仕事を親切に手伝っているという「ドヤ顔」的な意識が「◯◯してあげる」という言い回しになっていませんか? まずは「家事や育児も自分の仕事」と、「自分ごと化」すること。そうすると自ずと「〜してあげる」というフレーズが出てこなくなるはずです。声をかけるときは、「手伝うことある?」よりも「なにかすることある?」のほうが、当事者意識が感じられて、妻からの好感度も高くなります。

もうひとつ気をつけたいのが、家事の手順は人によってこだわりがあるということ。せっかくお皿を洗ったのに、「油ものは別で洗ってほしかったのに……」とか「コップはこう並べてくれないと……」などと、せっかく家事をしたのに妻から文句を言われてイヤな気分になったことはありませんか?

とくに普段は妻が主体でやっている家事であれば、「やっておいたよ」と事後報告するよりも、「お皿は洗っておくね」など、事前にひと声かけるほうがいいでしょう。そうすれば妻も「グラスを先に洗ってほしい」など手順を指南できて、いらぬトラブルを招くのを回避できます。

家事にサプライズはいりません。喜ばせようと黙ってやるのは、基本的にお勧めしません。

「怒っている」と決めつけるのはNG

●妻がなぜか不機嫌なとき

妻:はあ〜〜(ため息)。
夫:あれ? なんで怒ってるの?

妻が不機嫌なのに思い当たる節がなくて戸惑う、というシーンは、誰でも思い当たることがあるのではと思います。怒っている雰囲気を醸し出しているときに「なんで怒ってるの?」と聞くと、さらに妻が不機嫌になってしまうのもよくあるパターンですよね。

夫からすると「わからないから聞いているのに……」という気持ちだと思いますが、怒っているときに「なんで怒ってるの?」と聞かれると、「そんなこともわからないの?」と妻も反発。あきらかに怒っているのに、「怒ってないけど」と返されることも。その理由の一つは、人は「ネガティブな決めつけを嫌うから」です。「怒っている」ことを決めつけているわけで「嫌なの?」「機嫌悪そうだね」なども同様です。

そして、怒りの性質にも関係があります。「怒り」とは「2次感情」と呼ばれるもので、怒りの奥底には寂しい、悲しいなどの「1次感情」が潜んでいます。妻が本当に寄り添ってほしいのは、その1次感情。それなのに表面にある怒りという2次感情だけ捉えられてしまうことで、さらに気分を害してしまうのです。


「怒っている」と決めつけられて、さらにその理由を求められると、一層モヤモヤするわけです。

では、妻が怒っているのに、その理由が思い当たらないときはどうしたらいいのでしょうか? 理由がわからないのは本当なのですから、「言葉にして伝えてくれる? 言ってほしいな」と素直に伝えるのがいちばんだと思います。言葉にしないとわからないのは夫婦であっても同じこと。

ゆえに、言葉を通じてのやり取りは必須です。

しかし、その言葉の使い方次第では、関係性を悪くしてしまうことも往々にしてあるので、ちょっとしたコツを身につけて、楽しい夏休みにしてください。

(大野 萌子 : 日本メンタルアップ支援機構 代表理事)