見た目だけでなく、体調やものの考え方も年を重ねるごとに変化するもの。東京と鹿児島で長年2拠点生活を続けてきた、料理研究家の門倉多仁亜(かどくら・たにあ)さん(57歳)はコロナ禍に鹿児島への移住を決意。「自然豊かな場所で自分自身と向き合う時間が増えた」という門倉さんに、移住して得たものや、心身や考え方の変化について語っていただきました。

50代になって知った「豊かな自然」の楽しみ

東京と、夫の実家がある鹿児島との2拠点生活を長年続けてきた料理研究家の門倉さん。コロナ禍で、鹿児島県鹿屋市(かのやし)に移住することにしました。

「親が転勤族だったので、引っ越しは20回ほど経験しましたが、住んでいたのはいつも都会。豊かな自然がある環境の心地よさをこの年齢で初めて知りました。海にも山にも近く、少しクルマを走らせると、驚くほど美しい夕日が見られるんですよ」

移住後は、庭や畑いじりをしたり、テラスで日なたぼっこをしたり…自分自身と向き合う時間が増え、季節のリズムに合わせた生活を送るなかで、心身や考え方にも変化があったと言います。

●本当に大切なものはじつは多くない

門倉さんが心がけているのが、「Body, mind and soulのバランス」を大事にすること。「健康維持というと、運動や食事、睡眠といったBody(体)のことばかり語られがちですが、読書や仕事でMind(知性)を磨き、生きがいをもつことでSoul(心)をうるおす…、よりよく年齢を重ねるためには、この3つが不可欠です」

移住後は、暮らしがシンプルになったことで、今まで以上に心身ともすこやかになったと感じているそう。「結局、本当に必要なものって、そう多くはないんですよね。家族や友人がいて、食べ物があって、きれいな景色がある…それだけで十分なんだと実感しています」

門倉多仁亜さん流・しなやかな心の保ち方3つ

門倉さんに年齢を重ねて得た、すこやかな「心の保ち方」のコツを聞きました。

●人の目を気にしない

かつては、人に合わせる性格だったという門倉さん。

「でも、さまざまな国や地域で生活し、常識はひとつではないと学びました。考えや行動の軸となる”自分の哲学”がある人が素敵だと感じるし、私もそうありたいです」

●若い人たちと交流する

地元の食と農業のフォーラムに参加したり、商品づくりに携わったり、若い人たちとも積極的に交流しています。

「下の世代を応援したい気持ちが年々、強くなってきました。新しい気づきをもらえることも多いんです」

●変わることを恐れない

年齢を重ねるほど、チャレンジすることに臆病になりますが、もったいないこと。

「移住を決めたときも、ずいぶん心配されました。でも、合わなかったら、やめればいい。変化を過剰に恐れたら、新しい出会いもなくなってしまいます」