中学受験の“リアル”。「頭のいい子しか受からない」は本当?共働き家庭は不利?
中学受験に挑む子どもの数は過去最多水準と言われています。その一方で、根強く残る受験にまつわる「よくある誤解」。頭のいい子しか受からない、は本当? 最新の「中学受験のリアル」をレポートします。
※この記事は『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅勉強法』(著者は教育・学習ライターの小川晶子さん)から一部抜粋、再構成してお届けします)
中学受験は「頭のいい子しか受からない」は本当?
巷では、「中学受験で志望校に合格するのはたった30%」と言われることがあるようです。しかし、「志望校」の定義によって数字はいくらでも変わるため、あまり信憑性のある数字ではありません。
人気の高い難関校を志望校として設定すれば、合格率は下がります。受験者が多いのですから、それだけ熾烈な競争に勝った人だけが進学できることになります。
中学受験の場合、本人にチャレンジしたい気持ちがあれば、そのチャレンジ自体に価値があるため、背伸びしても難関校を受験することも多いです。また、親の意向もあり、「なんとしてもこの学校に」と高めの目標設定をすることもあります。
その結果、志望校に合格する子は少ないと言われているのでしょう。
一方、学力レベルに合っている学校を志望校に組み込めば、当然ながら合格率が上がります。丁寧に希望のすり合わせをし、柔軟に考えることができれば、多くの子が希望の中学に合格していると言うこともできます。
そういう意味でSAPIX生は、70%程度の子が第一志望・第二志望の学校に合格。本人の希望を尊重しながら、第二志望まで含めて、よい結果を得やすい選択をするのです。
第一志望に落ちたからこそ、将来が広がったケースも
それでも第一志望・第二志望の学校に合格できない子はいます。だからといって、その子たちが進学先に不満があるかというと、そんなこともありません。第三志望の学校に行って、とても楽しく過ごしている、力を発揮できているという話をよく聞きます。
たしかに、一定数の子たちは偏差値の高い人気校に行くことで伸びます。SAPIXの先生いわく、そういう子たちはトップ校に行くことで、似た雰囲気を持つ仲間たちと刺激を受け合うことが楽しいのだそう。
普通なら引かれてしまいそうな難しい化学の話、歴史のマニアックな話ができる、自分よりすごい知識を持っている子がいるということがうれしく、さらに伸びていきます。でも、みんながみんなそうではありません。
トップ校に合格しなかったものの、第二志望や第三志望で入学した学校の面倒見がよく、その学校だからこそ6年後に東大に入学できた、という子もいます。
今の時代の中学受験は、子どもの個性に合った学校、やりたいことができる学校を選択するという方向に変わってきています。偏差値の高い学校がその子に合うとは限りません。さまざまな特色のある学校を見て最良の選択をしようと考える家庭が増えています。
「中学受験を経験していない親」が教えるのは難しいの?
自分自身が中学受験をしたことがなく、勉強も教えられないからサポートできるか不安だという話をよく聞きます。
ただ、今の中学受験は親世代の中学受験とは全然違うものになっています。むしろ経験のある人のほうが戸惑うかもしれません。過去の中学受験と比較せず、一から考えたほうがいいのです。また、親が勉強を教えてあげる必要はありません。
SAPIXでは保護者の方に「主役はお子さん、先生はコーチです。親御さんはマネージャーになってください」と伝えています。
じつはお父さんお母さんが入れ込みすぎて、「ここはもっとこうしなさい」「いつまでにこれをできるようにしなさい」と指示を出してしまい、コーチになろうとしてしまうことがよくあります。
しかし、それでうまくいくことはほとんどありません。子どもは「なにもわかっていないくせに」と反発したり、やる気を失ったりして、親はさらに指示を出そうとするという悪循環になりがちです。
コーチの部分は塾に任せ、生活習慣や身のまわりのこと、スケジュール管理やメンタル面のサポートなどマネージャーに徹するほうがうまくいきます。
どうしても指示を出さなければならない場合は、塾の先生が言っていた話として伝えたほうが子どもは受け入れやすいのではないでしょうか。
すき間時間の対応“だけ”でむしろいい
共働きで忙しいので、うまくサポートできるか不安だという人もいます。
しかし、時間に余裕があるからよいサポートができるとは限りません。
子どもの勉強の進み具合が気になって、つい余計な口出しをしてしまうよりも、忙しいから最低限のことだけやるというほうが、よいサポートになることは多いものです。実際、SAPIX生の家庭も共働きで忙しいケースは珍しくありません。
「すき間時間にできるだけのサポートをする」と決めれば、工夫もできるのではないでしょうか。繰り返し必要になることは早めにルーティン化すればストレスが減ります。
<サポートの例>
・日曜日の夜に、1週間のざっくりしたスケジュールを一緒に考える
・職場での休み時間にスマホで学校の情報収集をする
・塾のお迎えのときに、その日にやったことを聞く
・教材やプリントは教科別のボックスを用意して投げ込めるようにしておく
・学校見学や模擬試験のスケジュールなどは、一覧表にして家族みんなが見られるようにしておく
お父さんお母さんも仕事や家事をがんばっていたり、自分の趣味にイキイキと取り組んでいたりすることは、子どもにとってもプラスになります。自分もがんばろうと前向きになることができます。
「本当はもっと向き合ってあげたい、フォローしてあげたいのに、仕事があってできない」という気持ちで罪悪感を持つのは、あまりよくありません。親が辛い思いをしていると感じたら、子どもは安心してがんばることができないからです。