まだ「金」があるのに

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 登録となれば、国内で21番目の世界文化遺産となる「佐渡島の金山」について、ユネスコの国際記念物遺跡会議(イコモス)の評価が出たのは6月6日のこと。結果は惜しかった。

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「今回、イコモスが出したのは“登録”ではなく、ひとつ下の“情報照会”の勧告です。これは、世界遺産としての価値は認めるが保護措置などを強化してほしいという要請のこと。文部科学省(文化庁)と新潟県、佐渡市はこれを受けて改善策を取り、7月21日から行われる世界遺産委員会での登録を目指します」(文科省担当記者)

「韓国対策」の項目も

 イコモスが勧告した改善項目とは、

1.江戸期より後の証拠が大部分を占める佐渡市相川上町北沢地区を除外する。

まだ「金」があるのに

2.「相川鶴子(つるし)金銀山」の緩衝地帯を沖合に拡張させる。

3.鉱業権の所有者が商業採掘を再開しない約束を示す。

 の三つ。どういう意味なのか。

「まず、北沢地区を除外するというのは、韓国に妨害されないためです。同地区には1937年に造られた浮遊選鉱場があり、ここで朝鮮人労働者が強制労働させられたと韓国政府が主張している。難癖をつけられる場所をあらかじめ外しておこうというわけです。2番目の“緩衝地帯を沖合に拡張させる”とは、海側に景観の邪魔になるものを造らないということです」(同)

 実はこれ、洋上風力発電も含まれる。環境にやさしい施設も世界遺産にとっては邪魔者なのだろうか。だが、下世話なことが好きな向きにとって、もっとも気になるのは3番目の「商業採掘」についてだ。

採掘禁止は仕方ない?

 佐渡金山が閉山したのは89年。理由は資源が枯渇したからだが、その前年まで年間約30キロの金を産出しており、鉱脈が尽きてしまったわけではない。鉱業権は三菱マテリアルの子会社で観光事業などを営む「ゴールデン佐渡」が今も所有している。当時の金価格は1グラム約1700円。現在では8倍近い約1万3000円になっており、それなのに採掘禁止とは理不尽ではないか。そこで同社に聞くと、

「新潟県と佐渡市が方針を含めて現在調整している最中ですので、弊社がお答えできる立場にございません」(広報担当者)

 代わって世界遺産登録を推進する文化庁の説明。

「すでに佐渡金山は文化財保護法の対象になっており、採掘のために施設を改修することはできません。世界遺産でなくても、掘ってはいけない場所になっているのです」(文化資源活用課の担当者)

 世界遺産になってほしいけど、もったいない話でもある。

「週刊新潮」2024年7月4日号 掲載