エンゼルスのカルロス・エステべス(左)とマット・サイス【写真:ロイター】

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番記者から「日本の記者はあまり来なくなった」

 正面入口の看板に大谷翔平投手の姿はもうない。9日(日本時間10日)、エンゼルスタジアムを訪れると、MLB公式サイトのエンゼルス番レット・ボリンジャー記者が話しかけてきた。「珍しいね。日本の記者はあまり来なくなったよ」。この日、来ていた番記者は7人。窮屈さは全くなかった。

 クラブハウスの顔ぶれも大きく変わった。入って右側、中央にある柱の手前だった大谷のロッカーは、新加入のミゲル・サノ内野手が引き継いでいた。大谷に兜を被せていたバットボーイのスティーブン・パルドくんはこの日、ビジター側を担当していた。

 大谷が抜け、ロン・ワシントン監督体制となったエンゼルスは9日(同10日)のロイヤルズ戦に6-10で負け、借金は10となった。アンソニー・レンドン内野手やマイク・トラウト外野手ら主力野手の故障が相次ぎ、今季も厳しい戦いが強いられている。大谷はドジャースへ移籍後も何度もエンゼルスへの愛を見せる場面があったが、二刀流が去った今、エンゼルスの選手、そして球団スタッフたちは何を思うのだろうか。

 昨季から加入し守護神を務めたカルロス・エステべス投手は大谷とアニメの話で意気投合していた。「正直、メディアがとても多くても、減っても、特に気にならない」と前置きした後、言葉を選びながら話した。

エステべス「若手は誰の邪魔にもならないように気を付けていた」

「ここの若手はとても礼儀正しいし慎重。誰の邪魔にもならないように気を付けていたときはあった。彼らは今になって理解していると思う。あんなにメディアがいたのはショウへイがいたからなんだ、ってね。彼には常にたくさんのメディアがついて回っていたから。若手にとっては良かったと思うよ」

 ロイヤルズのハンター・レンフロー外野手も久々に訪れたエンゼルスタジアムを懐かしみながら、昨季の喧騒を振り返った。「みんなの受け取り方は違うと思うけどね。僕がエンゼルスにいたとき、メディアはみんな終始丁寧で、僕らが取材の時間を割くことに敬意を表してくれた。(メディアが多かったことは)大したことではないよ」。気遣うように話してくれた。

 球団広報から「ウィル(・アイアトン新通訳)はうまくやっている?」と聞かれ、「YES」と答えると少し安心した表情を見せた。別の広報は「大谷選手はいい球団に行ったと思います」。嫌味では全くなく、心の底から応援しているようだった。

 チームショップには昨季のMVPグッズのみが未だ残っている。スタンドに日本人ファンの姿はほとんど見なかったが、「OHTANI 17」のユニホームを着用したファンは何人もいた。大谷頼りだった昨季からの脱却。苦しいチーム事情は変わらないが、再建へエンゼルスは選手もスタッフも皆、前を向いていた。(川村虎大 / Kodai Kawamura)