やはり人間は若い人も年配の人も、どっちも必要で、そういう風に社会ができています。年配の人は経験や知恵がある、一方若い人たちは向こう見ずみたいなところがある。この両方が一緒にやることでバランスが取れていきますから。

 ─ 業界全体の活性化にもつながると。

 橋本 ええ。これまで日本の食品業界はスタートアップがいなかった。一方でアメリカやヨーロッパは、スタートアップがかなり多く、大手企業が一緒にやることで大手も成長した。ネスレとかユニリーバがいい例です。ですから、われわれのような会社がちゃんと大きくなっていくのは、食品業界にも波及効果があると思っています。

 ─ 商品の価格的には一般より少し高めの設定ですか。

 橋本 はい。すごく高い訳ではないのですが、一般的なパンが100円前半だったら、われわれのパンは100円後半から200円近くの価格帯です。一方で、例えばコンビニで昼ご飯を買うときにパンを買って、ミルクを買って、サラダ、総菜のお肉を買ってとなると、栄養が含まれているベースフード一個の方がはるかに安いという見方もあります。健康になるため、栄養バランスを得るためという点を考えると、多分最安値だと思っています。

 付加価値が高いものを売り賃上げをするという良い循環を起こす。パン業界は特にその方向に行かなければいけないという危機感をわたしは非常に強く感じています。

 例えば私たちが一緒に作らせてもらっている工場近くに半導体の工場やアマゾンの倉庫ができますということになった場合、雇用環境が同じで、時給が2倍3倍の外資の方に人がどうしても取られてしまいます。日本人はもう米よりパンの消費量が多いですから、経営上パンが作れなくなってしまうのではという危惧はかなりあります。

 ですからわれわれは業界企業と一緒になって、抜本的な生産性の改善や付加価値の向上に取り組んでいます。生産スピードをあげていってパンの1個あたりの付加価値をあげていく。そこはかなり危機感を高くもってこれからやっていかないといけないと思っています。