年齢を重ねると、年の離れた人と話すことが難しいなと感じることはありませんか? フランス文化研究者・翻訳家のペレ信子さんは、「フランスでは先輩・後輩の概念がないので、年が離れていてもすぐに友達になりますよ」と話します。そこで、フランス人の大人の女性の話し方について教えてくれました。

フランス人の話し方にはコツがあり?

自分が若かったとき、日本人の年上の女性と話すのはなんとなくこわくて面倒だった記憶があります。それがフランスに来てみると親子ほど歳の離れた親友がすぐにできました。

この差はどこからくるのかを考えてみると、自分が年上女性の立場になって、大いに見習いたいフランス流の話し方のコツが見えてきました。

相手を黙らせてしまう「説教」「忠告」は望まれない限り封印

子育てにしても仕事にしても50代以降になるとベテランの域ですし、若い人が困っているとなにか言いたくなってしまいます。私も子育てに関して、自分の子どもが中高生になると幼稚園児や小学生がいるお母さんたちにアドバイスしたくなることがありました。でもあるとき、話していて気持ちいいのは自分だけで、聞かされている方は興味ない表情でいることに気がついたのです。

それでふと、フランス人のお母さん達から「教育はこうしたほうがいい」とか「習い事は〇〇をすべき」のような一方的な忠告はされたことがないことに気がつきました。子どもと言ってもその個性は千差万別。お母さんの考えもそれぞれ違います。フランス人が個人主義だというのは他人に構わず勝手に生きていくという意味ではなくて、人の個性も自分の個性のように尊重するという意味だと私はこのことから理解しました。

忠告を頼まれたら、自分の経験として素直に聞ける形で話す

それでは悩んでいる人に忠告を頼まれたときはどうしているのでしょう。私の子どもよりも年上の子どもを持つフランス人ママに、自分のしつけでうまくいかないところを相談したときに、「あなたのやり方は間違っている。こうした方がいい」というふうに言われたことはありません。

その代わり、「じつは私も同じような経験があって、うちの子どもが小学生のときに…」というように自分の個人的な体験を話してくれました。子育てはデリケートな話題です。言い方によって傷つく人もいると思います。私自身が親としてダメなわけではなくて、親ならだれでも通る道だということ、そして彼女が試してうまくいったこと、うまくいかなかったことを話してくれました。

自分ごととして話してくれたおかげで、私は卑屈にならず素直にそのアドバイスを受け入れることができました。

ただ、家族同士の場合は別の話。はっきりと批判されることはもちろんあります。

人の話を聞くときは年齢に関係なく、無垢の心で

フランス人に日本の「先輩・後輩」という概念を説明してもなかなか理解されません。23歳の新入社員と55歳のベテラン社員がすぐに親友になれる国なのです。自分が若手の立場だったときは年上の友達といることになんの違和感もありませんでした。

でも自分が上の立場になってみると、今までの経験やそれによって得た自信が「素直な自分になること」「初心者の気持ちになること」を邪魔すると感じています。

30年前、私の親友が無垢な心で私に接してくれたおかげで、彼女だけが私になにかをもたらすのではなくて、相互的なギブアンドテイクの関係にしてくれたのだと思います。私も若い友達ができたら無垢な心で、知らないことをたくさん教えてもらおうと思います。

意外に心細やかなフランス人の本当の姿

フランス人といえば個人主義でずけずけとものを言うというイメージがあるかもしれません。自分がしたいこと、嫌なことについてははっきり主張しますが、他人のやり方や忠告などについては、それぞれ個人の意見を尊重してくれるようなデリケートな心づかいをする面があります。私はそんな繊細なところが好きです。