橋本舜・ベースフード社長

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「現代の主食を正しい主食に戻したい─」こう語るのはベースフード社長の橋本舜氏。一人暮らしや共働き世帯が多い中、一汁三菜の栄養素を主食の中に詰め込むことができたらと、完全栄養食のパスタやパンを開発。テクノロジーの力を使い、「今までのパン業界でできなかったようなサイエンスを使って、今までのパンとは違うパンを美味しくしていく」と橋本氏は力を込める。元IT企業出身の橋本氏の戦略とは─。


栄養バランスの良い食品で社会課題を解決したい

 ─ 橋本さんの若くして起業された経緯からまず聞かせてくれませんか。

 橋本 新卒から入社したDeNAで新規事業を担当する中で自分がやるならどういう事業がいいかを考えた時に、社会課題に貢献するもので、しかもなるべく大きい社会課題が良いと思っていたんです。

 現代社会での最大の社会課題は、少子高齢化による社会保険料負担の増大だと思っていて、日本は病気になってからの治療はかなり進んでいますが、予防の分野はまだのびしろがあると、目を付けました。現代の栄養基準は、「主食主菜副菜プラスもう一品」と国が基準を出していますが、これは基本的に専業主婦の方が作るという大前提のもので、社会の実態とは合っていません。現代は共働きや一人暮らしがすごく増えています。

 ─ そうですね。加えて現代人は皆忙しいですよね。

 橋本 はい。そうすると、どうしても食事は主食主菜のみに偏ってきてしまいます。もし栄養バランスを管理することがもっと簡単になったら、予防が簡単になって、健康寿命が伸び、社会保障負担も減るんじゃないか。一番やりたいことに対して一番ダイレクトに効くんじゃないかと思ったのが始まりです。

 主食に主菜と副菜ともう一品の原材料とか栄養素を含めることができて、且つそれが今まで通りの便利さとか、美味しさを維持できればいいなと。車の自動運転が可能な時代にそれができないことはない、フードテクノロジーを使えば、それができるだろうということで起業しました。

 ─ 起業したのは28歳でしたね。DeNAでは当時の社長・南場智子さんに学んだことはどういう点ですか。

 橋本 ひとつは、人としての魅力です。南場さんと一緒にいたら、なんかこう周りが元気になる。思ったことを結構ストレートに言われるのですが、それがとても爽やかで受け手も元気がでるので、そこがすごいなと思っています。あとは矢面に立って努力されているところですね。

 ─ 南場さんは経団連の副会長もやっておられますよね。

 橋本 ええ。それもあってわたしも経団連に入りました。南場さんが経団連の中でもスタートアップ委員会の委員長をやられているので、元部下としても南場さんのサポートが何かできたらいいなと思っています。

 スタートアップ5カ年計画というのがあって、日本政府が力を入れて応援してくれるようになっていて、われわれもすごく恩恵を享受しています。ですから、わたしもそこに何か貢献したいなと思っています。

 ─ 橋本さんは起業の動機で社会性を意識されていますね。

 橋本 はい。やはり目指すところが社会課題の解決なので、国や大企業、インフラ系の会社とも関わりが増えてきますし、経団連では人脈も広がります。広く社会を見て経営をされている方から学べることも多くあり、大変勉強になっています。

 ─ 2016年に起業されてから8年経ちましたが、業績的にはどうでしたか。

 橋本 有難いことに、その年に起業した中では、いい業績にはなったかなと思っています。