年齢を重ねると、「今さらこんなことしても仕方がない」と、自分に制限をかけてしまいがちですが、思い込みを取り払って踏み出すことも大切。東京・吉祥寺で夫とともにギャラリーとパン屋を営む引田かおりさん(65歳)に、年齢にとらわれずワクワクと日々を過ごすヒントを教わりました。

自分に制限をかけず、思い込みを取り払う

東京・吉祥寺で夫とともにギャラリーとパン屋を営む引田かおりさん。大きな天窓から光が差し込む素敵な住まいで、朝起きたら入浴をして身なりを整え、朝食をとって掃除をし、仕事に取りかかり、日が暮れたらリラックスタイムという毎日の積み重ねを大切に暮らしています。

【写真】引田さんが楽しむ「フリル」つきの服

●思い込みを取り払ってワクワクすることを大切に

「心地よいと感じる家に住み、おいしいと感じるものを食べ、美容やおしゃれに気を配るといったことは、心と体の健康のために大切なこと。新しい情報には常にアンテナをはって、よさそうだなと思ったことは迷わず試してみます。

年齢を重ねると、つい『こういう色は自分に似合わない』とか、『今さらこんなことしても仕方ない』などと自分に制限をかけてしまいがちです。でも、思い込みを取り払って踏み出してみると、思わぬ発見があったり、ワクワク楽しんでいる自分に気がつくのです」

なかでも思いきったのは、50代の終わりで新しく家を買ったこと。

「60歳を過ぎたら、ものを整理して、『終活』をしましょうと言われて久しいけれど、若くても、年をとっていても、いつか死ぬことは変わらない。それなら生きている今を楽しむことを優先してもいいんじゃないかと思うんです。先の心配はやめ、えいっ!と勇気を出し、好きな家に住んだら、充実した毎日が待っていました」

心も体もすこやかに暮らすために心がけていること

日々の暮らしの中で、心配事や悩みにとらわれてしまうこともあるけれど、ほとんどのことは意外になんとかなるもの。毎日をすこやかに暮らすためのヒントを教えてもらいました。

●ぼんやりと考える時間をもつ

日が暮れていく空の様子を眺めたり、ノートにやってみたいことを書き留めたり…。

「ぼんやりと考え事をしているときに、新しいアイデアを思いつくことも。自分と向き合うことを習慣にしていると、やりたいことが明確になって、チャンスが来たとき、すぐに動けます」。

新月の日に10の願い事を書く新月ノートを、15年以上続けています。紙に書き出してみることで、意外な本心に気がつくことも。

●自分の好きなことを伝える

いつも家族や身の回りの人を優先して、自分の「好き」がわからなくなっていませんか?

「食べたいもの、好きな色、やりたいこと。長く一緒に暮らす家族にこそ、折に触れて伝えることが大切。身の回りに好きなものを置くことで表現しても」。

ガラスの器が大好き。「扱いに気を使う薄いガラスより、ぽってりして厚みのあるものが好みです」

●自分に制限をかけるのをやめる

自分のスタイルや好みがはっきりしているのは悪いことではないけれど、「私には似合わない」と、制限をかけるのはもったいないかも。

「白や紺などのベーシックな装いが定番でしたが、最近はきれいな色や、かわいらしいディテールの服に挑戦しています」。

人にすすめられて、苦手意識のあったフリルに挑戦。「着てみたら案外いいじゃない? って。失敗もあるけど、冒険は楽しいものです」

●体重計に乗らず、鏡でゆるめに体型確認

体重を気にするのはやめて、体型は鏡で確認。「前から見たときは気にならなくても、厚みが増していてびっくり! ということもあるので、必ず横向きもチェック。ストイックになりすぎない程度にしています」。外食で食べすぎた翌日は朝食を抜くなど、ゆるめに管理。

玄関やクローゼットの近くに全身が映る鏡を置いて、前を通りかかったときにはチェック。毎日鏡を見ていると、変化に気がつきやすくなります。

●他人のことを心配するのをやめる

家族や周りの人を気にかけるのがクセになり、「私が力になれないかな」と考えがちです。「けれど、どんな人もその人の人生を一生懸命生きていて、解決する力があるもの。なにもしなくても、話を聞いて寄り添えば十分。自分を最優先しようと思えるようになりました」

●雑誌やSNSで美容・健康情報をチェック

雑誌やインスタグラム、YouTube…アンテナは広範囲に。「最新情報をチェックし、よさそうなものはすぐに試します。これさえやれば解決! とはいきませんが、コツコツお手入れを続け、現状維持をしたいところ。自分にちょっと手をかけると、ウキウキした気持ちに」

●老後の心配はしない

老後のために支出を削り、ものを処分して暮らしを小さく…そのことばかり心配していると息苦しくなってしまいます。

「もちろん、お金や先の計画は大事。でもそのせいで、今を楽しめないとしたら残念なこと。心が動くものに出合ったら、ときには、勇気を出して飛び込んでみて」

●人の基準に合わせるのをやめる

冷え性が悩みで、冷え取り靴下や気功、ヨガなど、さまざまなことを試したそう。

「でも、体質が変わって手足がポカポカに…とはなりませんでした。人の基準に合わないと落ち込むより、完璧を目指さず、ゆるく自分の体と向き合うことにしています」