一部は西九州新幹線リレー列車の役割も担う「みどり・ハウステンボス」が現在の783系の筆頭の任務。「ハウステンボス」編成は全身オレンジ色をまとう(写真:久保田 敦)

鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2024年9月号「783系誕生の奇跡と波乱の旅路」を再構成した記事を掲載します。

「かもめ」去るも、「ハウステンボス」はリニューアル

今回は1987年の国鉄分割民営化から1年後に、全国のJR各社に先駆けて送り出された新型特急車両であるJR九州のハイパーサルーン783系の足跡を追った。その中から、九州新幹線全線開業時以後の動向と近況を紹介しよう。

2011年3月12日、九州新幹線は全線開業を迎えた。新八代―鹿児島中央間開業(2004年3月)以降の鹿児島本線特急は787系による「リレーつばめ」と「有明」だったが、朝夕の「有明」を残していずれも消え、その787系が他線に転じる。

つまり、博多―鳥栖間の線路容量に余裕ができたことで、長崎・佐世保線特急は「かもめ」と「みどり・ハウステンボス」に分離、独立した「かもめ」に「リレーつばめ」用だった787系が入り、単独運転の「みどり」の一部も担う。長崎・佐世保線方面の783系は「かもめ」での運用が消え、基本的に「みどり・ハウステンボス」関係だけとなった。

「かもめ」用5両編成の783系は、「有明」用の787系とともに南九州に転用された。これらにより485系は国鉄時代から続く活躍を終えた。また、夜行列車衰退の流れで「ドリームにちりん」も廃止(ドリームつばめは九州新幹線部分開業時に廃止)となり、783系の活躍の場がまた1つ減った。

一方、それまで日豊本線用だった編成は4両に減車の上で「きらめき」や「かいおう」、佐賀発着の「かもめ」、「有明」などの通勤特急に適宜運用されている。「有明」への登板は11年ぶりだ。「きらめき」は、門司港直通だった一部の「リレーつばめ」の北九州方面だけを残す形で増発された。だが、783系の使用実態としては、どこか隙間風が吹き始めた感覚がする。その後、長年編成から外されていた中間車のモハとサハ計4両が2016年12月に廃車となる。783系初の廃車であり、90両だった総数は86両となる。つまり2011年3月改正は783系のターニングポイントだった。

とはいえ2017年、「ハウステンボス」編成についてもう一度のリニューアルが行われ、華となった。オランダの街をテーマとするハウステンボスの25周年を記念するもので、2018年度にかけて4両編成5本全車に施工された。外観はオランダ王家のシンボルカラーであるオレンジ一色になり客室はモダンな感覚から、木もふんだんに使ったクラシック調に改まった。


783系「みどり」編成はアクセントカラーを緑色とする(写真:久保田 敦)

西九州新幹線開業の陰で活躍の場狭まる

2017年3月改正時点での編成の内訳は、「みどり」用4両編成×5本、「ハウステンボス」用4両編成×5本、日豊本線南九州用5両編成×6本、通勤特急用4両編成×4本である。しかしながら、地方の輸送量が減る中、大分以南の日豊本線特急はワンマン化され、所要の改造を施した787系4両編成を充当、翌2018年3月改正で4両編成特急の全列車がワンマンとなる。

783系の2017年のトピックには、朝の通勤特急における長洲発「有明」と佐賀発「かもめ」の鳥栖―吉塚間併結運転もある。だがそれも「有明」の需要が奮わなかったための列車の統合という背景があり、2018年改正で「有明」は消えた。

コロナ禍を受けてJR九州も輸送のスリム化を急ぎ、2021年3月改正で「にちりんシーガイア」を含む南九州の特急は787系に統一され、783系は日豊本線から退いた。「きらめき」も見直して783系列車が減ったため、ブロックパターン塗装のグループは定期運用がなくなった。

これで廃車が本格的、2021年5〜6月でCM1編成5両、続いて予備のモハ2両が7〜8月、同年度内2022年2月にさらにモハ1両、2022年度にCM34編成5両が落ちた。

2022年9月23日、西九州新幹線が開業した。在来線特急の「かもめ」は接続特急の「リレーかもめ」へと変化し、接続列車の一端を担う一部の「みどり」「ハウステンボス」はそれぞれ「みどり(リレーかもめ)」「ハウステンボス(リレーかもめ)」のややこしい列車名となった。その上で「リレーかもめ」にスライドした885系と787系は運行距離の短縮で運用に余裕が生じ、これが783系の「みどり」「ハウステンボス」の受け持ちにも変化を与えた。両列車の併結列車は16往復から14往復に、「みどり」単独運転の列車は783系8両が4往復、4両が1往復、それに787系列車2往復だったものが、改正後は783系8両の列車4往復と初導入の885系列車5往復になった。つまり783系以外の形式を使う列車が3往復増え、783系列車は3往復減った。


早岐で分割併合を行う「ハウステンボス」と「みどり」。作業の省力化のためホロの自動着脱機構を装備する(写真:山井美希)

数を減らしても当面の役割は消えず

博多―肥前鹿島間に新設された「かささぎ」(佐賀発着の「かもめ」も統合)の片道1本にも充当されているが、それでも783系の分担は減った。これにより廃車が進んだ。

ダイヤ改正の後、CM4編成5両に加え「みどり」用CM15編成4両が2021年8月の水害で佐世保線内で水没したため廃車になり、2023年度はCM5編成の5両が消えた。

2024年4月首時点の現状は、「みどり」用4両編成×4本、「ハウステンボス」用4両編成×5本と、ブロックパターン塗装の4両編成×4本で合計52両となっている。なお、「きらめき」や「かささぎ」は「みどり・ハウステンボス」用車の運用に組み込まれている。一方、水害で1編成を失った「みどり」には、ブロックパターン塗装の汎用編成ながらクロハを貫通型に改造した異色のCM35編成のほか、同じく汎用の編成で貫通化改造もしていないCM2編成も常用されているとのことである。

783系はこうして数を減らしているが、西九州新幹線の新鳥栖―武雄温泉間問題があるため、ある程度の道筋がつくまでは当面、貴重なJR第一世代の車両として活躍を続けてゆくと考えられる。


(鉄道ジャーナル編集部)