画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。年金暮らしで倹約家の小笠原さんの食事について教えてもらいました。

夕食は早めに、軽めにする理由

みなさんは昨夜、なにを召し上がりましたか? ごちそうだったり、簡易的にすませたり…食事内容はご家庭によりさまざまですよね。とくに夕飯は、家族編成で大きな違いが出るのではないでしょうか。
年金生活者であり、ひとり身の私の食事は、「なるべく早めに。つとめて軽めに」をモットーにしています。それは厳しい年金暮らしのなかで、生活を縮小することに迫られたときでも、絶望しないようにと思いついた一例です。いいえ、積極的な「生活縮小対策」といっていいかもしれません。

【写真】ある日の夕食の一例

私の一日の食事時間は、朝が8時。昼が12時半。夜が17時です。え! と驚かれるのは夕飯時間でしょうか。じつは、一回の食事量が多くないせいか、あるいは食慾旺盛のせいかすぐにお腹がすくので、もう15時、16時から夕飯態勢に入っています。なるべくお菓子を食べないようにしているので、おやつにはチーズや納豆、ナッツやつくりおきの切り干し大根などのおかずとお茶、あるいはワインとなり、食べ始めるとそのまま夕飯に突入してしまうからです。
健康のためにも、夕飯はなるべく早い時間にゆっくり食べ、そして早い時間帯にきり上げることです。私が夕食を食べ終わるのは遅くて18時。早いときは17時に片づけ始めます。

しかも夜は火を使う調理を滅多にしないので、片づけは簡単です。簡単にするために、多めにつくる昼食の残りや、おつまみのようなものですませるわけです。それは必ずしもわびしい食事ではありません。自ら進んで決めた、しかも就寝中おなかを軽く保つための夕飯作法だからです。
ただし、寝るころお腹がぐぐぐと鳴ります(笑)。そのときは「ああお腹すいた! 夕飯にしようか」と冗談を独白して笑い飛ばすのです。すると、(これから夕飯の支度をするなんてとんでもない!)という思いが逆流してくるので、気持は鎮まるものです。

朝食はみそ汁が定番に

なお朝食をなににしようと考えることで、体は朝食の楽しみに変わり、空腹の朝、多めの食べ物を並べてその日の出発を楽しむのです。といっても私は炊飯器をもっていないので、炊きたて朝ごはんを食べることはありません。炊飯は現在、昼食の前に白米と麦、併せて二合をお鍋で炊き、それが翌朝残っていれば、朝はご飯とみそ汁です。

じつはおみそに目覚めたのが、私の場合は晩年。母の食事を食べていたころは、必ずみそ汁を飲んだものの、時間をおいてお椀の中でわざとみそを底に沈め、上澄みだけを飲むほど、しょっぱいものが苦手でした。ですから20歳過ぎにひとり暮らしを始めたころから、なんと60代後半まで私はみそ汁を自分ではつくらなかったのです。
「おみそは買わない」を節約術の一つにしていたほどでした。ただ私の場合、絶対受け入れないという食べものはないので、外食など人さまがつくる料理はなんでも頂戴してきました。つまりみそ汁も進んでいただいてきました。

そんなある年、ありがたくも従姉が、倹約家で粗食になりがちな私に手づくりみそを、毎年送ってくれるようになったのです。最初は「うわぁ、アタシみそ汁は飲まないのにぃ」と思いましたが、その後「一汁一菜」の健康法を聴いて、みそ=タンパク源と知り、不足しがちな栄養素を補うためにも、必ずみそ汁を飲むようになったのです。

朝までご飯が残っていない場合は、オートミールの洋風食です。まだ幼いころ、初めてのホテルで食べたオートミールが忘れられなくて、長年好物としてきました。最近注目されている高栄養価食品ですが、私の場合はホテルでの感動的朝食の光景を再現したくて、それを食べるのです。そういう食事法があってもいいでしょう。
オートミールはお米のおかゆほど甘味がないのが特徴。私はそれも好みなのですが、ミルクや卵、シラスやおかかをのせても相性がよさそうですね。