それでも話題性抜群の蓮舫候補が出馬したことで、小池候補はステルス選挙に持ち込めなくなりました。なぜなら、テレビ・新聞、そして最近は特に訴求力を増しているインターネットニュースやYouTubeをはじめとする動画共有サイトなどによって蓮舫候補の動向が拡散され、それによって蓮舫候補の勢いが増せば情勢は大きく変わるからです。

◆結果は3位でも、蓮舫候補は功績を残した

結果的に、蓮舫候補は当選した小池候補どころか前安芸高田市長の石丸伸二候補にも及びませんでした。敗因は、選挙で協力した共産党のカラーを強く出してしまったために無党派層が離れたとか、政策面の準備が不足していた、インターネットを駆使できなかったなど、いくつか指摘されています。

敗因分析は今後に譲りますが、いずれにしても蓮舫候補が都知事選出馬を決めたことで、小池候補は街頭に出て支持を呼びかけざるを得なくなりました。小池候補が街頭に立ったことで、有権者は生の声を聞くことができました。それは、一票を投じる判断材料を増やしたことにもつながりました。蓮舫候補は「テレビで政策討論会を実施できなかった」ことを残念がっていましたが、少なからずステルス選挙に持ち込ませなかったことは蓮舫候補の功績といえます。

小池氏が街頭に出て2期8年間を総括する、まず手始めに街頭演説の場として選んだのが八丈島です。八丈島のような離島なら、つばさの党が追っかけてくる可能性は極めて低く、そうした思惑から八丈島を選んだという憶測も流れました。

しかし、小池候補は2016年の都知事選でも八丈島を訪れています。八丈島では地熱発電が取り組まれており、環境大臣経験者でもある小池候補にとって八丈島訪問は絶好のアピールの場になりました。また、選挙戦で離島を訪問することで「離島を見離さない」という政治的なメッセージを込めることもできます。

今回の八丈島訪問では、後者の離島を見離さないという意味が強く、それは翌日の奥多摩・青梅での街頭演説にも活かされています。八丈島から始まった小池候補の街頭演説は奥多摩、青梅、そして足立区北千住といった具合に少しずつ人の多い場所へと移っていきます。そこでは、つばさの党が街宣車で乗り付けるといった事態も起きました。

◆「辞めろ」コールを行う人たちの正体は…

小池候補の街頭演説に乗り込んだのは、つばさの党だけではありません。選挙戦の中盤からは「辞めろ」コールをする人たちも現れるようになりました。「辞めろ」コールをしていた人たちの主張は「公約を達成していない」といった小池都政8年の実績を疑問視する声が多く見られましたが、そのほかにも「自民党の支援を受けている」ことを問う声も見られました。

自民党は今回の都知事選でどの候補にも肩入れせず、自主投票という立場を明らかにしています。それは表向きの姿勢で、自民党は選挙の手伝いから業界団体の取りまとめを担当しています。

それが小池候補の得票につながっていることから、小池候補は自民党のステルス支援を受けていると批判されていたのです。

それら「辞めろ」コールをした人たちを取り上げたネットニュースを読むと、対立候補を支持する人たちによる妨害といったニュアンスで書かれている記事もあります。また、小池候補の選挙を手伝っている都民ファーストの会の議員のXなどにも似たようなポストがありました。

筆者も「辞めろ」コールの現場に居合わせ、「辞めろ」コールをしていた人たちからも話を聞きました。彼ら・彼女らは、必ずしも対立候補を支持していた人たちではありませんでした。

なぜなら、「辞めろ」コールをしていた人の中には、とある宗教団体の幹部や蓮舫候補の街頭演説でも「辞めろ」コールをしていた人がいたからです。